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遠呂智×妲己

 千年狐狸精――妲己は今、巨大な扉を前にほくそ笑んでいた。彼女が笑うときは、大いなる悪だくみをしているときに他ならない。
「うふふ。もう、私を止めることはできないわよ……」
 気候は常春、住人は不老不死。仙界は、永遠に変化の起きない世界でもある。妲己はそれを我慢できない、数少ない住人だった。だいたい、淫乱と残虐の象徴たる彼女が、千年生きたとはいえ仙界に迎えられたこと自体が不思議ではある。
 そんな彼女は、ふとしたきっかけで知ってしまった。仙界の底には、かつて大罪を犯して封印された魔王がいることを。そいつを解放すれば、とても楽しいことになるだろう。
「えいっ! ベリッとね」
 長い歳月を経て破れかけていた封印の札を、躊躇なく引き剥がす。重い音を立て、混沌への扉がひとりでに、ゆっくりと開いた。

 妲己を迎えたのは一面の闇。明かりも、足場さえもない。妲己はその闇に、ふらりと身を躍らせた。
 ひたすら、落ちる。何も見えない。何も聞こえない。
 無限に続くかと思われた自由落下の果て、狐そのものの足がようやく地に着いた。もちろん、妲己には怪我ひとつない。
 地の底は、とてつもなく広い、ようだった。真っ暗ではあるが、空気の流れからそれとなく分かる。
「さて、と……魔王さんはどこかしら」
 よく利く目でキョロキョロと周囲を見渡す。やがて、闇に慣れた目は彼方に何者かの姿をとらえた。自分よりはるかに大きな、おそらくは男が、独り直立しているのを。
 すぐに、妲己はそいつに駆け寄った。仙術で、自分の周囲が明るくなる程度の灯りをともす。
 やはり、裸体の巨漢だった。腕、胸板、脚。どの部分も、今まで妲己が会ってきたどの男たちより、逞しく美しい。肌は顔料を塗りたくったように青く、さらに顔には黒い筋がいくつも走っている。
 静かに目を閉じていた。
「あなたが、魔王……遠呂智……」
 妲己が、おそるおそる呼びかける。これで、立ったまま死んでいたりしたら話にならない。
 幸いにして、その眼は開かれた。紅と碧に禍々しく輝く瞳が、傲慢に妲己を見下ろす。
「そうだ……女一人、なぜここに来た。仙界の命を受け、我を討ちに来たか。我に永劫不死の呪いを与えておきながら」
 口調は静かだが、地の底から響いてくるような声だった。どこか、哀切を帯びている。妲己にとっては、なかなか痺れる声をしている。
「逆よ。私はあなたを解き放ちたいの。もっと衝動のままに、楽しく過ごしたいのよ」
「ご苦労なことだな……」
 思ったより、魔王は乗り気でない。説得には骨が折れそうだ。それに、遠呂智を縛り付けている鎖は、妲己にさえ断ち切れる代物ではなさそうだった。

 そのとき妲己は、己が足元に蠢くものに気付いた。妲己の身の丈ほどに長く、自らの意思で這いずり回っている。何本も何本も。
「な、何よこれ!? へ、蛇じゃないっ」
 地底を無数の大蛇たちが埋め尽くしていた。元をたどっていくと、それらはすべて遠呂智の股間から伸びている。地獄そのものの光景に、妲己は驚愕した。
 しかも大蛇といっても、それらには目も牙もなかった。のっぺりとしたその外見は、見ようによっては男根にも似ている。
(嘘……こんなに立派なのを、持て余してるの?……ますますもったいないわ)
 妲己は、真っ赤な唇をペロリと舐める。その卑猥な外見は、遠呂智に対して嫌悪感を抱かせるどころか、いっそう惚れ込ませることとなった。妲己は生まれながらにして、愛欲の権化なのだから。
 蛇どもの一匹を、妲己は手に取った。
「何を遊んでいる」
「へえ、本当にチ××そっくり。しかもエラはご立派だし」
 遠呂智の意向も、本来の目的も、知ったことではない。蛇の頭、それから胴体を、妲己は優しくもいやらしい手つきで撫でまわす。この淫婦に触れられたら、並の男ならものの数秒で射精してしまうだろう。
「ああ、この圧倒的な太さ、長さ、硬さ。さすがは魔王ね……」
 熱い吐息を吹きかけながら、妲己は長い爪の先で異形の逸物をいじくる。
「キシャアアッ……」
 蛇の口から、気味の悪い叫びが漏れた。遠呂智は相変わらず無表情でも、その体の一部は反応している。
「もっと良くしてあげる。ちゅ、ちゅうっ、あむううっ……」
 上目遣いで何度か口づけしてから、妲己はこの爬虫類を口内に飲み込んでいく。口唇愛撫は日常茶飯事の彼女でさえ、遠呂智のモノは規格外だった。喉を占領される苦しさから、目尻に涙がたまる。
「れろ、ちゅばっ! んん、これは舐めがいがあるわね……んふぅ……じゅぷ、じゅぽおっ」
 ぬめった舌を存分に這わせ、雁首をくすぐり、蛇の頭をベトベトの唾液まみれにしていく。少しだけ息継ぎしてから、またも頬張り、今度は頬がすぼまるまで吸引する。蛇はますます猛り狂い、人間の男根にはありえぬ動きで悦びを表す。
 そして、ついには遠呂智本体が、わずかに体を震わせた。
「この、苦痛以外の感覚……久しぶりだ」
(さすがあたし!)
 魔王を感じさせたことで、妲己はますます高ぶる。彼女の情熱は、魔王解放とはあさっての方向へひた走っていた。
「じゅるるるっ……じゃあ、さらに盛り上げていこうっ!」
 妲己が叫ぶや否や、極薄の衣装が光の粒となって散った。病的に色白な裸体のすべてが、惜しげもなくさらされる。その中で、綺麗な桃色の乳輪がひときわ目をひく。まったく、俗説はあてにならない。
 蛇の胴体を、静脈の浮き出た豊かな双球で挟み込む。頭はくわえ込んだまま、上半身を巧みに揺らし、心地よい摩擦を与えていく。潤滑油もないのに乳肌は軽やかに滑り、手は軽く添えているだけなのに胴体への乳圧はすさまじい。対する遠呂智の逸物も、埋没することなく妲己の口を犯していた。とても人間同士では実現しえない。
「んふふっ、んふっ、ふうう……!」
 遠呂智に奉仕するだけで、妲己は体の芯から燃え上がるようだった。剥いた卵のような美尻を、モジモジさせる。童女のような秘裂は、触れてもいないのに内側から果汁を滲ませている。幾筋かは、太腿にまで伝い落ちていた。
 一刻も早く、挿れたい。さすがの彼女も、出会ったばかりの男にここまで傾倒したことはなかった。
 一方の遠呂智も、悪い気はしていない。眼前で展開される痴態は、久しく忘れていた生命の躍動そのものだった。この妖女が逸物の一つをしゃぶり、擦り立てるにつれて、失われていた力が流れ込んでくる気がする。錯覚かもしれないが。

「ぷはあっ! ああもう……我慢できない! 挿れさせてぇっ!」
 妲己が、恥も外聞もなく口走る。遠呂智を味わうには、もはや口では足りなかった。
 さんざん可愛がった大蛇を握りしめ、無毛の股間にあてがう。恩を返すつもりなのか、肥大化した陰核を蛇がチロチロと舐めた。妲己の腰が跳ねる。
「あん、はふ! もう、おイタはダメじゃない……あぁあぁあっ!? ま、待って、おほおおっ!!」
 妲己が動くより早く、蛇は女の中心へと頭を突っ込んでいた。蛇の胴と妲己の肉襞がジュプジュプと、聞くに堪えない卑猥な音を立てる。遠呂智が、ついに自ら動いたのだ。久しぶりの女を、我が物とするために。
 予期せぬ衝撃に、さしもの妲己も目を見開く。だが、やがて恍惚とした笑みを浮かべた。
「ふぅ、は、入っちゃったぁ……やっぱり魔王は違うのね……」
「面白い。嬉々として我を受け入れた女は、妲己、貴様が初めてだ……誰もが我を忌み嫌い、貫かれればあっけなく息絶えた……」
「そんなの、相手の女が大したことなかったからよ。私なら絶対に、あなたを満たしてあげられる。ほら、もっと来て」
 妲己は冷たい床に寝そべり、自らの両膝を抱えた態勢で股を開いた。妖狐と蛇の結合が、二人の眼にくっきりと焼き付く。
「よかろう。我も、貴様を嫌というまで満たしてやる」
 すさまじい勢いで前後運動を繰り返す蛇の傍らに、また別の蛇がにじり寄ってきた。一匹でも窮屈そうな膣口に、こいつも割って入るつもりらしい。
「二匹ぃ……いいよぉ、もっとちょうだい……かはあああっ! 壊れる、壊れるふううっ!」
 えぐり込むように突入され、妲己は背骨が折れんばかりにのけぞった。だが痛みはない。ただただ圧倒的な存在感と律動が、襲ってくる。二匹の大蛇は先を争うように子宮口に達し、狭隘な入口を押し広げ、最深部を占拠した。
「くあああ……赤ちゃんの部屋、いっぱいだよぉ……えっ、今度は……おひいいっ! おひり、おひりもおおっ!?」
 排泄器官とも思えぬ可憐な窄まりに、三匹目が遠慮なく潜り込む。暖かい腸内を、さながらねぐらに帰るように突き進む。出すためのところに逆に入れられる違和感が、肛姦慣れした妲己にはたまらない。
 さらには、寂しくなっていた上の口にまで、四匹目の蛇が突き込まれた。当然、先ほど以上の舌技で歓待してあげる。
「むぐうっ! ちゅばっ、じゅるるるっ! 最高よ、あなたから離れたくないっ! もっと、もっと奥まで突きまくってぇぇ!」
 人間の女なら絶命か発狂しているはずなのに、妲己は当然のように四匹の蛇を全身で貪る。それを見下ろす遠呂智もまた、完全に征服欲をよみがえらせ、妲己を猛然と攻め立てる。
 初対面にもかかわらず、二人はこれ以上ないほど溶け合っていた。

 地の果てで繰り広げられる肉欲の宴も、やがて最高潮を迎える。
「はっ、はひっ……! も、もう気持ち良すぎて死んじゃう……」
 妲己は、呼吸困難になるほど快楽の波を味わっていた。あとは、とどめの一番大きな波を待つのみ。
「ならば、我が精を受けて逝くがいい」
 魔王の丹田から生じる生命の奔流が、四匹の蛇の体内を滝のごとく流れ落ちていく。蛇どもは妲己の胎内で、一斉に口を開けた。
「受け取れ、妲己」
「は、はい、遠呂智様、思いっきり中に、おふううぅうっ――!!」
 気道に、直腸に、そして子袋に。灼熱の奔流が、穴という穴になだれ込む。幸福の頂点の中で、妲己は意識を混濁させていった。

「凄い、凄いわ遠呂智様……ああんっ、今イッたばかりなのに、ダメぇ」
 妲己は子猫のように、遠呂智の足もとにじゃれついている。蛇たちに舌で裸体を舐められるだけで、余韻にヒクつく。
(仙界の者どもは、この力を恐れた。我が仙女たちを犯し尽くし、我の眷属が仙界を埋め尽くすことを……)
 魔王・遠呂智の犯した大罪。それは恐るべき繁殖力によって、仙界の秩序を崩壊させようとしたことだったのだ。
 遠呂智の全身は、いつしか青白き闘気に包まれていた。あれほど頑丈だった鎖が、ひとりでに崩れ落ちていく。ここに、魔王は解き放たれた。
 ようやく落ち着いた妲己が、すっと立ち上がる。おぼろげな光の粒が、素肌にまとわりついていく。瞬く間に、ここに来た時と同じように、極薄の衣に包まれていた。
「ねえ。こんなところ、さっさと出ちゃいましょうよ。私たちは、好きなように生きる権利があるのよ」
 自分よりはるかに大きな、運命の男を見上げて目をつむる。
「……よかろう。永遠でなくとも構わぬ、我もまた我自身の生を貫くのみ」
 遠呂智はその唇に、軽く己の唇を重ねた。そして、彼女に少し離れるよう命じる。
 床いっぱいにうごめいていた大蛇たちは、遠呂智の鎧となって彼の身を包みこんだ。その右手には、身の丈ほどもある大鎌が握られている。のちに『焦熱』と呼ばれる大鎌を、魔王は高々と振りかぶった。
「この一撃が、新たなる世界の幕を開けるのだ!」
 虚空に向かい、勢いよく振り下ろす。その軌道上の空間に、ゆがみが生じた。地獄からの脱出口が、開いた。
「行くぞ、妲己」
「はぁい、遠呂智様。じゃあねー、仙界の皆さん。誰にも邪魔はさせないんだから」
 二人は連れ立って、時空の歪みの中へと消えた。

 仙界と人界を巻き込む大乱の、始まりであった。

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遠呂智・妲己・清盛×女禍  妲己×真田幸村  遠呂智の淫謀 妲己編

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Written by◆17P/B1Dqzo