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石田三成×ねね

「秀吉様が書状の忘れ物とは……珍しいな」
 三成は秀吉の書斎へと急いでいた。まめさで成り上がってきたサルである。何事にも準備と確認を怠らないはずなのだが、たまには木から落ちることもあるらしい。それも、伝令まで立てて留守番の三成に依頼している。よほどのことだろう。
 おそらくは無人であろう書斎の戸を、静かに開ける。その向こうに、予期せぬ人影がいた。
「おねね様?」
 露出度の高い女忍者が一人。ねねが文机の傍らに立ったまま、黙って文を読んでいた。何かがおかしい。その顔に尋常でない苦渋が浮かんでいる。没頭して、三成が来たことにも気付いていない。
「おねね様。何してるんですか、秀吉様の部屋で」
 もう一度声をかける。ねねは弾かれたように背を伸ばし、慌てて文を背中に隠そうとした。ぎこちない笑顔を作りながら。
「あっ三成……な、なんでもないよ!」
 ねねがそう言うのだから、三成には放っておくこともできた。だが、彼の頭の中でいくつかの事実がすぐに繋がる。
「……読ませてもらえますか。それ」
 あえて鋭い目をして、厳しい口調でねねに問う。ねねの読んでいたそれが、秀吉に頼まれていた書状なのではないか。半ば確信に近かった。
 ねねはしばらくうつむいていたが、ややあっておずおずと、文を三成に手渡した。

「やはりな」
 読み終えて、三成はため息をつくしかなかった。
 要するに、他の女への恋文だった。茶々あてですらない。秀吉の、例の悪い病気である。三成に頼んだのは、机の上に置きっぱなしにしていたことに気付き、どうしてもねねに読まれたくなかったからだろう。しかし、読まれてしまったものは仕方ない。大体、そんな用事に伝令を使わないでほしいものだ。
「これは、お仕置きですか?」
 当然正妻の怒りが炸裂するのも、時間の問題と思われた。
 だから、次にねねが取った行動は三成にとってまったく予想の範囲外だった。

 ねねが、華奢な身体を倒れこむように預けてきた。
「おねね様!?」
「今は無理……頑張りたくても、頑張れないときがあるんだね……」
 こんなことは今までなかった。浮気の程度で怒りをあらわにするか、笑って水に流すかだったのに。
「うぅ……ぐすっ」
 嗚咽が聞こえてくる。今までたらいの中の水のようにたまり続けた不満が、一線を越えてしまった。そんな、哀切な泣き声が耳に入ってくる。
「……だから言ったじゃないですか。頑張れという言葉は、人を追い込むと」
 相変わらず三成は言葉の選び方が下手だ。だから、あとは腕の中で泣かせておくことしかできない。
 ようやく泣きやむ。ねねは三成を潤んだ瞳で見上げた。泣きはらした顔が、やけに色っぽい。こんな顔も、見たことがなかった。そんな、いつもと違うねねがポツリと口にする。
「ねえ、今だけ悪い子になってくれる?」
「……どういう意味ですか」
 三成には本当に、言葉の意味が分からない。それを察して、ねねはさらに続ける。
「あの人が浮気しても、あたしが浮気していいことにはならない。それは分かってる。けど……」
 白く滑らかな手で、三成の手を取った。自分の頬に持って行き、撫でさせる。人の温もりを感じたいとでも言うように。
「一人じゃ潰れてしまいそうだよ……」
「駄目……です……」
 とっさに言葉は返せても、ねねを突き放せない。それでも理性を総動員しようとする三成の手の甲に、彼女の唇が吸い付いた。

 人生で初めて、石田三成は情に負けた。

 さすがに主君の、夫の書斎で事に及ぶわけにはいかない。いくつもある物置と化した部屋の一つに、人目を盗んで忍び込んだ。おあつらえ向きに布団が積んであったので、床に敷き、その上に座る。
「ん……ちゅううっ……」
 見つめあうのもそこそこに、ねねの方から積極的に唇を求めてくる。応じた三成は、すぐに目を白黒させた。彼女の唇も舌も、貪るように激しい。
(これが、夫を持つ女(ひと)の口づけなのか)
 今さらながら、母性的な彼女も女ざかりなのだと気付かされる。
 息が乱れるほど接吻を続けてから、身体を離す。ねねが一つ深呼吸した。そして、一枚ずつ服を脱ぎはじめた。たちまち、裸体があらわになる。その一部始終から、三成は目が離せない。
 引き締まった体躯は、忍びとして申し分ない。しかし一方では、存分に発育した美巨乳が胸筋にしっかり支えられ、ツンと上を向いている。大きめの乳輪が、美しくもいやらしい。
 視線を下に向けると、濃密な茂みが目に入る。しかし手入れは行き届いている。見られることを意識したたたずまいだった。
(どうして、秀吉様はおねね様で満足できぬのだ。俺なら……)
 仕方のないことが脳裏をよぎった。慌ててかぶりを振り、三成も乱暴に服を脱いでいく。文官ではあるが、それなりに見栄えのする身体つきをしている。
 二人して、布団の中に潜り込んだ。無駄毛一つない伸びやかな手足で、しっかりと抱きすくめられる。顔は胸乳に押し付けられ、まるで乳でも吸わせようとしているようだった。
(こんなときでも、おねね様は俺を子供扱いするのだな)
 しかし、目の前に美巨乳が来れば、どうしても顔を寄せてしまう。熱い吐息を素肌に感じ、ねねはそっと声をかけた。
「いいよ……今は、三成のおっぱいだから」
 ねねに許されると、止まらない。乳房の麓から舌を這わせていき、徐々に頂へと迫る。口に含み、吸い上げた。
(これが、おねね様の肌の味)
「んはっ! はぁっ、ああんっ」
 少々くすぐったそうに、ねねはかぶりを振る。だがくすぐったいだけでないことは、その声色から明らかだった。
 三成のもう片方の手は、ねねの肌を撫でながら女の中心へと伸びていく。茂みをさすり、かき分け、股に指を差し入れる。
「温かい……」
 暗赤色で複雑に皺の寄った、陰唇をくすぐる。上端にやや硬い感触を認めると、そこを集中的に指の腹で転がした。
「あぁ、あんっ。駄目、だよぉっ」
 ねねの腕に力がこもる。肉珠は皮を剥いていないのに、感度がいいらしい。
「いけないのは、そんな声を出すおねね様です」
 自分は高等なことができるわけでもない。それでも、自分の愛撫がねねに通じたことが内心嬉しくて、三成はさらに指を加速させる。
「こ、声出ちゃう、三成が、上手いからぁっ」
 不義密通の背徳感に胸を焼かれながら、ねねはくぐもった嬌声を響かせた。

「今度は、あたしの番だよ?」
 三成の手を止めさせ、ねねは彼を仰向けに寝かせた。自分は三成の下半身へと移動していく。彼の肉棒は、すでに興奮にいきり立ち、先走りの汁を垂らしている。
「もう、こんなに大きくしてたんだ。悪い子だね」
 口ではそう言うが、嬉しそうでもある。それが証拠に、口を半開きにし、おもむろに――くわえこんだ。顔が前後に動くと同時に、玉冠が舐め回される。さらに、玉袋まで乾いた掌で転がされる。
「うおおぅっ! おねね様、口、凄いですよ……くうっ」
 これにはさすがの三成も、のけぞって声を上げざるを得なかった。自分では十分勃起していたと思ったのに、口淫でさらに硬くなり、膨張したのだ。
 発射寸前まで追い込んでから、手馴れた人妻は口を離す。
「さぁ、三成。頑張るんだよ」
「頑張る類の……問題ですか……」
 だが後はもう、やるべきことをやるしかない。ねねの蕩けた笑顔を見て、三成も腹を決めた。

「おいで」
 ねねが両腕を広げて三成に差し伸べる。脚も開かれ、黒い藻の下の二枚貝が体液をしとどに吐き出していた。そこに、己が分身を突きつける。水音が立った。
(くっ……この期に及んで、迷いがあるとはな)
 さすがに挿入となると、ためらう。女癖こそ悪いが、三成は尊敬する秀吉を裏切りたくない。しかし、この期に及んで善人ぶって何になるというのか。
 三成はあえて一息にねねを貫いた。

「ああ――っ! げ、元気な子が、あたしの奥までぇ!」
 夫である秀吉とは、これ以上なく身体の相性が合う。しかし体格差や年齢からして、やはり三成のモノには勢いがある。その勢いに、さすがのねねものけぞった。
 才子として知られる三成も、夜の営みでは小細工できるわけではない。数年来の思いをぶつけるように、ひたすら腰を振る。互いに溶け合うような一体感は、彼の得意とする理では説明しきれない絶対的な快楽だった。まして、狭く襞多きねねの名器なれば。
 永遠に続けばいいと思う至福のときは、しかしたちまち終わりに近づく。
「おねね様っ……そろそろ、まずい……」
 それを聞いて、ねねは寂しく笑った。
「あふっ、だ、大丈夫。あたしは……心配いらないもの……」
 その言葉の意味を、三成はいつか理解できるのだろうか。本当の母親になれない、ねねの寂しさというものを。何度裏切られても夫の子が欲しいと望む、妻の心境というものを。
 そこまで思いをめぐらす間もなく、三成は自分を追い込みにかかる。母親のように思っていた女性の粘膜に包まれながら、頭の中に乳白色のもやがかかりながら、三成はすべてをぶちまけた。

「ねーんねーん、ころーりーよ、おころーりーよー」
 ねねは三成を抱きしめたまま子守唄など歌っている。やはり、どこまで行っても子供扱いなのだろうか。しかし、三成の中にはそれ以上になることを恐れる自分もいた。
(結局、今までどおりですね。でも……今日のおねね様を、忘れはしません)


 翌日。秀吉の顔の形が蜂の大群に刺されたように変わっていた。ねねはさっぱりした顔をしている。きっと、明日には仲直りしているのだろう。
 いつもどおりの夫婦を見ながら、三成は思う。やはり自分が取って代われる隙などない。
 それでいい、と。


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この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
ねね×くのいち
遠呂智の淫謀 ねね編

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Written by◆17P/B1Dqzo