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真田幸村×くのいち

 危険であればあるほど幸せというのは、難儀な性分である。たとえば、真田幸村配下のとある『くのいち』のように。
 今夜も彼女は他国の城に忍び込み、情報収集にあたっていた。そこでドジを踏んで見つかり、城の屋根の上を逃走するはめに陥っていたというわけだ。逃げ場は今や、死を覚悟で飛び降りるのみ。それでも彼女は、まるで遊びのように胸躍らせている。
 追手の男は三人。そのうちの一人が、大上段から斬りかかった。しかし、手ごたえはない。
 代わりに頭の上に、布切れがハラハラと舞い落ちてきた。
「な、なんだこれは!?」
 真っ二つに切り裂かれた、くのいちの着衣だった。月の下、しなやかな裸体が宙を舞う。追手たちも、つい見とれてしまった。なぜ、足袋まで脱げているのかがよく分からないが。
「お、おい、待て!」
「待てと言われて待つ馬鹿はいませーん。じゃあねー」
 くのいちは、城の堀に飛び込むべく、土踏まずの発達した素足で駆けだした。制止も聞かず、躊躇いなく踏み切る。
 追手も唖然としている。空中で縦に一回転し、まっすぐに……死ぬほど冷たい水の中へ。
「しまったああぁぁ――!」
 悲鳴をかき消して、盛大に水柱が上がった。暗い堀の中、いつまでたっても少女は浮かび上がってこない。
 追手たちはすぐさま堀を捜索してみたが、なにしろ暗い冬の夜である。曲者を見つけることはできず、あっさり打ち切られた。

 一方その頃、幸村はといえば。
 雪の降り続く真冬でも、槍の稽古は欠かさない。うっすらと、額に汗までかいている。存分に体を動かし、さて引き上げようとしたその時。
「ゆ、幸村様ぁ……」
 闇の向こうから、今にも消え入りそうなか細い声がした。
 しばらく目を凝らしてみる。文字通り真っ白な素肌をさらし、くのいちがふらふらと歩いてくる。一糸纏わぬ全裸で。
 幸村はびっくりして駆け寄る。
「どうした! 誰かにやられたのか……いや、そういう意味ではなく」
 くのいちは、安心したように幸村に倒れ込んだ。肌は、死人のように冷え切っている。そして、弱々しく口を開く。
「か、寒中水泳を……」
 それだけで、幸村はすべてを察した。思わずため息が出る。
「忍術もいいが、後先を考えろ」
「そそそ、それが頑張って帰ってきた人に取る態度ですかー」
 確かにくのいちの唇は紫色で、歯がガチガチと鳴っている。このままでは、命にかかわるかもしれない。くのいちの命は、幸村にとっても安くはない。
「分かった分かった。とにかく、帰ってこられてよかった」
 折れそうな肢体をしっかりと両腕で抱き上げ、幸村は城へと戻っていく。くのいちはしっかりと、彼の首に腕を回した。

「ふう、極楽極楽。人間っていいなあ〜」
 二人は城内の風呂に直行していた。
 あやうく、本当に極楽に旅立ってしまうところだったくのいちが、のんきな声を出す。土気色だった肌にも、乳白色の生気が戻ってきていた。
「しっかり入れよ」
 冷え切った体を少しでも温めてやろうと、幸村は湯船の中で、くのいちを後ろから抱きしめている。
 と、くのいちの尻に、長くて硬いものが当たった。それがなんであるか容易に察し、くのいちは、にんまりとする。
「あっ、大きくなってますよ、幸村様ってばぁ」
 自分が助平と言われたようで、幸村は唇を尖らせる。
「仕方ないだろう、こんなことをしていたら」
 だが、逆にまったく無反応というのも、それはそれで女としては癪である。正直なところ、彼の反応は嬉しかった。
「だったら……それで身体の中からあっためてほしいなあ」
「もう、大丈夫なのか? さっきはあんなに凍えていたのに」
「うん。だから、しましょ?」
 くのいちは器用に身体の向きを変えた。
 抱き合い、二人は唇を重ねる。小鳥のついばむような接吻を繰り返し、徐々に舌を絡めていく。
 心臓まで温めるように、くのいちの小ぶりな胸を幸村が優しく揉みしだく。
 恋愛には奥手な印象の強い幸村だが、彼女といたしたのは一度や二度ではない。最初はやはり引きずられるように、しかしだんだんと、自然な関係と思えるようになってきた。そんな彼女への感情がなんなのか、いずれは答えを出したいと思っているのだが。

「腰、少し浮かせてくれます?」
 水面に飛び出た幸村の男根に、くのいちが舌を這わせる。頬をすぼめて、男根を咥え込んだ。
「忍法、水遁の術〜。あむっ……レロレロ……ちゅるるる〜っ」」
 断じて水遁の術ではない性技を、少女は発動した。
 口内で、舌が別の生き物のように這い回る。雁首を執拗に舐めまわしたり、尿道を吸い立てたり。わずか十五歳にして、くのいちの技巧は異常なまでに達者だった。おそらく、これも仕事のうちなのだろう。
「お前、また一段と上手くっ……」
 幸村が早くも、眉根を寄せてこらえきれないといった表情になる。もちろん、彼はさせっぱなしではない。水中でくのいちの秘所に手を伸ばし、まさぐってやる。どこが弱いか、いい声を出すか、彼女のことはよく知っていた。くのいちの舌遣いが、快感に乱れた。
「んっ! んふっ、幸村様っ、そこ弱いのぉ! もうっ、ちゅば、じゅるうぅっ」
 お返しとばかりに、彼女の口唇愛撫も熱を帯びていく。

 幸村の鈴口からは我慢汁が滲み、くのいちの花弁は濡れそぼつ。頃合いだろう。
 互いを見つめあったまま、くのいちは腰をゆっくりと落としていく。
「にひひっ……幸村様が、やっぱり一番立派だね……お腹の中がいっぱいになっちゃうよぉ」
 他の男と比べられると、胸の奥がチクリと痛む。それと同時に、誇らしい気分にもなる。なんとも、くのいちの言葉は小悪魔的である。
 根本まで咥え込むとすぐに、くのいちは腰を引き上げた。そして再び、思い切り腰を落とす。湯船が激しく波打つ。浮力のおかげで、上下ヘの律動も床の上より大きい。熱く硬い肉槍が、くのいちの理性を粉々に突き崩していく。
「あふっ! 幸村様も、もっと動いてぇ」
「ああ、任せろ」
 くのいちと呼吸を合わせて、幸村が突き上げていく。若々しくも濡れそぼつ無数の襞が、鈴口から根本まで貪欲に舐めしゃぶる。
「おぉっ……わ、悪いが一度、外に出てくれるか? 湯船が、汚れてしまう」
 先走り汁はともかく、精液まみれの風呂に入り続けるのは、さすがに気が引けるのだろう。放出してしまいそうになるのをどうにかこらえながら、幸村は逸物を引き抜いた。

 洗い場に横たわったくのいちに覆いかぶさり、すぐさま突き入れる。もはや膣内は、凍死寸前だったのが嘘のように燃え上がっていた。狭い室内に、肉と肉が激しくぶつかる音を響かせる。
「にゃはああんっ! 幸村様の、最高っ!」
 幸村はというと、無駄口も叩かず一心不乱に腰をぶつけている。何か言いながら腰を動かせるほど、彼は器用ではない。だがその一途さは、くのいちをあっという間に高みへと引っ張り上げていく。
「幸村様っ、あたし、ちょ、先に……堪忍、堪忍してえぇ! ああ凄い、あたし燃えちゃうっ!」
 口の端から涎まで垂らし、くのいちは限界を訴える。幸村の逞しい背にしっかりと腕を回しながら、全身を絶頂の予感に震わせる。
「い……イグ……はひいいぃっ! ああっ、んはああ――っ!!」
 露骨な嬌声を上げて、くのいちが先に極楽を見ることになった。その締め付けは、幸村も道連れにするように激しい。
「くっ、こっちもそろそろ!」
 中に注ぎたい本能を抑え込んで、幸村は発射寸前の肉槍を引き抜く。熱いたぎりがその中を駆け昇っていったのは、それから間もなくのことだった。
「うおおっ――」
 たっぷりと、何度も何度も、くのいちの腹の上に白濁液をぶちまける。それがようやく終わると、息も絶え絶えなくのいちの唇を奪う。
 風呂場にはしばらく、二人の荒い息遣いだけが聞こえていた。

 事が済んだ後、くのいちは湯船に戻って幸村に抱きかかえられていた。こうしているとき、裸の二人は立場の差など感じていなかった。
「早く、お前が普通の娘として暮らせる世が来るといいな」
「でも、そんな世の中で楽しく暮らせるか分からないなあ。やっぱり、このドキドキはやめられないよね」
 幸村が、腕にぎゅっと力を込めた。
「いつかは来るのだ。戦いの中でしか生きられないなど、女の言うことではない。私もその日のために励んでいるのではないか」
「えっ、それって幸村様があたしと一緒にってこと?」
 一瞬、沈黙。さすがにくのいちも、先走りすぎかと思う。だが、冗談めかして言っても、彼女はけっこう本気だった。一人なら耐えきれない平和も、彼と二人なら乗り越えられるかもしれないから。
 そして、幸村がぽつりとつぶやく。
「まあ……戦が終わって、それでお役御免というのも薄情か」
 その言葉が、今日一番、彼女の心を温かくした。
「さっすが幸村様! 他のお偉いさんじゃ言わないことを、平然と言ってのける! そこに……」
 真田幸村、褒め言葉には慣れていない。
「ああほら! そろそろ上がるぞ」
「は〜い」
 くのいちは幸村の腕に自分の腕を絡める。幸村も拒まない。戦国に生きる微妙な二人も、今だけは恋人同士のように、風呂場を出るのだった。

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ねね×くのいち  くのいち×小喬  くのいち×徐晃  遠呂智の淫謀 くのいち編

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Written by◆17P/B1Dqzo