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弓姫二人 その4

「は――っ、は――っ……」
「さてと、後は仕上げをじっくりと♪ くすくす、もう大洪水ね」
 息も絶え絶えになった稲の足首をつかんで股を広げ、妲己はその間に楽しげに割って入ってきた。膝を使って稲ににじり寄る。
「いやっ……そんな、あなたなどに操を……」
 男女のまぐわいがこのような体勢でされると、聞いたことはある。相手は女なのだが、何らかの手段で純潔を破られると思い、稲の顔が青ざめた。
「あはは、心配しなくてもいいわよ。男はアレを突っ込むことしか考えないけど、女同士は違うわ。綺麗な身体のまま、私のお人形にしてあげる」
「に、人形……!」
 案内の娘がなぜあれほど無表情だったのか、稲はようやく理解した。彼女もまた、妲己の異常な愛情の犠牲者なのだろう。そして、次は自分が人形にされる番だということも。
 妲己は自分の股布を丸めて脱ぎ捨てた。彼女の秘裂は赤子のように無毛で、そのくせ濡れそぼつ花弁が盛大にはみ出している。さらにはその縁に、刺青が彫られていた。稲の素朴な姫割れとは対照的な、妄想を練り固めたようなたたずまいと言うべきだろうか。
「ふふ……」
 くちゅり、と水音が立つ。
 妲己が稲の腰を抱えて、秘裂同士を密着させていた。上の唇に続き、稲は下の唇まで妲己に奪われてしまったことになる。
「あぁ……」
 何かを挿入されたわけでもないのに、稲の目尻から涙がこぼれ落ちる。
 だが、これは儀式の始まりに過ぎない。
「さあ、あなたのすべてを私にちょうだい」
 妲己は腰をくねらせ、お互いの女の象徴を擦りつけはじめた。火照った肉厚の花びらが、無垢な肉芽を包んで嬲る。
「あ……や……あひっ……あはああ――っ! 尚香、助けて尚香――!!」
 戸惑うような喘ぎはすぐに絶叫に変わり、稲は声を限りに親友の名を呼んだ。陰核の神経を剥き出しにされ、直接いじられるような凄まじい快感が襲いかかる。
 一方で、急激に意識が薄れていく。自分という存在が、繋がったところから妲己に吸い取られていくようだった。
 それは、錯覚ではない。房中術を応用、いや悪用し、妲己は若い娘の生命力を我が物としていた。特に稲と尚香は、一目会ったその日から目をつけていた。この世界で心身がいっそう鍛えられた弓姫は、まさに食べ頃の生贄となっていた。
「あん! ふふ、いいわ……擦れあったところから、あなたの生気が流れ込んでくる……とても清浄で、豊かで……たまらないっ!」
 上ずった声で口走りながら、妲己は稲の片足を持ち上げ、さらに秘所を押しつける。相手が白目を剥いたのも構わず、人外の淫婦は生贄を夢中で貪り続けた。

 それからおよそ半刻が過ぎていた。
「う、ぁ…………」
 うつ伏せに転がされた稲が、尻をビクンビクンとわななかせている。滑らかな双丘の上には噛んだり吸ったりした痕が無数に付けられている。貝合わせの後戯と呼ぶには、あまりに激しい行為が行われたことを物語っていた。目は焦点が合っておらず、口の端からはだらしなく涎を垂らしている。
「あらら、ちょっと可愛がりすぎたかしら。でも、今のあなたはとても綺麗よ」
 何も身に着けず、精神性が消滅した状態。それこそ、妲己は人間の最も美しい姿だと考えていた。あと一押しで、稲はその状態に堕ちるだろう。
 妲己は稲の尻肉の谷間に手を挿し込み、愛しげに菊の門を撫でている。愛液と膏薬を、皺の一本一本にまで塗りこみ、ほぐしていた。戯れに周囲の体毛を引き抜くと稲がかすかに鳴く。それがまた、彼女には面白かった。
「さ、仕上げるわよ」
 指先をさらに強く押しつけ、埋没させていく。第一関節までとはいえ、体内に生まれて初めて異物を挿入され、稲の裸体が布団の上で大きく跳ねた。
「くあぁ! な……なに……?」
 生贄の黒髪を優しく梳きながら、妲己は耳元で告げてやった。
「ここの穴から念を送って、あなたの心を真っ白にしてあげる。大人しくして? 終われば二度と苦しまなくて済むから」
 稲の返事はない。妲己の言葉を理解することさえ、心が拒んでいた。
「いい子ね。じゃ、まずは一本、っと」
 何も知らない排泄器官が、支配を受け入れようと緩んだ

「稲ぁ!!」
 退廃的な空気を切り裂くように、何かが唸りを上げて妲己に飛んできた。
「はぁ? 何……?」
 さすがに少々驚きながら、妲己は妖玉で弾き返す。振り向いた先には、招かれざる客が刃の着いた円盤・乾坤圏を手にして構えていた。怒りに目尻が吊り上がっている。
「あら尚香さん、一人で来たの? 凄いわね」
 方々聞きまわった末、尚香はようやく妲己の別荘らしき建物にたどり着いた。そこからは正面突破ではなく、巧みに身を隠しながらここまで侵入を果たしたのだった。
「あ、あなた……稲に何をしたのよ!?」
 横たわる親友の無惨な姿に、尚香は愕然とした。相手が相手だけに、何をされたかおおよその見当はつく。
 にっくき女狐は卑猥な股間を隠そうともせず、ゆっくりと寝台の脇に降りた。
「私は稲さんが心の底で願っていたことをしてあげただけ。どうせあなたには無理でしょ? 女同士なんて気持ち悪くてできないわよねぇ」
「そんな。それが……稲の望みだというの……」
 にわかには信じられなかった。しかし、寝台の上の稲はどこか満たされているようにも見える。嘘で塗り固めた妲己の言葉が、今は一面の真実に思えてきた。
(そうだとすれば、私は……)
「さ、帰って? 今からこの子の最後の穴まで、私のものに――」
「させるもんですか!」
 自分でも驚くほどの大音声で、尚香は怒鳴っていた。
「……稲はね、私のために何もかも犠牲にしてくれたの。これからは、私が彼女の望むことに応える番よ。あんたなんかに渡さない!」
 その凛とした声が、深淵に沈んでいた稲の意識を呼び戻す。懐かしく、愛しい親友、それ以上の女性(ひと)の声が。
「尚香、なの?」
 尚香が来てくれた。それだけのことで、身体中に生きる希望が満ち溢れてくる。
「こんなことで私は……やああ――っ!」
「ええ!?」
 丹田に力を込め、稲が気迫に満ちた声を発する。それにより、術による呪縛は、妲己が驚くほどたやすく打ち破られた。これもまた、無双の力がなせる業であろうか。
「尚香!」
 寝台を蹴飛ばすように、稲は全裸の身体をいっぱいに伸ばし、大きく前方に跳躍する。
「稲!」
 呼応するように、尚香は両手を伸ばした。ぴたりと指がふれあうと、二度と離さないように、握り締める。見つめあう視線と視線が、熱く交錯した。
「ごめんなさい、私」
 うつむく稲の剥き出しの肩に、尚香は優しく手を置き、微笑んだ。
「いいから。逃げるわよ」
 二人は手に手を取って駆け出した。かなり遅れて、妲己が妖玉を飛ばす。しかしすでに、二人は持ち前の健脚で射程外へと逃げ切っていた。
 仕留め損ねた妖玉が、空しく手元に戻ってくる。それでも妲己の顔に怒りの色はない。
「ふふ……私としたことが、あの二人に見とれちゃった。また会いましょ? そのときこそ、二人揃って私のものにしてあげる」
 稲と尚香が消えた闇に向かい、妲己は一人囁いた。

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Written by◆17P/B1Dqzo