新着情報 作品一覧 リクエスト WEB拍手返事 リンク ごあいさつ

陸遜×孫尚香

火を見るより明らか、という言葉がある。

「ちょっとぉ、何でこうゾロゾロと敵が湧いてくるのよ!」
『弓を得物とする娘が、屈強な兵たちのど真ん中に単身飛び込んだらどうなるか』というのも、
その一例だろう。
 娘は明るい色の髪を短く切りそろえ、勝気そうな表情をしている。いかにもお転婆娘という
雰囲気を醸し出していた。それでいて、整った顔立ちには自然と気品も漂っている。
何より、東洋人離れした瑠璃のような瞳が眩しい。
 服の生地は薄く、発育良好な身体の線がよく見て取れる。胸元や腹部は大きく肌が露出して、
健康美を振りまいていた。
 体術を交え、敵を追い払いつつ矢を放つ。かなりの技量に達していたが、無謀のそしりは
免れまい。勢いに任せて単身突撃し囲まれてしまうのは彼女の――『弓腰姫』こと孫尚香の、
悪い癖であった。

 時に建安十三年。黄蓋一世一代の『苦肉の計』により、曹操軍の大船団は赤壁の宵闇を
炎に染めた。それでも天下に王手をかけた曹操軍である。混乱しつつも、必死に防戦を
続けている。尚香一人で突破できるほど、守りは薄くない。
「これでどう!?……やっ、やっ、やあっ!」
 鋭い矢が敵兵どもの眉間や喉元に、容赦なく突き立つ。それでもなお、無数の刃が尚香の
柔肌を狙って降り注ぐ。また一突き、槍の穂先が剥き出しの太腿をかすめた。白い肌の
上に真っ赤な筋がツツーッと引かれる。
「くっ……あうぅっ! ま、まだまだよっ」
 いつしか、引き際も逃してしまっていた。矢を射る間隔も長くなっている。孫家の姫君が、
味方の勝利も見届けられず散るというのか……

「姫っ!!」
 そのとき、大河を吹き抜ける疾風(はやて)のごとく、何者かが尚香と敵兵の間に割って入った。
一振りの短剣を縦横に振るい、姫君に群がる輩を薙ぎ払っていく。
「陸遜!?」
 救援者の見慣れた横顔に、尚香は安堵と喜びを隠せなかった。
 顔立ちに幼さの残る青年であった。尚香より年下かもしれない。背もあまり高くなく、
尚香と同じくらいであろう。
 青年の名は陸遜、字は伯言。呉郡でも五本の指に入る名門・陸家の跡取りであった。
だが家柄では足元にも及ばぬ孫家に敗れ、一臣下として孫権に仕えている。いつか、お家再興を
果たすために。
 今回の戦いでは周囲に若い若いと言われつつも、あえて前線に参加していた。可愛い顔して、
こうと決めたら譲らない。そこが妙に尚香と似ている。
「遅くなりました。ご安心を」
 責めるような言葉は一つも口にせず、陸遜は尚香に微笑みかける。そして彼女の盾にならんと、
その前にすっくと立った。重い鎧も着けずに。
 姫君には、彼の背中がやけに大きく見えた。
「……わ、私もへこたれていられないっ!」
 守られているだけの存在ではない。気合を入れなおし、手負いの弓腰姫は再び矢をつがえた。


 そこからの、二人の連係と奮闘は目を見張るものがあった。
 だが、衆寡敵せず。じりじりと舳先に追いつめられてしまった。槍衾が迫る。ちらりと
後ろを見れば、遥か下には真っ黒な夜の長江のみ。水温は低く、飛び込んで助かる保証はない。
 それでも、ここで華々しく切り込んで散る、という考えは陸遜の頭になかった。自分にも
尚香にも未来がある。ならば選択は一つ。
「姫、御免!」
 いきなり、陸遜は尚香に組み付いた。彼が思っていたより、姫の身体は柔らかく軽い。
「え……きゃああぁっ!?」
 そのまま、強引に船の先端へと押し切っていく。華奢な陸遜にこんなことができるとは
夢にも思わなかったのだろう。尚香はされるがままだった。
 迷うことなく甲板を蹴る。尚香を抱えたまま、陸遜は長江に身を躍らせた。二人の身体が、
垂直に落下していく。程なく、川面に盛大な水柱が立った。
 曹操軍は、誰もがあっけに取られた。まさか、二人を飛び込んでまで追う気にもなれない。
ただでさえ、敗色濃厚なのだから。兵たちはもと来た道を、一目散に駆け戻っていった。


 服の中までびしょ濡れになった男女が、長江の岸辺をとぼとぼ歩いている。どちらも髪が
ぺったりと、額に張り付いていた。尚香にいたっては、服の下がところどころ透けて見える。
 幸い尚香も陸遜も、大事には至っていなかった。
「ふう。どこかしら、ここ」
「我が軍の陣からは、遠く離れてしまったようですね……」
 船で曹操軍の船団に横付けしたのだから、当然そうなる。しかも深夜のことで、周囲の
地形もよく分からない。人を探そうにも、戦で付近の住人たちは避難してしまったらしい。
「うわっ……」
「陸遜! 大丈夫? さっきから……」
「ええ……ご心配なく……」
 平坦な道なのに、陸遜が足をもつれさせた。先ほどから足取りは重く、声にも力がない。
奮戦の代償として、尚香以上に消耗してしまっていた。陸遜は動きは俊敏なのだが、体力に
難がある。
「全然大丈夫そうじゃないわよ! とにかく、どこか休めるところを探しましょ」
 命の恩人に肩を貸し、尚香はじっと闇の中に目を凝らし続けた。



 それからどれほどたっただろうか。
「た、助かったわ……」
 ようやく一軒家を見つけ、二人は勝手に上がり込んだ。住居侵入などと気に病む必要はない。
やはり、この家の住人たちも逃げ出していたのだから。
 床の上に、ごろりと身を投げ出す。しばらくは、立ち上がる気力も出なかった。
「は、は、は――くしゅんっ!」
 落ち着くと、夜風の冷たさがずぶ濡れの身にしみてくる。服は着ているだけ、風邪の元に
なりかねない。
「脱いで。早く、急いで」
「りょう、了解……です……」
 恥ずかしがっている余裕などなかった。かじかむ手で、着衣を脱ぎ捨てていく。一応、
互いに背を向けて。
 尚香の腰周りを飾っていた布が床に舞い落ち、花が咲いたように広がった。
「んもう、引っかかって脱ぎにくいわね」
(どこに、何が!?)
 尚香の言葉と衣擦れの音が、健康な青年にもやもやした思いを抱かせる。尚香も、さすがに
胸と股布は残していた。陸遜も、女性の前で最後の一枚は脱げない。
 弓腰姫の肉体は武芸で引き締まっていながら、胸も腰も女らしく発育していた。陸遜は
というと、まだまだ線が細いが、それでも男の身体にはなりつつあった。

 あまりジロジロ見ないように気を使いながらも、どうしても若い二人は互いの半裸体を
盗み見てしまう。
「な、何か包まるものを探しましょう」
「そう、そうね。何でもいいから……」
 気まずい雰囲気のまま、一枚の毛布を引っ張り出し、身を寄せ合って座り込んだ。声を
出す元気すらない。おしゃべりな尚香でさえ、黙りこくっている。陸遜の体調は彼女に輪を
かけて悪い。歯がガチガチと鳴っていた。
(まずいな。このままじゃ、陸遜が身体を壊してしまうわ。どうしよう、医者もいないし)
 実のところ、尚香には分かっていた。とっておきの手段が残されていることを。
(ほ、本当に効くのかしら“アレ”って? それに、いくらなんでも恥ずかしすぎるわ)
 ふと、隣の陸遜と肌が触れ合う。氷のように冷たくなっていた。冗談抜きで死んでしまう
かもしれない。そう思ったとき、行動的な姫君はためらいを吹っ切っていた。
(ええい、女は度胸! 何でも試してみるのよ)
「りりり、陸遜! 今から私の言うとおりにしなさい、いいわね?」
 まず、最後の一枚を脱ぐように命じた。途端に青年の顔が、乙女のように朱に染まる。
「は!? あの、何をしようと……」
「あっちを向いててあげるから! 私を信じてよ」
 そこまで主君に言われると、逆らえるはずもない。毛布の中で、陸遜はもぞもぞと股布を
脱いだ。むき出しの股間がやけにスースーする。


「脱ぎました、が」
「じゃあ仰向けに寝て、目をつぶって……絶・対よ!」
 もう、なるようにしかならないだろう。言われるまま、毛布を全裸の身体にかけて、
目を固くつむった。
 薄目も開けていないことを確認すると、尚香は一度大きく息を吸い込んだ。胸元を覆っていた
衣をたくし上げ、股布を足から抜いた。生乾きの布切れが、丸まって床に落ちる。
陸遜の目の前で、彼女は一糸纏わぬ全裸となった。
 見られていないと分かっていても、思わず胸と股間を手で隠してしまう。掌の下の乳頭は
無垢そのものの桜色をしている。漆黒の茂みは豊穣で、生命力の強さを象徴しているようだった。
 素っ裸になって、尚香は一体何をしようというのだろう。真剣な顔つきからして、性的な
ことではないようだが。
「じっとしてて」
「は、はい……わあぁっ!?」
 年の割に冷静な陸遜が、あからさまな狼狽の声を上げた。冷えきった身体に、伸びやかで
滑らかな手足が絡みつく。薄い胸板には、未知なる柔らかい球体が二つ、押し当てられていた。
 生まれたままの姿となった尚香が毛布にもぐりこんで、同じく全裸の陸遜を真正面から
抱きしめたのである。

「すう、はあ……すう、はあぁ……」
 尚香のゆっくりした息遣いが、陸遜の耳元で聞こえる。それに合わせて、乳房も微妙に
動いていた。あまりのことに、若き俊才は声も出せない。
 しかし、驚くのはまだ早かった。
(これは! こんなことが)
 綿のように疲れ果てていた身体に、急速に力がみなぎっていく。一晩休むのと同じくらいの
疲労回復が、瞬く間に起きた。
『手当て』という言葉が、患部に手を当て癒す行為を意味しているように、人間には元来
癒しの力が備わっている。孫家の女性たちはそれが極めて強く、肌を密着させるだけで
相手を癒すことができた。
 ただし、相手を心から信頼しているときだけ。この秘儀の効果自体が、尚香の陸遜への
想いを雄弁に物語っていた。いつごろからかは、彼女にも分からない。気がつけば、平時でも
陣中でも彼の姿を目で追っていた。

 姫の素肌からにじみ出た生命力が、陸遜を身体の芯からじんわり温めていく。体温の変化と
いうだけでなく、優しい心が流れ込んでくるように思えた。
 文字通り身体を張った治療に、今の彼は別の意味で声が出ない。目頭が熱くなる。
「これが、姫のお力とは。私などに、もったいない……う、おおぉ!?」
 陸遜はすでに、気力も体力も充実していた。いや、充実しすぎた。
 心臓がガンガン鳴り響く。しかも目の前にはしどけない姿の娘が抱きついている。陰茎
海綿体には血が流れ込んで槍のごとく勃起し、平坦な尚香の下腹部をつついた。
 すぐに尚香も、分かった。知識として頭に入ってはいたが、実際に触れると戸惑いを隠せない。
「げ、元気になったみたいね……あうっ!?」
 気がつけば、まさに大人の男の腕力で、陸遜は大恩ある姫を組み敷いていた。自分の下で、
尚香が目を丸くしている。その時初めて、彼は女性の乳房というものを、間近で見ていた。
この世の中に、これほど完璧な造形が世の中にあるのか、と息を呑む。
(綺麗だ……それに、いい香りがする……だ、駄目だ駄目だ! わきまえろ!)
 どうにも言い訳できない。今の彼を突き動かすのは、欲情以外の何物でもなかった。

 それでも、誠実な青年は、理性を総動員して踏みとどまろうとする。
「はぁ、はぁ……このままでは……よき家臣でいられそうにありません。今ならまだ、過ちを犯さずに」
 尚香はさらにきょとんとした顔となって、それから吹き出した。
「もう! そんな風に言われたら、悪いことしてるみたいじゃない」
 陸遜の鼻の頭を、指先でちょんと押す。今度は明らかに不満そうに、頬を膨らませた。
「姫だとか、家臣だとか。勝手にそっちから離れていかないでよ。人の気も知らないで」
「それって……」
「あなた、頭いいんでしょ? 将来、孫呉をしょっていくんでしょ? なのに、こういう
ことには……」
 それきり、尚香は口をつぐんだ。陸遜も、もう否定できなかった。『孫呉を守る』という
言葉が、自分の中でいつしか、彼女を守ることとなっていたと。

 二人は示し合わせたように目を閉じる。わずかに首をかしげ、静かに唇を重ねた。だが
擦り合わせるだけで、一向に先へ進まない。しかもお互いに息継ぎが下手なので、たちまち
二人の頬は朱に染まっていった。
 拙い口づけが終わっても、言葉が出てこない。ようやく陸遜が、おずおずと口を開いた。
「恥ずかしながら……こういうことは、何も。ただ、真心だけは尽くさせていただきます」
 安心させようとしたのだろうが、逆効果だった。尚香が、ぎょっとした表情を顔に浮かべる。
「それって……だ、大丈夫? だったら……私のこと、よく確かめて」
 言われなくても、そのつもりだった。いきなり尚香を肉棒で貫くなど、非道な真似はできない。
(気丈に振る舞っても、姫は輿入れ前のお身体。優しく、いたわらなければ……)


 だがその決意は、乳肌に触れた途端にもろくも崩れた。
「あぁ、こ、これが、おっ……!」
 ツンと上を向いた水蜜桃を鷲づかみにし、乳首を伸びてしまいそうなほどに吸いたててしまう。
尚香には刺激が強すぎた。
「くぅんっ! もう少し、力抜いて。私だって――ううん、何でもない」
「す、すみませんっ」
 かなり力を加減して、再び触れる。そうするうち、尚香の瞳が少々潤んできた。
「そう、そんな感じよ……アッ、ん、上手……続けてぇ……」
 尚香の言葉に勇気付けられ、胸を舌と指で責めながら、片手はそろそろと股間へ下りていく。
指先に、何かが当たる。髪の毛に似ているが少々縮れていて、指に絡み付いてくる。
尚香の草むらだった。
(これは、ご立派な)
 どこもかしこもすべすべなのに、ここだけ毛を密生させている。それは女というより雌を
感じさせるものがあった。

 さらに奥へと、童貞青年の手は伸びる。そこから生まれてきたはずなのだが、構造さえも
よく分からない。何やら柔らかい肉が、トサカのように盛り上がっていることくらいしか
つかめなかった。愛撫とも呼べないような手探りが続く。
「ん……ふふ、くすぐったいわよ」
 一方の尚香も、自分の下腹に当たるモノが気になって仕方ない。手探りでつかんで、しごいてみる。
「へえ、こんなに硬いんだぁ。熱くなってるし、苦しくないの?」
「あ! 姫、ダメぇ」
 やけに切なげな声を上げながら、陸遜は頭を左右に振って悶えた。
「そんな声出しちゃって、可愛い〜♪ ねえねえ、ちょっと見せなさいよ」
「そんな、ご無体な!」
 陸遜の愛撫が止まったのをいいことに、尚香は一気に毛布を引っぺがした。好奇心全開で、
男の象徴に顔を寄せる。
 だが直接目にしてみると、あまり可愛いモノとは思えなくなってきた。
 毛は薄く、年の割にすっきりして見える。しかし、青筋の走る竿や大きくエラの張った
亀頭は、まさに肉の凶器というべき威容を誇っていた。
(分かりきってるけど……こ、これを挿れるのよね……)
 背筋に冷たいものが走る。それでも、この期に及んで後戻りなどできない。するつもりもなかった。


「あの、姫……」
「な、何」
 陰茎を観察していた尚香の頭上から、遠慮がちな声が聞こえてきた。
「大変、失礼なこととは思いますが……」
 それだけで、言わんとしていることは見当がつく。要するに、陸遜も間近で見たいのだ。
女体の神秘を。
(そんなに、綺麗なものじゃないんだけどなぁ)
 そこは用足しに使うところだし、月に一度は真っ赤な『お客さん』が訪れる。やんごとなき
姫君だろうと、そこは生々しい部分であって花園などではない。しかし陸遜にだけ恥ずかしい
思いをさせるなど、彼女にはできなかった。

 陸遜の上で、くるりと身体を反転させる。薄明かりの中、尚香の姫割れが彼の眼前に
突きつけられた。年相応に成熟し複雑な皺を刻んだ肉片は、想像していたようなたたずまいでは
なかった。それでも青年は、そこを愛しいと心から思った。
 弓腰姫への忠誠の証を、ここに刻み付けたい。むっちりした太腿に手を添えて、陸遜は
さらに顔を近づけた。秘めやかな匂いが鼻先をついた途端、吸い寄せられるように接吻していた。
「ひっ!? そ、そこは、そんなのダメっ! お願い、恥ずかしすぎるからっ」
チュッ……チュッ……
 上の口にしたのと同じように、陸遜は心を込めて花弁に口づける。恥丘とは対照的に、
陰唇の周りには産毛程度しか生えていない。
 さらに、縁に指をかけて少しだけくつろげる。桃色の内部粘膜が、陸遜の目に晒された。
そんなものを見せつけられては、とても我慢などできない。礼儀正しく理知的な青年が、
ほとんどむさぼるように、しゃぶりついていた。
「ああ……ダメよ、そんなのダメなのにぃ……」
 下の唇を他人に舐められることが、これほど刺激的だとは思わなかった。とりわけ、プックリと
膨らんだ肉芽が感じる。この上ない羞恥の中から、ゾクゾクするような快感がこみ上げてくる。
身体の奥底がジュンと来るのが、分かった。
 陸遜にも、同じことをしてあげなくては不公平だと思う。しかし興奮でますますいきり立った
肉塊に、とてもではないが口をつけられない。先ほどと同じように手でさすってやるのが精一杯だった。
秘部から押し寄せる心地よい痺れの波に、それも途切れがちになる。
「陸遜……気持ちいい? 私は、とても……はぉお、んはああっ」
 いつしか男根愛撫は右手に任せ、左手は自分の左胸を慰めていた。乳頭の周囲を指先で
擦りながら、円を描くように全体を揉みしだく。

「あ……うぅ……ひ、姫ぇ」
 股の下で、陸遜が情けない声を出した。膨張した陽物はピクピクと震え、爆発寸前であることを
如実に示している。
「はーっ、はーっ……いいよ、私も、もう……」
 尚香も絶頂までは行かないものの、かなり昂っていた。陰唇から染み出した肉汁は、陸遜の
端正な顔に滴り、汚している。膝が笑って、このままでは陸遜の顔に股を押し付けて
しまいそうだ。


 二人はよろめきながら、体勢を入れ替えた。毛布の上に横たわった尚香に、陸遜が覆い
かぶさる。二人は互いの指をしっかりと絡め、固く握った。硬い切っ先が、潤沢な裂け目に
押し当てられる。後は、前に進むだけ。

 陸遜はこの期に及んで迷った。挿入の場所が分からないからではない。自分たちのしようと
していることが、呉のためになるとは思えなかったから。
 もう一度、尚香の瞳を見た。青い双眸には、ただ自分への限りない信頼だけが浮かんでいる。
何より大切なものがここにある。ならば今、手に入れたい。
「行きます」
 少しずつ、怒張を押し込んでいく。日頃から活動的な尚香だが、中を護る膜は破れず残っていた。
小指一本が入るくらいの隙間を残して。
 その間隙が、強引に押し広げられていく。無痛から激痛まで、破瓜の痛みは人それぞれなのだが――

「くう……く……あぁっ!! ひっ! はぅあっ!」
 ひっきりなしに悲鳴を上げている。不運なことに、尚香の苦痛は相当なものだった。陸遜の
背中にしがみついて、思いきり引っかいてしまう。
「おぉうぅっ! も、申し訳ございません……私は、私はっ」
「あ、謝るくらいなら入れないの! は、早く……最後まできちんと……して」
 もちろん陸遜は、最初の挿入から天にも昇る心地だった。狭く柔らかい肉洞の表面には
無数の柔襞が蠢き、貫通した逸物を熱烈に舐め回す。深い罪悪感に苛まれながら腰は止まらず、
遂に奥まで達した。二人の時間が、穏やかに止まる。
「ね、一つになれたじゃない。姫だとか家臣だとか、関係ないでしょ……ぐす」
 尚香は泣き笑いを浮かべていた。陸遜は返す言葉もない。代わりに、頬にこぼれた雫を
舐め取った。
 痛みが落ち着くまで、じっとしてやりたい。陸遜は、頭ではそう思うのだが。
「うおお……こ、これは……と、止まりませんっ」
 無数の舌にしゃぶられるがごとき膣壁の洗礼を受け、陸遜の背筋を悦楽の電流が駆け抜けていく。
ほとんど反射的に、腰を振り立てていた。
「きゃう! お願い、もっとゆっくり……うぅ」
 異物で拡張され、処女膜を引っ張られる違和感が尚香を襲う。
 それでもしばらくすると、痛みは和らいできた。快楽には程遠いものの、一つに繋がった実感が
胎内からじわじわと沸いてくる。
「あぁん、あん! 私の中に、陸遜がいるよぉ……もう、離さないんだから」
 引っかき傷の残る陸遜の背に腕を回し、暴れる腰に長い脚を巻きつけ、尚香はしっかと
しがみついた。


 そうすることで、二人はより深く密着する。根元まで処女肉に包み込まれては、ウブな
青年の限界などあっという間に訪れた。竿の中を、熱いたぎりが駆け抜けようとしている。
 このまま放ってみたい。そうすれば、尚香を自分という存在で満たせるような気がした。
すなわち、陸家の種を孫家の姫君に。
 しかし未来の大都督は、肉欲をも押さえ込める理性の持ち主であった。
「くうううっ!!」
 半ば尚香を突き放すように、陸遜は分身を引き抜いた。体液にぬめった先端が抜け出した
ほんの一瞬のち、情熱は堰を切ってあふれ出した。
「うっ! もう、出――うあああぁっ!」
 愛しい女性の胸元や腹の上に、白くべとついた奔流がとめどなく放出される。
「まだ……まだ、出るうぅっ……ああ……」
 陸遜は、止められない射精に悩乱する。尚香も間近で見る射精に息が詰まりそうだった。
 すべてを出し尽くした陸遜が、よろよろと倒れこんでくる。尚香はその体重を優しく受け止めた。
フニャフニャになった陽物が微笑ましい。同時に、逞しいモノが抜けた胎内は、
ぽっかりと大きな穴が空いたように寂しかった。破瓜の疼痛が、わずかに甦る。

「ふぅ、はぁ……ねぇ……やっぱりナカは、気が引けた?」
 余韻に息を弾ませながら、からかうように囁いた。図星を突かれた陸遜が、目を丸くする。
それから、悔しそうにつぶやいた。
「……はい。今の私には……」
 地位の壁、身分の壁。一晩の関係ならともかく、今の陸遜に尚香を繋ぎとめる力はなかった。
 だが、相手はそうやって諦めるのが大嫌いな弓腰姫である。
「バカ、何も始まってないじゃない」
 人差し指で、陸遜の額を軽く弾いた。
「あたっ」
「もっともっと上を目指して……いつかきっと、私を堂々と奪ってよね」
 尚香は美玉のごとき陸遜の頬に口付けた。身も心も許せる青年に、精一杯の励ましを込めて。
「ええ。必ず」
 陸遜の瞳には、強い光が宿っていた。

 この後、陸遜はめきめきと頭角を現し、周瑜や呂蒙の後継と目されるようにすらなる。
その躍進の影に何があったのか、知る者は一人しかいない。

この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
孫尚香×稲姫
陸遜×孫尚香2
遠呂智の淫謀 孫尚香編

作品一覧に戻る

WEB拍手ボタン 感想・リクもどうぞ
お礼メッセージは総勢20名! 感想・リクもどうぞ

Written by◆17P/B1Dqzo