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曹丕率いる魏軍が、孫呉と友好関係にある南中に攻め込んできた。そんな緊急事態だというのに、客将・源義経は戦にまるで集中できていない。
「な、なんと妖艶な……まともに見られぬ……」
その女は妖しく熟した身体を、華麗で洗練された装束に包んでいる。さらには彼女から、甘い香りがほのかに漂ってくる。彼は、眼前に立つ曹丕の妻・甄姫に、心奪われていた。
小手から生じる光の刃も、彼女を意識するだけで鈍ってしまう。
「さあ、覚悟はよろしくて？」
一方の甄姫は義経など意に介さない。共に戦う夫のため、迷うことなく横笛に口をつけた。そこから生じる音波は、剣や槍にも勝る破壊力を持つ。
「でやああっ！」
義経を守るように、一人の武者が二人の間に斬り込んだ。
「くっ、無粋なっ！」
甄姫は慌てて手を止め飛びのき、義経も弾かれたように正気を取り戻す。
「何をしている義経！ 今は戦の最中だぞ！」
凛とした声で、叱咤する。紫の甲冑で全身をくまなく覆い、手には激しく帯電した一振りの刀を握っている。立花誾千代もまた、孫呉の客将として戦に出ていた。
「うっ、すまない……」
横顔をチラリと眺める。男女問わず憧れの的となる誾千代の顔が、いつにも増して険しい。
（やはり、今のふがいないところが気に食わなかったのだろうな）
確かに、源氏武者としてみっともないところを見せてしまった。ならば、今から挽回するのみ。
「よし！ 息を合わせて行くぞ、立花！」
義経は声高に叫び、気合を入れなおした。
（これはどういうことだ）
平静を装いながら、誾千代は胸中の苛立ちを抑えられない。
義経は、女に慣れていない。先ほど祝融を見かけたときも、義経は動揺しまくり、顔を真っ赤にしていた。それは別にいい。女にだらしないより、よほどましだと思う。
問題は……誾千代にだけ自然体で接していることだった。それが彼女には、なぜか気に食わない。
（なぜ、私を見ても何も感じないのだ。私が他の女に劣るはずが……いや待て、私は女として見てもらいたいのか！？）
誾千代は、自分で自分の思考に驚いてしまった。常日頃から『女ではない、立花だ』と公言してきた。意地を張っていたわけではなく、それが当たり前だったから。なのに、これはどうしたことか。ひょっとして、相手が義経だからなのか。
しかし、今は悩んでいる場合ではない。
「ええい、これで終わらせるっ！」
誾千代は激しくかぶりを振り、雷切を高く掲げた。さらなる雷光を、その刀身に纏わせるために。が……
「きゃああぁっ！？」
義経も、甄姫も、誰もが目を疑った。誾千代の身体が激しく発光した直後、甲高い悲鳴と共に、倒れ込んだではないか。鎧から、黒煙がぶすぶすと立ち上っている。
「立花！」
小兵の印象が強い義経だが、身体能力が半端であるはずがない。鎧姿の誾千代を軽々と抱き上げていた。
「皆、少しだけ頼む！」
「お待ちなさいっ……うっ！」
追おうとする甄姫に雷の弾で威嚇射撃すると、風のように前線を駆け去った。
先ほど通ってきた地下道までたどり着くと、義経はようやく誾千代を下ろしてやった。ここなら、戦闘が及ぶ心配もない。
「大丈夫か？」
「ああ……自分の技で死ぬほど馬鹿ではない……」
少し辛そうだが、誾千代はしっかりと答えた。雷を操っているだけに、耐性がついているのだろう。
「しかし珍しいな。お前ほどの雷の使い手が、しくじるとは」
能天気にも義経は、思ったことをそのまま口にした。
「何か悩みでもあるのか」
「なっ……」
その一言で、誾千代は完全に頭にきてしまった。出会ってから今まで積もり積もっていた感情が、一気に噴き出す。
「き、貴様のせいだ！」
「俺の！？」
予想だにしなかった答えが、誾千代から浴びせられ、義経は思わず自分を指差していた。なおも誾千代は、顔を真っ赤にしてわめく。
「そうだ。貴様がいちいち、他の女たちに目を奪われるから！」
「いや、先ほどは危ないところだったが……お前がしくじったことと、何が関係ある！」
「そ、それはつまり……その……」
相変わらず鈍感な義経に反論されると、誾千代は口をつぐんでしまった。この凛々しい女武者は、思いのほか恥ずかしがりやな一面も持っている。
無意味な沈黙が続いた。ため息を一つつくと、義経は誾千代に背を向け立ち上がった。
「お前は技を失敗したから、混乱しているんだ。戦が終わるまで、そこで身を休めておけ」
義経は再び最前線へと戻った。うつむく誾千代を残して。
結局、戦は孫呉の勝利に終わった。しかし予想以上に長引き、気がつけば陽が沈んでいた。義経らは、見知らぬ星座の瞬く南中の地で、一夜を過ごすこととなった。
「今日も、女に振り回されてしまったな……ああもう、早く寝るとしよう」
義経も、武装は解かず横になろうとした。くそ暑いが、仕方ない。
「むっ、誰だ！？」
その傍らに立つ影がある。義経は反射的に飛び起きた。
「誾千代か。こんな夜更けに、どうした……」
何も言わず、誇り高い彼女が片膝をついて頭を下げた。
「先ほどはすまなかった。危険も省みず私を救ってくれたというのに」
「ああ、そのことか……」
昼間の誾千代の取り乱しようには驚いたが、別に怒ってはいない。義経は、とにかく自分の率直な気持ちを伝えたかった。
「俺はお前を軽んじてなどいない。むしろ、同じく雷光を操る無二の戦友だと思っている。それでは、駄目なのか」
誾千代は、コクリとうなずいた。
「今日、自分の気持ちに気付いてしまったのだ。単刀直入に言う。私はお前に――お、女としても見てもらいたい！ もうこれ以上、貴様の隣で苦しい思いをするのは嫌だ！」
それは昼間の、というより今までの誾千代とはまるで別人のような、情熱的な告白だった。
（うっ……別に肌を見せているわけでもないのに……今の立花は、確かに女だ……）
戦の駆け引きは天才的でも、恋の駆け引きはド素人の義経である。切実そのものの誾千代に、たちまち心の臓をわしづかみされてしまった。今や二人は友として男女として、一つの思いを共有している。
「し、しかし女として見るといっても、どうすれば」
「安心しろ。すぐに分かる」
誾千代はにじり寄り、目を閉じ唇を突き出した。
さすがにそこから先は本能で分かる。二人の影が一つに重なった。
「ややこしいな、貴様の鎧は」
「お互い様だろう。よくこれを一人で着られるな」
接吻を終えて服を脱がせて……と、ことは簡単には運ばない。鎧武者同士が事に至るまでには、笑ってしまうくらいの時間がかかった。人目につかぬところに行き、ようやく鎧を外すと、さらにその下も脱がねばならない。
そうしてようやく、互いの肢体があらわになった。誾千代の身体は、それは見事なものであった。戦士として無駄なく鍛え上げた中にも、大人の女のふくよかさ、柔らかさが同居している。特に乳房は、鎧の中に押し込むのが大変なのが一目瞭然なほど発育していた。無骨な漆黒のサラシで押さえつけているのだが、ほとんどはち切れそうになっている。
下半身は下半身で、小ぶりな尻とスラリと長い脚が美しい。それを隠すのは、これまた真っ黒な褌一枚のみ。俗に黒猫褌と呼ばれるそれは、横も後ろもほとんど紐状で、肌の白さを淫靡なほどに際立たせている。
（うっ！ これは凄すぎるっ！）
褌の下で、義経の股間がいきり立って当然であろう。前かがみになる義経を、誾千代は見逃さない。唇を舐めながら、ぴたりと身体を寄せる。
「立花が、女としても完全だということ、身をもって教えてやる」
「うおおおっ！？ 世の中に、こんなに心地よいことが……」
先ほどの警戒心はどこへやら、素っ裸で仰向けになった義経が悶えまくる。
地面に、誾千代のサラシがほどけて広がっている。むき出しになった美巨乳を、誾千代は彼の上に寝そべって押し付けていた。いや、正確に言えば、その谷間に義経の陽物を挟み込み、揉みしだいている。ぎこちない動きだが、滑らかで温かい肌が竿全体をとろかしてしまいそうだった。
「ふふ、こうすると男は嬉しいのだな？ 阿国から聞いておいてよかった」
義経の反応に満足して微笑みながら、誾千代は天与の武器で男を攻め立てる。汗にまみれ、静脈の浮き出た二つの果実が、義経の視界を占領している。さらには淡い先端までもが、ムクムクと勃起していた。視覚と触覚の相乗効果で、義経は頭の芯まで桃色に染まっている。
「あむっ……ほら、これで滑りもよくなるだろう……」
さらには唾液を潤滑油にすることを覚え、ぬちゃりぬちゃりという音まで加わった。
まさに暴発寸前。今の彼は壇ノ浦に追いつめられた平家に等しい。
「おおう……た、立花、まずい……離れろ……」
いくら誾千代でも、顔に汚濁を出されたら怒るに違いない。義経は切羽詰まった声で限界を告げようとする。
「待て！」
誾千代は許さない。動きを止めて、義経の暴発を巧みに防ぐ。空いた手で玉袋を転がしながら、うっとりとつぶやいた。
「子種が、出そうなのだな。私の中に注いでもらおう。立花は、貴様のすべてを受け止める」
想い人の精を受け止めたいという一念が、誾千代を性急なまでに突き動かす。黒褌の前をわずかにずらし、義経の竿の上に自らまたがった。
月と星の下で見る誾千代の姫割れは、無毛のたたずまいだった。剃ったわけではない。他の部分の著しい成長が嘘のようだった。
（ああ……俺もついに、女を知るのだな。いや、教えられるというべきか）
義経は上に乗る誾千代を眺めながら、そんなことを考えていた。押し倒され、ここに至るまで、義経は完全にされるがままだった。それくらい、誾千代の情念に圧倒されていた。
それにしても、なかなか腰を下ろしてこない。かすかに湿ったものが、鈴口をかすめるばかりだ。まさかいたぶっているわけでもないだろうが。
「うっ、どうした……？」
「く、暗いからよく見えないだけだ！ い、入れるぞ……くう……！」
やけに苦しそうにうめきながら、誾千代はのろのろと義経をくわえ込んでいく。
「うぐっ……はぁうううっ！！」
急に狭くなった肉洞を抜けるとき、ひときわ大きな悲鳴が上がった。そう、もし昼間なら、太腿を伝う数本の赤い筋が見て取れただろう。
「おぉ……俺は、誾千代に、包まれているのか……」
誾千代を心配しながらも、義経には未知なる快感が大波のように押し寄せていた。竿が潰れてしまうのではないかと思うほど狭く、それでいて柔らかく、何より潤いに満ちている。
ついに、誾千代の尻は義経の腰の上にぺたんと付いた。義経は誾千代に、根元までくわえ込まれた。戦の最中のような激しい息遣いが、上から聞こえてくる。
「ああ……これが、契るということなのだな。いつ化け物どもに犯されてもおかしくない世界で、己の意思で相手を選べた。立花は幸せだ……ひっ！？」
強烈な突き上げが、誾千代を襲った。挿入にさえ苦労した逸物が、さらに一回り太さを増している。突き上げは二度、三度と続いた。義経が下で腰を振っているのは明らかだった。
「今度は俺が、武者たる気概を見せねばな！ こうか、こんな感じか！」
「ちょっと、義経、激しっ、くあっ、ひいいんっ！？」
攻め続けられた義経は、自ら誾千代の手を握って突き上げ始めた。喪失したばかりの生娘にはいささか強すぎる律動が、立て続けに刻まれる。
あっという間に主導権を奪われ、誾千代は男の逞しさをその身に知らされていた。痛みの中に、肉同士の擦れあう快感がわずかに生じてくる。
「これが女……立花、お前は素晴らしい女だ！ 俺が守ってみせる！」
口ではそう言いながら、徐々に体勢を入れ替え、誾千代を組みふせていく。ついには完全に、誾千代を己の下にした。突き上げていた陽物を、今度は荒々しく打ち下ろす。タプタプと揺れる双乳を目にすると、勢いはさらに増した。たった一度の交わりで、この戦の天才は女との一戦もこなせるようになったというのか。
「あっあがああっ！ 義経、よしつねえっ！ 私を、もっと奥まで貫いてえ！」
もはや苦痛か快楽かも分からぬまま、誇り高き女当主は義経にしがみついた。女と言われるたび、肉洞がきゅうっと締まる。女の本能で、義経の子種を飲み干そうと蠢いた。
それに応じて、義経も男の本能を解放する。
「出る……誾千代！ うっ、ふおおっ――！」
子宮口までこじ開けんとするかのように、腰を叩きつけ……放つ。童貞若武者の初搾りの樹液が、奔流となって噴き出した。
「よ、義経、アア、んああ！ 出てる、こんなに、いっぱいぃ……ああ、嗚呼……」
自分の中を埋め尽くす熱い子種に陶然としながら、誾千代は意識を手放した……
それから数日後。義経は急に、誾千代の屋敷に呼ばれた。大事な用がある、と。いぶかりながらも、門をくぐる。
「ど、どうした立花、その鎧は！？」
そこには今までになく軽装の誾千代が待っていた。凛々しさはそのままに、胸元もへそ周りも大胆に開き、白い太腿を惜しげもなく晒している。それをまとう誾千代は、恥ずかしそうだが誇らしげでもあった。
「ふふ。貴様が二度と戦場で浮ついたりしないように、女も磨くことにした。立花は、女としても更なる高みを目指す！ 貴様と一緒にな」
「そ……そうか……また、戦に集中できなくなるな……」
悲劇の英雄・源義経。彼の文字通り第二の、そして薔薇色の人生は始まったばかりである。
完
この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
稲姫×誾千代
遠呂智の淫謀 立花誾千代編
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