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趙雲×貂蝉

 趙雲が公孫鑽に仕える前のこと。彼は、生まれ故郷の常山郡を飛び出し、修行の旅に出ていた。
 そしてこの日、彼はとある宿場町を通りかかった。

「むっ……今の声は!」
 若い女の悲鳴が、路地裏から趙雲の耳に届いた。考えるより先に、足がそちらへと動く。 角を曲がる。陽も差さぬ暗い路地裏で、一人の娘が二、三人の男たちに取り囲まれていた。
「お前たち、何をしている!」
 よく通る声で、怒鳴りつける。娘も男たちも、一斉に趙雲に目を向けた。
「あぁん? なんだてめぇは」
「邪魔すんなよな、あんちゃん」
 男たちはいかにもといった風貌と、口の利き方をしている。手には片刃の剣を握っていた。おおかた、このあたりのならず者どもであろう。
 そんな連中に囲まれ、娘は足をガタガタと震わせていた。旅の踊り子なのだろうか、やけに露出の多い服を身に纏っている。だから襲われても自業自得……と考える趙子龍では、もちろんない。
「俺らはこの女に用があるんだよ。関係ねえ奴はあっち行ってろ――はぅあ!?」
 趙雲は、疾風のごとく男どもの懐に踏み込んだ。その勢いを活かしたまま、槍の穂先がないほうで、みぞおちに突きを一撃くれてやる。鞠のように、男が一人彼方へ吹っ飛んだ。
「お前たちの暴挙、趙子龍が見過ごすと思うか! 覚悟!」
「ちょ、ちょっと待て。俺たちは、ぶべら!?」
 残りも反撃の隙さえ与えず叩きのめす。あくまでも穂先は使わない。しかし、痛いものは痛い。たちまちのうちに、男たちは地べたにうずくまってしまった。
 危機が去ったと知った娘は、趙雲に歩み寄ると、深々と頭を下げた。可憐さの奥に、年に似合わぬ色香と芯の強さを感じる。
「ありがとうございます。本当に危ないところでした……あの、お名前は?」
 見返りを期待しているわけではない。趙雲は黙って背を向け、立ち去ろうとした。その腕に、娘がすがり付いてくる。
「ど、どうされたのです」
 細く滑らかな腕が、鍛えられた己の腕に絡みついてくる。その感触に、さすがの趙雲も息を飲んだ。
「ほっとしたら、足がすくんで……どこかでご一緒に、休ませていただけませんか?」
 放っておけば、また危険な目に遭わないとも限らない。
「承知しました。私も、宿を探していたので」
 一片の下心もなく、趙雲は真面目な面持ちでうなずいた。

 予定よりかなり早く宿を取り、二人はようやく落ち着くことができた。殺風景な部屋の真ん中に、少し間を空けて座り込む。
 踊り子風の娘は、自らを貂蝉と名乗った。本名ではないだろうと思いつつ、趙雲も名乗り、来歴を簡単に語る。
「旅の武人様でしたか。だから、危ういところを助けていただけたのですね」
「いえ……私はまだ、未熟者ですよ」
「でも、ご恩はお返ししたいのです……」
 そう言うなり貂蝉は、趙雲ににじり寄ってきた。
「ね……」
 潤んだ瞳で見つめられると、いくら朴訥な趙雲でも、相手の言わんとしていることは分かる。それは、彼にとって最も縁遠いことの一つだった。
「こ、こここ困ります! 私はただ、貴方をお助けしたいと……」
 趙雲は顔を真っ赤にして、貂蝉の身体を押し返そうとする。貂蝉は微笑みつつ、艶やかな唇の端をぺろりと舐めた。彼の反応から、すべてを察したのだろう。
「ご立派ですが……あまりに女を遠ざけていては、ころりと騙されてしまいますよ? そうならないよう、教えてさしあげたいのです。女の身体というものを」
「む……それは……んんっ!?」
 何か言おうとするより前に、趙雲は唇を奪われていた。どうしていいか、さっぱり分からない。唇を、歯列を舐められ、舌を絡ませられる。それについていくのが精一杯で、唇が離れる瞬間まで完全に主導権を握られていた。

「ああ、身体が熱くなってまいりました。脱がせてくださいますか?」
「わ……分かりました……」
 彼女の言葉に操られるように、趙雲は舞姫の服に手をかけた。上半身は乳房を覆うだけ、下半身もゆったりした腰布をめくればは極小の肌着のみ。そんないやらしい装束を、自分の手で脱がせていくことで、趙雲の興奮はさらに高まる。
「……おお……」
 あらわになった乳房は、優美にして立派な曲線を描いて盛り上がっている。その頂点は、吸ってくださいと主張しているように屹立し、男の目を釘付けにする。
 たまらず、両手で鷲づかみにしてしまった。手の中で自在に変化する様を堪能し、谷間に顔を埋める。今の趙雲に、禁欲的な日頃の姿は微塵もなかった。
「あっ、あぁん……そんなに私などの身体がお気に召したのですか? 光栄です……」
 返事もせず乳肌を舐める趙雲の髪を、貂蝉はあやすように撫でる。それから、少し離れてほしいと頼んだ。
 いぶかる趙雲の眼前で、さらに淫靡な光景が展開する。
 貂蝉はうつ伏せで足を開き、くぱあ、と秘裂を自らくつろげたのだ。よく手入れされた淡い恥毛の下に、思っていたより小作りな裂け目が開いている。色は、桃色よりやや暗い。女の肉の色、としか当てはまる言葉がない。
「この淫らな孔に、子龍様の槍をはめ込んでいただきたいのです……」
 二つ並んだ穴の大きい方を、貂蝉は指差す。趙雲はそそくさと下を脱ぎ、押し倒しそうになった。
「ふふ、急いてはことを仕損じます。まずはよくご覧になり、味わい、それからお入れくださいませ」
「しょ、承知!」
 素直な趙雲は、色事の師の教えに何の疑いもなく従った。生々しい匂いを嗅ぎながら、犬のように舌を使い始める。豆のようになった部分が気になると、そこを重点的に。
「あぁ、お上手ですっ……趙雲様は武芸のみでなく、床の才能もおありですのね……」
 男は単純な生き物である。褒められて、舌の動きはさらに激しくなった。そんな彼の姿を見ていると、優越感が愉悦にすり替わり、どうしようもなく疼いてくる。
「あはぁっ! 分かりますか? そこ、ぬ、濡れてきているでしょう? 私もう、入れていただかないと変になってしまいそう……!」
「は、はい! では……趙子龍、参るっ!」
 趙雲は貂蝉に覆いかぶさり、腰を進めていった。見た目は花のように繊細なのに、入れてみるとその締め付けに圧倒される。
「おおぉう……これが、貂蝉殿の中ですか……凄い、凄すぎる……くう!」
「あぁああんっ! やっぱり、趙雲様の槍はとてもご立派ですっ!」
 いくら粗末な物でも、貂蝉はそう言ってやることにしている。だが、若く太い趙子龍の槍は、貂蝉を心から満足させた。
「そうです……時には浅く、時には深く……メリハリをつけて……ああ、素敵っ」
 やがて奥に突き当たると、男は本能でガスガス腰を振り始める。しかし、いかんせんこれが初体験では、自ら追い込まれるようなものだった。
「こ、これは何かが奥底から、ぬうおおっ!」
 趙雲は内からこみ上げる衝動に振り回され、雄たけびを上げる。早いから格好悪いとか、考えている暇もない。
 貂蝉もまた、悦楽を極めんと今だけは夢中になっていた。
「だ、大丈夫ですよ。お出しください、私の中に、思いっきりぃ!」
 互いをしっかりとかき抱く。熱いほとばしりと共に、二人は一体となった……

「うう。どれくらい、眠っていたのか……」
 目を覚ませば、窓の外がすっかり暗くなっていた。長旅の疲れに射精の絶頂が加わったのだろう。
「貂蝉殿? 貂蝉殿?」
 返事はない。貂蝉は既に、部屋のどこにもいなかった。一言の書置きも残さずに。
(さては――やられたか!?)
 嫌な予感が脳裏をよぎる。もしや、自分が眠りこけている間にと。だが調べてみると、槍も財布も無事だった。思わずため息が漏れる。
「疑った自分が情けないな。それにしても彼女は、何者だったのだろう」
 なぜ、男たちに囲まれていたのだろう。自分がしたことは、本当に正しかったのだろうか。
 だがそんな思索も、部屋に立ち込める貂蝉の残り香が止めてしまう。
(また、会えるのだろうか……いつかどこかで)
 彼が、未亡人との縁談を断れるほどに大人になるのは、まだ遠い未来のことである。

「今頃、あの方はいい夢をご覧になっているのかしら」
 貂蝉は既に、街を抜け出していた。その手には、書簡が握られている。
 純真な武人を手玉に取ったことに、少しだけ心が痛む。官舎から情報を盗み出し、追っ手の兵たちの相手をさせ、色仕掛けで足腰立たなくさせたのだから。しかし、今の彼女にとっては、使命がすべてに優先する。たとえ後世、悪女と呼ばれても。
 貂蝉は振り向かず、洛陽へと歩みを進めた。

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この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
呂布×貂蝉
石田三成×貂蝉
遠呂智の淫謀 貂蝉編

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Written by◆17P/B1Dqzo