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曹孟徳は、負けるときは大負けする。
復活した遠呂智に、魏軍は木っ端のごとく蹴散らされた。曹操のいる本陣にまで、大鎌を手に魔王が迫っている。戦場の周囲も遠呂智軍が十重二十重に包囲していた。
女禍は、決断した。曹操ら魏軍将兵を縮地の術で離脱させることを。術者、つまり自分を一人残して。
「女禍、何をしている。お主も来ぬか」
本陣の地面に描かれた魔方陣の中から、曹操が怒鳴る。女禍は無言でかぶりを振った。その口元に、寂しげな笑みが浮かんでいる。
「フ……残念だが、術者は居残りだ」
曹操の目が、見開かれる。この興味深い仙女を、彼は失いたくなかった。だが、光の壁は二人を無常にも隔てる。
「生きて覇道を貫け！ この、混迷する世界のために」
「馬鹿者――！」
手を差し伸べようとする覇王が、光の中に消えた。ガクリと膝をつく女禍の眼前には、遠呂智の大軍勢が迫っていた――
古志城の地下牢に、女禍は繋がれていた。手首足首にはめられた鉄枷は、彼女の力を完全に封じている。太極図をあしらった衣装はボロボロになっていて、ところどころ血のにじむ素肌がのぞいていた。
表情は憔悴しきっている。縮地の術で、力を使い果たしてしまったのだ
（……誰だ）
軽やかな足音が、地上から階段へと響いてくる。姿を見せたのは、豊満な肢体を淫靡な衣装で申し訳程度に覆った女――妲己。
かつて女禍は妲己に命じて殷を滅ぼさせ、その彼女を太公望に天下の悪女として成敗させた。不倶戴天の間柄とはこのことだろう。
「お久しぶり、女禍さん。いい格好になったじゃない」
「曹操は生き延びた。私一人を殺しても、お前たちの負けは動かない」
ここぞとばかりの妲己の嘲りにも、女禍は平然と返す。
「それはどうかしら。あなたの力、上手に使わせてもらうわ」
「私の、力だと？ 笑えぬ冗談だな」
その言葉を女禍はにわかに信じられない。
「それじゃ、いっただっきまーす」
出し抜けに、妲己は両手を女禍の頬に添えた。真っ赤な舌で、頬を一舐めする。潔癖な女禍の背中に、悪寒が走った。
「何の真似だ……ん……んむぅっ！？」
言葉が、途切れた。妲己が女禍の唇を、自らの唇でふさいでいた。数千年来の宿敵同士が、愛し合ってもいないのに接吻に及んでいる。
妲己はさらに、唾液を口内にためた。指一本動かせない女禍の歯列を舌でこじ開け、流し込む。女禍は舌に咬みつくことも、唾液を吐き出すこともできない。ただただ不快な液体を飲まされる。
「ぷはあっ。うふふ……こんなところでいいかしら」
「はあ、はあ……ふざけるな、誰が好き好んでお前と……うぅ！？」
やっと、口づけから解放されたが、異変はすぐに起きた。
「あ……熱い……ふううっ、はああ！」
触れられてもいないのに、肌という肌がカッカと火照り始めたではないか。かゆいような、燃えるような感覚が、じわりと女禍を包み込む。
「さ、さすがは妲己。唾まで毒になっているというわけか……ふお、はぅうっ！」
「毒だなんて人聞きの悪い。媚薬って言ってよね」
思わず恥ずかしい声がでてしまうが、女禍はどうにか精神力で耐えようとする。そんな宿敵を見て妖しく微笑むと、妲己は女禍の胸元に手を伸ばした。
「えいっ！」
「うああっ」
その部分の衣を、一息に剥き下ろす。たちまち、生の果実が二つ、こぼれだした。もともと前面が大きく開いた衣装だったので、乳房からへその辺りまで剥き出しになってしまう。
女禍なれば、その肉体まで己の理想の形状に作り上げられる。妲己ほどの巨乳ではないが、ツンと上向いた曲線は作り物めいて見えるほどの美しさを誇っている。地肌の色は白く、頂点の色づきも淡い。そんな生ける美術品が、女禍の媚薬で膨張し屹立していても不思議ではない。
だが、明らかに異常なことがひとつあった。
「出てきた出てきた。気持ちよくなるだけでお乳が出るなんて、牛以下ね」
「こ、これは……仕方なかろう！」
桃色の蕾から、白い果汁がにじんで垂れている。子を産んだわけでもないのに、母乳が分泌され始めていた。生み出した命は、養わなければならない。長きにわたり人間を生み育てた彼女の『体質』のようなものだった。
さすがの女禍も、これは恥ずかしいらしい。
そして、妲己はこの神秘の液体を狙っていた。舌なめずりしながら、顔を女禍の胸元へと寄せていく。
「あーん……いっただっきま〜す♪」
男根をくわえ込むように口を開き、チュッと音を立てて乳首を含んだ。口をすぼめると、ぴゅっぴゅと乳が搾り出される。
「チュパチュパ……レロレロッ……すっごく甘くて、美味しいわ……これを飲めば、あなたの力が手に入るのね……」
「な、何だと……」
いかにも妲己らしい企みを聞いて、女禍は顔をこわばらせた。自分の母乳で敵の力を増すなど、あってはならない。しかし、噴出は次から次へと止まらない。そして、淫婦の巧みな舌遣いが恐ろしいほど心地よい。
「チュ……チュバッ……」
「アッ、アッ！？ だ、駄目だ！ 飲むな、吸うのも……駄目ええぇ！」
冷たい美貌を朱に染めて、女禍は自分でも信じられないようなか弱い声を上げていた。
「楽しんでいるようだな、妲己」
飲乳に没頭する妲己の背後から、割れ鐘のような声が響いた。筋骨隆々の老将が、腕組みして眺めている。
「あら清盛さん。やっぱり仙人のお味は格別よ。片方吸ってみない？」
「いや、せっかくの機会、我輩にも試したいことがある」
そういうと、老将平清盛は喘ぐ女禍の背後に回った。
「はふう……遠呂智の……木偶（デク）が……」
「遠呂智様の木偶なら本望、それより卿（けい）の心配をせよ」
悪口は聞き流し、清盛は女禍の薄い腰布をひっつかんだ。そのまま、ベリベリと破り捨てる。女禍は肌着を着けていない。少々肉付き薄めの、臀部がさらけ出されてしまった。
「くうっ……！！ この屈辱っ！」
女禍は唇を噛んだが、何ができるわけでもない。尻に触れるひんやりとした風が恨めしい。
「我輩が試すのは、卿のここなり」
多少愉快げな声を発しつつ、野太い中指が谷間に潜り込んだ。指先は何かを探り当て、力強く押し込んだ。
女禍の口から、舌が飛び出した。
「ぐっかはあ！？ そ、そこはぁ……何をしている、汚らわしいっ」
清盛は、よりにもよって女禍の菊門を弄り始めた。腸内で、ウナギか何かのように指先がうねる。じりじりと焦がれるような痛みと嘔吐感で、女禍は力なく首を振った。
女禍の性交渉は、すべて子を産むためにある。尻の穴で交わるなど、考えもしなかった。ある意味、純粋なのだろう。
「ほう、仙人といえども案外に初心なものよ」
指が引き抜かれたが、それは次なる陵辱の始まりに過ぎない。清盛は袴を少しだけずらし、下帯をほどいた。まろびでた分身は、老人、いや人間のものとは思えない。木の幹のように硬いこぶがそこかしこに浮き出ている。これも、遠呂智の力を受けたからである。
「前は遠呂智様に捧げてもらおう。我輩は、こちらで愉しませてもらう」
あてがわれたモノの大きさに、女禍は身震いした。
「参るぞ」
何事か叫ぼうとした瞬間、仙女の穢れなき菊門は無残に押し広げられ、貫かれた。ズブズブと、根元まで咥え込まされる。
「やめろ、やめ、うがああっ！ 抜け、抜いてえぇっ」
「うむむ。これほどの具合よき菊花は、我輩もはじめてよ」
きつい括約筋の躍動を堪能しながら、清盛は人外の男根を情け容赦なく突き込む。
「ぐほっ、おおふううっ」
そのたびに、女禍は仙人とも思えぬ生々しい声をあげた。
妲己も思わず苦笑してしまう。
「女禍さん、いい声出しすぎ。私なんて、何回お尻でしたか分からないのに」
そんな侮蔑も、耳には届かない。妲己に母乳を吐き出し、同時に清盛に尻の穴を犯される。そんな自分が、酷く惨めに思えてくる。
（この、目から流れる水は……）
目頭が熱い。女禍は自分が泣いていることに気付いた。
しかし、鋭い痛みの中から震えるような快感が湧き上がってくる。それがまた、女禍の高潔な心を打ちのめす。
（わ、私は……尻の穴で気持ちよくなる……女だったのか……）
頭に霞がかかり、もう少しで絶頂に達しようという寸前だった。何の前触れもなく、清盛が直腸から男根を引き抜いた。妲己も、そそくさと離れる。女禍にはわけが分からない。
地下室に、凍りつくような殺気がみなぎったのは、その時だった。
「女禍……忌まわしき仙界の支配者よ……」
突如虚空から、巨躯の魔人が姿を見せた。
「お……遠呂……智」
魔王・遠呂智。女禍らにより永劫輪廻の罰を与えられた、この世界の支配者。相変わらずの無表情だが、その瞳には数千年分の敵意が宿っている。
「我はこの時をどれほど待ったことか。貴様を身も心も支配し、その力、我が物とさせてもらおう……むん！」
遠呂智が右手を前にかざしただけで、目には見えない圧力が加わる。女禍の全ての着衣は粉々に弾けとんだ。女禍は目を伏せ、顔を赤くすることしかできない。
仙界の住人は、一糸纏わぬ姿もやはり美しい。ほどけて広がった銀髪は豊かな絹織物のごとく、胸元を飾っている。それとは逆に、股間には産毛一つない。しかし花弁は大きくはみ出していて、大人の女であることを雄弁に物語っている。加えて、胸と尻への責めだけで、花弁には甘露が滲み出していた。心はどうあれ、身体は悦んでしまったのだ。
「我は知っている。なぜ貴様が、我を忌み嫌ったか――これだ」
遠呂智は股間の装甲を開け放った。その奥から『答え』が飛び出す。
「ひっ！ ち、近寄るなあぁっ！」
女禍とあろう者が、顔を引きつらせて金切り声を上げた。
限りなく男根に近い姿を持つ大蛇どもが十数匹、鎌首もたげて這い回る。このように異形の陽物を持つこと自体、彼女にとっては断ずべき大罪だった。
全裸の女禍を、異形の蛇どもは先を争い絡め取った。生ける彫像のような裸体を、容赦なく大蛇が縛り上げる。美の極致に、醜悪の極致が幾重にも絡みついた。いまだ乳の止まらぬ乳房はくびり出され、切れ上がった小股が強調される。手足には、きつく螺旋が描かれた。
今さらながら女禍は、遠呂智の自分への並々ならぬ憎しみを感じ取った。そして、今初めて哀れみのようなものを覚える。いつしか、恐怖は微塵と消えていた。表情に、再び余裕が戻る。
「さあ、好きにするがいい。だが、苦しみはこれからと知れ」
「その言葉……貴様にそのまま返してくれる」
蛇は、一斉に動いた。
喉まで犯し、直腸まで侵入し、そして女陰は子袋まで貫く。すべての挿入は、まったくの同時だった。
「ふぐっ、んぐふううっ！ んー、んっっ！！」
苦痛のあまり、女禍は白目を剥いて泡を吹く。終末に向かって痙攣する肢体もまた、美しい。
遠呂智も遠呂智で、悶えていた。
「これが、貴様の力……くおおおおっ！」
強烈で相容れぬ力が、結合部から魔王の身体に流れ込む。何より、狭い肉襞や腸壁の中を動くたび、人間とは格の違うぬめりと柔らかさに襲われる。少しでも気を抜けば、自分がどこかに連れて行かれそうなほどだった。
それでも世界の支配者たる矜持にかけて、遠呂智は持ちこたえた。女禍の力を心地よく思えてくる頃には、相手の抵抗も弱まっている。満を持して、遠呂智は女禍の胎内に毒液を放った。胎内を満たす冷たいほとばしりに身を震わせながら、女禍の苦しみは急速に薄まっていく。さすがの仙女も、一時の眠りに就くしかないだろう。
（私の力が、人間たちを苦しめてしまうのか。だが信じているぞ、どんな試練も乗り越えられると……）
遠呂智の分身がズルリズルリと引き抜かれる頃には、女禍は呼吸するのみの抜け殻と成り果てた。
「なかなかに、見ごたえがありましたな」
「これで今度こそ、遠呂智様に勝てる人間なんていないわよ！」
口々に誉めそやす妲己と清盛を従え、遠呂智はいつもと変わらぬ無表情で地上へと向かった。その髪が、女禍と同じ銀髪に変わっていることも知らず。
取り込んだ仙女の力は彼をさらに高めるのか、逆に滅びへと加速させるのか。
全ては、戦いの中で明かされる。
完
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