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女禍×太公望

 官渡の夜空に、一筋の光が飛んだ。
「ようやく、終わったか」
 それを見届け、地上では一人の女が安堵のため息をついていた。なぜなら、光はただの流れ星などではない。魔王・遠呂智の魂が仙界へと封じられた軌跡なのだから。
 氷の美貌というのだろうか。女の顔立ちは整いすぎて、近寄りがたいものがある。
 服は豊かな胸元を強調するように、大胆に布地を削っている。飾りをつけたへそが、さらに扇情的に見せている。何より目を引くのは、頭の後ろに浮かんだ大きな輪だろう。何の支えもついていない。人間ではないことを、如実に物語っていた。
 女の名は女禍。人間の産みの親ともされる伝説の女神が、人の姿をとっているのだった。
「後は任せたぞ、曹孟徳」
 今頃、人間たちは勝利の宴を賑やかに開いている。そこに溶け込める性格でないことは、自身が一番よく分かっていた。ならば、静かに去るのみ。

「手伝おうと思ったが……遠呂智の封神は済んでしまったようだな」
 そのとき不意に、女禍に声をかける者がいた。
 振り返れば、白馬にまたがった若者が、女禍を見下ろしていた。その雰囲気は、不相応なまでに落ち着き払っている。片手に持った釣竿も、平服そのものの衣装も、この戦場には恐ろしく似合わない。
 太公望。後世、周の軍師として語られる彼も、実は仙界の住人であった。
「坊やの指図だろう? 劉備がこの地に駆けつけたのは。あれがなければどうなっていたか、分からなかった」
『坊や』。その呼び方だけで、仙界での二人の立ち位置が分かろう。
「だが、中心になったのは曹操だった。大筋ではお前の描いたとおりだったな、女禍」
「……途中まではな。ああ少し待っててくれ、馬を引いてくる」
 そこで太公望は、おやと思った。女禍の表情が、予想に反して浮かないことに。

 金の鏡のごとき満月の下を、女禍と太公望は轡を並べて進んだ。仙術でどこにでもあっという間に行けるのだが、あえてゆったりと歩を進めるのも悪くない。
 二人は小高い丘まで登り、馬を下りた。眼下には街の灯が輝いている。三国時代と戦国時代の街並みが、今やいたるところで入り混じっていた。
 それをぼんやりと眺めながら、女禍は口を開いた。
「遠呂智は倒れた。妲己ももはや、切り札はすべて失った。だからといって、この世界は丸く収まると思うか?」
「そんな心配をするとは、らしくないな。クク……人の子に情でも移ったか? 遠呂智を討つための駒に過ぎぬ、彼らに」
 太公望はあえて鼻で笑った。
「奴らは、駒などではない」
 女禍は自分でも驚くほど、語気を強めていた。氷のごときかんばせが、わずかに赤みをおびている。
「お前も見ただろう。危機を前にした人間たちの底力、本当に見事なものだった。だからこそ……勝ち取った平和がもろくも崩れ去るのは見たくないのだ」
 太公望は、しばらく押し黙ったままだった。二、三歩前に踏み出す。そこで眼下に広がる街並みを前に、大仰に両手を広げた。
「それこそ、杞憂というものだ。あの光を見よ。混沌としているが、人の子が照らす美しい光ではないか」
「坊や……」
「魔王・遠呂智との死闘。それが語り継がれていけば、人は愚かな争いを止められる。そう、私も信じている」
 相変わらずの芝居がかった物言いだが、声には人間への信頼が溢れていた。女禍は、思わず頬を緩めていた。
(フッ。坊やも、ずいぶんと変わったな……悪くない意味でだ)
 その変化は、彼女に一歩を踏み出させるに、十分であった。

「うっ?」
 太公望の頬に、温かく柔らかなものが押し当てられた。それが女禍の唇だと、彼はにわかに信じられなかった。
「どういう風の吹き回し……んぐっ!?」
 唖然とする太公望の顔を女禍はさらに引き寄せ、文字通り唇を奪う。ほとんど強奪するように舌を絡める。一方で手を取り、自分の胸をつかませる。
 かなり強引だが、太公望は抵抗しない。なぜかは分からないが、女禍は自分を認めてくれている。さんざん小僧扱いされてきたことを思えば、素直に嬉しかった。
「んっ……ふうっ……」
 太公望も負けまいと奮闘するが、技巧の差は大きい。仙女の香り、味、感触に酔いしれていた。とりわけ、服の下で立派に膨らむ乳房から手を離せない。それでいて、直に触れさせてくれないあたり、なんとももどかしい。
 長い接吻が終わるころには、太公望は軽く酸欠になりかけていた。息をするのも忘れていた。口の端に垂れる涎を、手の甲で慌てて拭う。
「ふう……こういうことになると、お前にはいいようにされてしまうな」
 取り乱す太公望を前に、女禍はしてやったりといった笑みを浮かべている。すっかり、いつもの彼女が戻ってきたようだった。
「フフッ。坊やだからさ。まあ悪いようにはしない。駆けつけてくれた礼だ」
 衣の上から、円を描くように、いたぶるように。太公望の股間を指先で撫で回す。気持ちいいのだが、まだ物足りない。絶妙な止め具合であった、
「さあ自分で見せてもらおうか。全知全能の軍師のここを。ほらほら」
「はうお、くうっ……で、でないと?」
 太公望としたことが、分かりきっていることを聞いてしまう。女禍の笑顔がいっそう輝いた。
「もちろん、お預けだ」
「クッ……ひどい話だな……う、おっおっ……仕方あるまいっ……」
 腰をヒクつかせながら、結局太公望は自らの手で下半身を露出させていく。
(この醜態、蜀の面々には見せられないな)
 特に女性陣に知れた日には、あっというまに話に尾鰭がついて広まるだろう。
 とうとう、太公望の竿が女禍の目に晒された。
「ほう……これはこれは……ふっ」
「途中で止めるな、気持悪い」
 どんな宝貝が出るかと思いきや、成年男子としてはいたって標準的だった。もっとも、女禍にしてみれば、あまり化け物じみたものが出てきても困る。

「まあ気にするな。気にする暇もなくなる」
 女禍は、太公望を半ば押し倒すように、仰向けで寝かせた。彼の上に、馬乗りになる。自然と様になるのが、おそろしい。
「これから坊やは、私の下で鳴いて踊ってもらうのだからな……行くぞ」
 まずは竿を、手袋をはめた細い指が柔らかく握った。微妙に曲げ伸ばししながら、上下に擦り立てる。鈴口や門渡りは、とりわけ絡みつくように。ふぐりは、手の中で転がすように。絹よりさらに上質の布でしごかれると、若き仙人の宝貝はみるみるうちに勃起してきた。
「おあ、ああっ……ま、まだまだ……ふおおお!? な、何をおおお!?」
 太公望が、彼らしくもない悲鳴を上げた。
 青年の尻の穴に、女禍の指がズブズブともぐりこんでいる。痛いような、むずがゆいような。ただ言えるのは、とてつもなく屈辱的だということだった。竿の先から尻の穴まで、今の太公望は女禍の玩具と化している。
「くっ、全知全能たるこの私に、このような屈辱をっ」
「しかし……少しいいかも……と思っていないか?」
「…………」
 にやりと笑う女禍に対し、太公望は口をつぐんでしまった。悪態をつきながら、彼はこの仙女の見せる世界に引きこまれている。

 手袋が我慢汁でびしょ濡れになるまで虐めても、まだ女禍の責めは終わらない。
「こんな趣向はどうだ、坊や」
 女禍は、太公望をまたいで立ち上がった。膝上まである靴を、脱ぎ捨てる。何をするのかといぶかる太公望の竿先に、女禍の足の裏があてがわれた。
「まさか……うお、あああっ」
「そのまさかだ。安心しろ、痛くはしない」
 踏み潰すのではなく、女禍は形よい足指で竿先をさすり始めた。素足ではなく極薄の生地で覆われており、素肌とは違った感触がまた心地よい。先ほどの指での責めに、勝るとも劣らない。
「うぐ、ああっ……調子に……乗るな……おふぅ!」
 しかし、女に踏まれるということへの抵抗は残る。必死で矜持を保とうとする太公望を見て、女禍は吹き出していた。
「黙って集中できぬのか。お前はいつも、いい声で鳴いてくれる」
「くっ……この私としたことが……おっおっおっ!」
 唇を噛んでも、股間は正直極まりない。太公望は腰をカクカクと虚しく振り、無意識のうちに亀頭を自ら女禍の足裏に押し付ける。坊や扱いするだけのことはある手並み足並みだった。

 かくいう女禍も、生意気な坊やを攻めに攻めて興に乗っていた。腰布の下は、加虐の悦びにしとどに濡れそぼっている。もう、これ以上遊んでいる余裕はなかった。
「さあ、とどめをさしてやる。私の中で締め上げ、擦りたて、思う存分果てさせてやるぞ」
 女禍は陶酔しきった口調でつぶやきながら、薄布の股間部を自ら破った。その格好のままでしようというのだ。
(似たもの同士か)
 太公望は、なぜか妲己を思い浮かべていた。
 やはり、女神は上からが好きらしい。舌なめずりしながら膝を曲げ、腰を落としていく。
 粘膜同士が触れ合ってくちゅりと水音が立ち……冷徹に見えて好色な女神の膣内は、入ってくる者を貪欲に出迎える。まるで童女のように無毛の陰丘を割り開いたと思ったら、幾千もの舌が絡みつくごとき肉襞に包まれ、しゃぶられる。
「じょ……女禍……」
「おおうっ、立派に……なった……っ! 口だけではないな!」
 その様子が、太公望の側からは見えそうで見えない。だがグチュグチュという淫水の音が耳に届き、かえって妄想をかきたてる。
「ほら、お前も怠けるな。私に快楽を捧げろ、坊やっ!」
 久しぶりの快楽に肉襞をきゅっきゅと狭め、太公望を攻め立てる。絶妙の締まりとぬめりを味わい、むき出しになった胸を揉みしだきながら、太公望も負けじと突き上げる。
「お前こそ、昔と少しも変わっていない……冷たく見えて、こんなにも温かく柔らかい……」
 何気なく、太公望は感じるままに口にした。だがその一言が、ことのほか女禍の心に響いた。
「そ、そんなことは……あっ、ああっ! ずるいぞ、貴様っ」
 この男は普段皮肉ばかり言っているから、何気ない言葉がとても優しく響く。直に揉まれる胸から、突き上げられる膣内から、快感がとめどなく押し寄せる。
 身体を重ねて、初めて気付くこともある。互いにとって、今繋がっている相手は愛しい存在なのだと。
「女禍……美しい、お前は本当に、人界の誰よりも」
「坊や、こんなにいい男になってっ! 行こう、共にっ」
「ああっ!」
 もう、言葉で責めたり責められたりする必要はない。ここが外だということも忘れ、二人は高みへとひたすら上り詰めていく。互いから目を離さず見つめあい、しっかりとその手を握りしめる。本当に、このまま仙界へと飛んでしまいそうな心地の中……
「あぁあぁあ――っ!!」
 二人は、歓喜の爆発を共に迎えた。

 女禍は太公望の上に倒れこんだ。疲労しながらも、満ち足りた笑顔を浮かべている。
「……帰ろうか、仙界へ。伏犠も待ちくたびれているだろう」
「ああ。これから先は人の子にゆだねる。彼らの歩み、遠くから見守らせてもらおう」

 そして、遠呂智なき世界に最初の朝が訪れた。女禍と太公望がいたはずの丘の上には、二頭の馬がのんびり草を食むのみ。
 以後の歴史に、仙界の住人たちが現れることは二度となかったという。

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この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
遠呂智・妲己・清盛×女禍

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Written by◆17P/B1Dqzo