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すっかり目が覚めた稲は朝餉を取ると、尚香とともに庵の庭に降り立った。その手には愛用の与一弓滋籐が握られている。身にまとっているものも、もう寝間着ではない。妲己に細切れにされたはずの、胴鎧と袴であった。
弓の勘を取り戻さなくてはならない。それらを危険を冒して届けてくれた、家臣たちのために。何より尚香のために。
約百歩先の柿の木に、小さな的が懸かっている。稲は無言で構えを作り、矢をつがえ、弓を引き絞る。
ヒュンッ……
静寂の中、稲は矢を放った。いや、矢が手から離れた。そう言ったほうがいいほど、今の稲は自然で静かな動きをしていた。
そんな、力みのまったくない一射だったにもかかわらず。
「ちょ、ちょっと……嘘でしょ?」
尚香が目を見張る。放った矢は、的はおろか柿の木さえ、巻き藁か何かのように貫通していた。
「すごいじゃない、稲! これなら妲己だって一撃よ」
弓腰姫に手放しで褒められ、稲は頬を染めてはにかむ。
「ありがとう。尚香が、私に力を与えてくれたおかげよ」
そして、なぜか顔を曇らせる。
「あなたは嫌な顔一つしないで、私の願いを叶えてくれた。口吸いだってしてくれたし、胸も、お、お雛様まで……」
尚香はゆっくりと首を横に振った。
「そりゃ最初は驚いたわ。でもね、私はもう、稲以外の誰かとするなんて考えられない。世界中に後ろ指を差されても、構わない」
女が政略の駒である時代において、それはどれほど理解されがたい道であろうか。にもかかわらず自分を選んでくれる。そんな尚香への想いは高じて止まらない。
「尚香……!」
「きゃ! もう、人前じゃやめてよね。二人きりなら……どこまででもいいから」
顔をくしゃくしゃにして、稲は尚香に飛びついていた。高ぶる心は、身体も熱く火照らせていく。日頃は何とも思わぬ鎧が、今はひどくもどかしかった。
「ん……尚香のお雛様、美味しい……」
「そ、そう? あむっ……」
寝室に再び、淫靡な音と匂いが満ちている。互いの股間に顔を埋め、戦国と三国の姫君は処女花を舐めあっていた。先ほどとは逆に、稲が尚香に覆いかぶさっている。
シミ一つない肌の上には、水滴がいくつも輝いている。稽古をどうにか終え、井戸で冷たい水をかぶった後は、ろくに身体も拭かずに寝室まで歩いてきた。何も隠さず、互いの乳房や茂みを優しくまさぐりながら。人里離れた山奥で、二人の姫君はどんどん大胆になっていく。
「んあぁ! い、稲、激しすぎっ……」
花弁をとろかすような舌遣いに、尚香はたまらず鳴いた。攻め手に回った稲が、かくも巧みとは思いもよらなかった。きっと、何度も頭の中で思い描いていたのだろう。
「ぁはっ!? そ、そこはっ、や、お、オシリっ」
「大丈夫……すぐによくなるわ。信じて、痛くなんてしないから」
少しだけくすんだ、尚香の菊花。稲とは対照的に、尚香の陰唇から菊門までは産毛程度しか生えていない。稲は愛撫の中心をそこへと移していた。吐息を吹きかけながら、爪の先で皺をくすぐる。反応して穴がキュッキュッと窄まると、稲は満足げに目を細めた。
今の稲は、お堅い大和撫子ではない。親友の尻孔を可愛がって悦に入る、立派な淫乱生娘であった。
しかも自分の姫割れは、尚香に上から押しつけている。そこを友の舌が健気に這い回るたび、ますます尻孔愛撫に熱がこもった。花弁から吐き出される恥蜜を、皺に塗りたくっていく。
(ァンッ……私のお尻……尚香も、してくれてる!)
ふと稲は、自分の孔も尚香に触れられていることに気付いた。妲己に指先を突っ込まれたときは舌を噛み切りたい心地だったが、尚香なら指の根元まで入れられたって構わない。もちろん、そこまでしない彼女の優しさが好きなのだが。
文字通りすみずみまで許しあう濃厚な相舐めも、徐々に動きが鈍りつつあった。飽きたからではなく、快感のあまり舌も指も動かなくなってくるゆえに。
稲は尚香の上から身体をのけ、脚の間に割って入った。妲己によって廃人寸前にまで追い込まれた貝合わせも、尚香が相手なら甘い期待だけに満ち満ちている。
「尚香、一緒に行きましょ……ふうぅっ」
「うん……うはあっ」
しとどに濡れた花弁と花弁を密着させるだけで、ニチャリといういやらしい音とともに二人の切ない喘ぎが漏れる。稲はゴクリと唾を飲み込むと、ゆっくりと腰をぶつけ始めた。多毛と無毛の姫割れが、淫靡な口づけを交わす。
「んあぁあっ……尚香……温かい……ココから、あぁ、あなたを強く感じる……」
「稲ぁ……すごいわ……溶けちゃう、アソコが、稲と一つになるみたいぃっ」
火照って湿った肉と肉が、一部の隙間もなく吸い付く。それは尚香の言うとおり、擦れあうというより、溶けあうようだった。
「ああ、行ってしまう! 私、どこかに、いやあぁ」
「大丈夫よ……ほら、こうすれば……離れないでしょ……? んっ」
尚香は怯える稲の手を取って、上体を起こさせた。ここ数ヶ月で大きさと美しさを増した乳房を押しつけあい、上下の唇で相手を貪る。
「あふう! もう私、何が何だかっ! ひいっ、あ!?」
肌と肌とが触れ合うたび、頭の中に光が瞬いた。脊髄にゾクゾクと震えが走り、腰の動きはさらに激しさを増す。
そして、ついに二人は終止符の向こうへと踏み込んだ。
「んんんん――っ!」
固く抱き合ったまま、互いの口の中にくぐもった叫びを送り込む。意識まで飛んだのか、しばらくは一対の彫像のように動かなかった。ようやく動けるようになってもすぐには離れず、互いの髪や肌をさすり合う。二人の肢体が、何度も余韻に震えた。
「尚香と一緒なら……この世界のままでもいいかな……」
稲が、とんでもないことを囁く。しかし、尚香も真っ向から否定などできない。
「そうね……でも、いつか時代が戻っても、私は忘れない。この温もりを、ずっと」
そうして二人は、もう何度目になるかも分からない口づけを交わした。
この後二人は山を下り、孫策らに合流。晴れて反遠呂智の戦いに身を投じることとなる。その先には、にっくき妲己との決戦が待っている。だが、どんな辱めを受けようと、信じあう二人の弓は、必ずかの白面金毛九尾狐を討つだろう。それはまた、別の物語である。
完
この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
孫尚香×稲姫
遠呂智の淫謀 稲姫編
真田幸村×孫尚香
Written by◆17P/B1Dqzo