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夏侯惇×小喬

 建安十三年、冬。赤壁大戦は、曹操軍の圧勝で幕を閉じた。
 数々の計略や疫病、不慣れな水上戦をものともせず、孫権・劉備連合軍を打ち破ったのである。大都督周瑜は戦死し、幼な妻・小喬は曹操の下に送られた。急速に求心力を失い、有力氏族の反抗に苦しむ孫家に、もはや彼女を取り戻す力はなかった。
『二喬を共に並べて楽しみたい』
 大喬の行方は知れないため、半分ではあるが、曹操の野望は叶ったかにみえた。だが。

 明けて建安十四年、許昌には春が訪れていた。
 戦乱の終息が見えてきても、曹操軍に気の緩みは見られない。曹操の従弟・夏侯惇も、夜遅くまで任務をこなし、ようやく自邸への帰路に馬首を向けていた。
 何といっても、右目に懸けられた眼帯が目を引く。右目は戦で矢を受け、引き抜いて食らってしまった。その後も武で曹孟徳の覇道を支えてきた、まさに股肱の臣である。
 清廉潔白にして剛毅果断、なかなかの男前にもかかわらず浮いた話もない。彼の曹操への入れ込みようが分かる。
 隣には、少々恰幅のいい従弟・夏侯淵が轡を並べている。人情に通じ、いつも気負わない彼は、夏侯惇とはいい組み合わせと言えた。
「そういや惇兄、あの娘にえらく懐かれてるんだってな?」
「ああ、迷惑している。孟徳も好きにさせすぎだ」
 いかにも楽しげな夏侯淵を隻眼でじろりと睨み、夏侯惇は吐き捨てた。
 曹操は小喬にある程度の自由を与えていた。もちろん妙な真似をすればただではすまないとはいえ、城内でほとんど今までどおりの生活を送らせている。ということで、例の調子で好奇心いっぱいに飛び回っている。
 その『被害』を最もこうむっていたのが、ほかならぬ夏侯惇だった。
 周瑜とは似ても似つかない彼を、小喬はなぜか気に入ったらしい。屋敷に遊びに来たり、軍事教練を日がな一日眺めていたり。気が散って仕方がないが、孟徳の女をあまり邪険に扱うわけにもいかない。
「そりゃ、殿が惇兄を信用しているからだろ? 手を出さないって意味で」
「当たり前だ。俺が孟徳の女を寝取るなど、あり得ん」
 女に手を出さない――ある意味、男として威張れることではないのだが、夏侯惇はふんと鼻を鳴らして言い切る。妙な噂を広めるなと釘を刺し、夏侯惇は従弟と別れた。

 守衛以外は誰もいない、独り身の家である。夏侯惇は真っ暗闇の中を、寝室へと向かった。刀を置き、鎧を脱ぎ、寝台の布団をめくる。
「うお!?」
 次の瞬間、夏侯惇は盛大にのけぞっていた。
「むにゃむにゃ……もう食べられないよぉ」
 布団の中には先客がいた。今話題に上ったばかりの少女……小喬がお約束な寝言を言っている。いつもの、生足むき出しの活動的な衣装のままだった。昼から潜り込んでいたのだろうか。
「おい、起きろ! ここはお前の部屋か!」
 怒鳴りながら、夏侯惇は布団を引っぺがす。大あくびしながら目をこすり、小喬がむくりと起き上がる。
「ふわあ……あっ、寝ちった……いい布団使ってるんだもん」
「だから、なぜここで寝る。夜中に他の男の家にいたら、孟徳が怒るぞ」
「えー、惇ちゃんとお話したいなー、と思って待ってたら、だんだん眠くなってきちゃって……」
「惇ちゃん……俺のことか……」
 よく言えば無邪気、悪く言えば軽い。とても亡国の姫君にはみえない。夏侯惇は頭が痛くなってきた。そもそも無断侵入としか思えないが、それは深く考えないことにした。慣れ始めている自分が怖い。
「まあいい。今日は何があった、手短に話せ」
「やったあ!」
 夏侯惇も、寝台に腰かける。小喬は嬉々として、今日の出来事をしゃべり始めた。
(なるほど……ガキの言うことはくだらんものも多いが、驚かされるものもある)
 結局、彼は小喬の気が済むまで話につきあってやることに決めた。

 だが話しているうち、小喬の声が少しずつ沈んでいく。
「こんな見たこともない大きな街で、あたし、これからどうなるんだろう……?」
 夏侯惇は自分の頭を乱暴にかく。女に悩みを打ち明けられるのは、彼の苦手な展開だった。
「そんなもの、なるようにしかならんだろう」
「うん、分かってる。分かってるんだけどね……やっぱり周瑜様がいるってことが、あたしには大きかったんだね……」
 いつしか、彼女のまん丸な瞳に涙が滲んでいた。これが男なら女々しいと殴り飛ばすところだが。
 ため息を一つつき、夏侯惇は静かに語りかける。
「周瑜のこと、忘れろとは言わん。俺や孟徳を恨んでもらっても結構だ。それでも、お前はこれからの幸せをあきらめるな」
「惇ちゃん……」
「孟徳もそうやってきたから、今のあいつがある」
 小喬はぽかんと口を開けたまま、その言葉を聞いていた。だがやがてぐしぐしと涙を拭い、彼女はようやく笑顔を見せた。
「大丈夫。吐き出したかっただけ。自分だけ不幸だなんて思ってないから!」
「そう、その方がいい……うおっ!?」

 夏侯惇の頬に、柔らかいものが押し当てられた。それが小喬の唇だと気付いたときには手を取られて、彼女の小さな胸元に押し当てられていた。
「あのな、孟徳はお前のことを」
「こんなに胸がドキドキするのは、久しぶりなの……」
(いかん、いかん! 周瑜の奴のことを笑えなくなる)
 潤んだ瞳で見つめられると、夏侯惇の心拍はさらに増した。絶対に守備範囲外だと思っていたのだが、涙と笑顔は男心を揺さぶらずにいられない。
「だいたい、俺のどこがいいというのだ?」
「おっかなく見えるけど、とっても優しいところ!」
「孟徳だってそんな男だ」
「うん、似てるかもしれない。でもやっぱり、曹操様と惇ちゃんは違うんだよ」
 今まで夏侯惇は、自分が曹操より優れた人間だと思ったことなど、一度としてなかった。劣等感というより、それを当然のことと受け入れていた。
 だがここに、曹操ではなく自分を選ぶ女がいる。それは理屈ではなく、男の矜持をくすぐった。
(すまんな、孟徳。今度ばかりは、俺のものはお前のもの、とはいかないようだ)
 心の中で曹操に詫びながら、夏侯惇はとうとう接吻に応じた。
 乳臭い娘だと侮っていたが、唇や舌の動きは確かに既婚者のものだった。暗闇の中、夫婦蝶のように絡み合う。唇を離れると、口の端から糸を垂らしたまま、小喬は微笑んだ。
「えへへ……惇ちゃん……夏侯惇様、上手だね」
「フ……お前もな」
 夏侯惇は、小喬を寝台に寝かせた。包みをほどくように服をはだけさせると、華奢な裸身があらわになっていく。どこもかしこも肉付きが薄い、まさに青い果実。それが男を知っているとことを、夏侯惇はとても信じられない。
「きゃううっ……お髭がチクチクするけど、気持ちいい」
 ささやかに乳房を掌に収める。菓子でも味わうように乳首を舐めると、身体をわななかせつつ、小喬が鳴いた。
「あっ、んんっ!」
 夏侯惇は床の上でも、余計な言葉責めなどはしない。ただ着実に、小喬の弱点を攻め上げていく。布団に大きな皺が寄り、股のあたりには染みができていた。
 指を伸ばし、潤ってきたことに気付くと、夏侯惇は股座に顔を突っ込んだ。清楚なたたずまいの陰唇から、発情した雌の匂いが漂う。ささやかな陰毛が、夏侯惇の顔に当たる。それらは気に留めず、夏侯惇は丹念に舌を使いだした。とくに、淫豆は念入りに、頃合いを見て秘裂の中に舌をこじ入れ嘗め回す。
「んっ、あ、ひいっ! それ凄い、すっごくイイ! もっと、あふれてくるよぉ」
 悶える小喬の言葉に嘘はない。夏侯惇の舌に敏感に反応し、少女の身体の奥底から、甘露はとめどなく溢れる。かつての敵将に心を許している、何よりの証拠だった。

「はあ……はあ……夏侯惇様、来てぇ」
 甘い囁きに背中を押されるように、夏侯惇は小喬を組み敷く。露出した陽物は、やはり相当に立派なものだった。それが小喬の中に押し入る様は、少々犯罪の匂いがしないでもない。だが、二人の心は通じ合っている。
 淫靡な水音を立てて亀頭ととば口が接し……めり込んだ。
「んはあああっ!」
 久しぶりの交わりに、小喬がのけぞって声を上げる。同時に、本能的に男を締め付けていた。
「ぬう……お前、凄まじいな、これは……うっ」
 夏侯惇とて、大人の男。多少なりとも女は抱いてきている。だが、若い小喬の具合は別格だった。無数の柔らかい肉襞が、前後に動くたび夏侯惇をこすり上げる。それが雁首に触れると、思わずうめいてしまうほどだった。
「夏侯惇様、気持ちいいよー! もっとズンズンしてぇ! あっあっあーっ!」
 小喬も生娘ではないから、最初から快感を口にする。いつしか夏侯惇に両足を巻きつけ、ひしと抱きついていた。
 夏侯惇は黙って、腰を突き出す。パンパンパンと肉を打つ音が、自分の耳にやけに大きく響いた。
 二人は互いの手を握り、一直線に絶頂へと向かう。小喬の子宮は下り、いつでも夏侯惇の情けを受けられるように準備ができていた。
 夏侯惇も、もはや孟徳への遠慮など頭にない。小喬を心身ともに自分のものとすべく、最後の追い込みをかける。
「はひぃ、ああ、夏侯惇さまぁっ! あたし、もう、すごいの、凄すぎてぇ! ああダメ、ひうっ」
 自分の下で歓喜に喚く小喬の肩を、物も言わずぐっとつかむ。鍛え抜かれた戦士の筋肉を総動員して、隻眼の猛将はとどめの一撃を加える。
「ふんっ!」
「あ、ひっ、あはあ――っ!」
 極限まで肉と肉が密着し、小喬は夏侯惇の色に染まった。かつてないほどの体液を少女の中にほとばしらせながら、夏侯惇は小喬の唇を貪った。
 やがて襲い来る罪悪感を遠ざけようとするかのように。

「それで、隠すに忍びなく、自ら詫びに来たか。お主らしい」
 翌朝。早くも夏侯惇は曹操の屋敷を訪れ、頭を下げた。君臣を越えた仲とはいえ、さすがに許されることではない。どんな罵倒も処罰も、甘んじて受けるつもりだった。
 ただ、小喬は罰して欲しくなかった。
「すまん、孟徳。すべては俺の過ちだ。片目を潰すなり首を刎ねるなり、どうにでも……」
「夏侯惇! いかにお主でも許さんぞ」
 やはり……夏侯惇は覚悟を決めた。
 だが、曹操は意外なことを続けた。にやりと笑いながら。
「あの娘を、不幸になどしたら。その口から、決して一夜の過ちなどと言うな。死んで責任を取るなどもってのほかぞ」
 そのとき、夏侯惇はあらためて孟徳の器を知った。董卓などと比べた自分が馬鹿だった。自然と、左目から熱い水が流れる。
「孟徳! ああ、約束する!」
「そもそもだ。わしの悪行、お主とは比べ物にならぬではないか。袁紹と組んでは花嫁泥棒、後家欲しさに子脩と典韋が死んだ」
 曹操は知っていた。小喬が、夏侯惇に心を許していることを。そして、その二人を引き離すほど、乱世の姦雄は無粋ではなかった。

 何度も礼を言い、夏侯惇は屋敷から出ていった。曹操は満開の桃を眺めつつ、独り嘆息した。
「この戦、夏侯元譲のために起こしたようなものだな……むぅ、惜しくなどあるものか。噂ほどいい女でなかった、気もするしな……」
 独り言は、未練たらしくいつまでも続いた。痩せ我慢を重ねて、人は英雄になる。

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Written by◆17P/B1Dqzo