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月英×姜維

 諸葛孔明は、蜀の天下と引き換えに天へ昇った。己の命数をも織り込み済みであったかのごとく、遺言には各所に配すべき人材の名が連ねてあった。
 そして、軍事の最高責任者たる大将軍に指名されていたのは、彼の愛弟子である姜維であった。
 頼りない劉禅の分まで蜀を守る重責も、姜維は持ち前の知略と若さでこなしていく。だがそれ以上に、彼には密かな心の支えがあった。誰にも言えない支えが――

「これで、一段落ですね。月英様」
 高いところの押入れに孔明の遺品をしまい込み、姜維は額の汗を拭った。視線の先では、月英が深く頭を下げている。理知的な顔立ちに、夫を失った寂しさが皮肉にも色香を添えている。
「ありがとうございます。せっかくのお休みを、このようなことに使っていただくなど」
「いえ。丞相の思い出にこうして触れられて、感謝するのは私です」
 陽も既に、山の向こうに沈みつつある。それを眺めながら月英が申し出た。
「大したおもてなしもできませんが、お夕飯をこちらで召し上がっては? 姜維殿」
(月英様の、手料理……)
 当たり障りなく断って帰ることも、当然できたのだろうが。姜維は自分に負けた。

「ああ、美味しゅうございました。月英様は、お料理も丁寧に作られるのですね」
 腹をさすりつつ、姜維は心からの賛辞を送る。それを聞いて、月英ははにかんだ。
「いつもは、もっと簡単に済ませるんですよ。一人であれこれ凝っても仕方ないですから」
 姜維は彼女の何気ない言葉に胸を締め付けられた。何ということだろう。いくら寡婦とはいえ、こんなにも美しく賢く優しい女性が。
「月英様!」
 訳の分からぬ力に背中を押され、箸を持ったまま立ち上がっていた。
「あの、いかがなさいました? お行儀悪いですよ」
「あなたがお一人で生き続けるなんて、私には……その、つまりンガングッ」
 喉に飯を詰まらせたらしい。大将軍とは思えないその慌てように、月英は目を丸くしていた。が、やがて何かを納得したようにうなずいた。
「やはり、孔明様はお見通しだったのですね。あなたがそう言うことも」
「丞相が!?」
 そこで師の名前が出てくるとは、予想もしていなかった。自分では、想いは心の奥底に秘めていたはずなのに。
「死期を悟られた孔明様は、私にこう言い残されました。
『月英。いつまでも死者に縛られていては、あなたのためにも蜀のためにも不幸です。私亡き後、あなたの周りをもう一度よくご覧なさい。相応しき者が、あなたへの想いを抱いていることでしょう』
と。私のうぬぼれでなければ……違いますか?」
 あまりの図星に、姜維は口も利けなかった。
「し、しかし! いくら丞相のご遺言とはいえ、月英様のお気持ちはどうなるのです」
 探りを入れるつもりで、姜維は月英に尋ねた。何しろ孔明といえば罠、罠といえば孔明。弟子を試しているかもしれない。
 それを聞き、月英は決然と立ち上がった。そして膳を押しのけ、姜維に歩み寄る。髪から馥郁たる香りが漂ってくる。女を捨てていない証だった。
「月英様……っ」
「孔明様との日々は決して忘れません。悩みもしました。でも、私だって未来に踏み出したいのです……」
 見つめる深い双眸に嘘はない……ように思えた。女を知らない青年にとってはみんなそう見えるのだろうが。姜維は震える両腕で、月英を抱きしめた。

「姜維殿は、女を知らないのですね。では、今宵は僭越ながら、私で女を学んでくださいませ」
 かすかな音を立て、月英の衣が床に舞い落ちていく。均整の取れた色白の裸体が、灯火に照らされた。腕にもすねにも脇にも、無駄毛一本ない。それでいて、下腹部の末端には黒々とした縮れ毛が逆三角形に茂っている。さらにその奥には。自分から服を脱いでいき、男に見せつけるという行為がこれほど興奮するとは思ってもみなかった。
「よ、よろしくお願いいたします」
 姜維はただただ、素っ裸で棒立ちになっている。細く美しいつま先を眺めるばかりで、そこから視線を上げられない。
「ふふ。何もやましいことはないのです」
 月英は姜維に仰向けに寝るよう促した。言われるまま寝転がると、肉棒は半ば立ち上がりつつある。恐縮しながら、身体は正直であった。
「まあ……」
 それを見た月英は、唇の端を無意識のうちに舐めていた。
「では、よく見せてください。何事も、観察が大切ですから……」
 もっともらしいことを言いながら、雌猫のように四つん這いになった。手と膝で、屹立へとにじり寄る。まさに目で犯すがごとく、鈴口から雁首、根元までじっくりと見つめる。
「素敵……さすがは孔明様が見込んだ方ですね……」
 別に孔明はナニの大きさを見込んで月英を託したわけではない。今の言葉は、彼女自身の抑えきれぬ肉欲が発露したものだった。
(おぉう! 月英様が、私のモノをまじまじと)
 月英に見られるだけで、姜維は肉棒を卑猥に膨張させていた。しかも、彼女の二つの乳房が、肉棒を挟むように突き出されている。寡婦の乳は美しい放物線を描き、その頂点は桃色に染まり尖っていた。吸ってくださいと言わんばかりに。
(あの乳に顔を埋めてみたい。吸ってみたいっ!)
 姜維がそう思って当然だった。しかし、月英はどうしても己の欲望を優先してしまう。ひんやりした手で竿を握りしめ、上下に素早く擦り立てる。自慰とは似て段違いの快感が、姜維の腰を突き抜ける。
「あぅ、おぉうっ!」
 意味を成さない声を上げ、童貞青年は弓なりにのけぞった。加虐心に火がついたのか、さらにしごく速度が上がる。じゅわっと、先走り汁がこぼれ始めた。
「こうやって擦ると、もっと大きくなりましたでしょう? 皮も完全に剥けて、青筋が走って。ご立派ですよ」
 月英の分析は終わらない。薄く紅を引いた唇が、涎を垂らす亀頭へと、ためらうことなく接近していく。
「次は、お味を……」
「アッ、ダメ、汚いですっ」
 姜維の悲鳴を軽く聞き流して、月英は肉棒に口づけた。チュッチュとついばんでから、これ見よがしにじわじわくわえこんでいく。ついには一本丸ごと、口内へと消えた。
 その直後。姜維が鳴いた。
「あー、ア――ッ! ひっ、あはううっ!」
じゅる、ぴちゃ、ジュボオッ……
 蛇というかウツボというか。溶かしつくしてしまうような舌のうねりが、男根に絡みつく。昼は貞淑な顔をして、夜は孔明と何をしていたのか。それが一発で分かる凄まじい貪欲ぶりだった。
 しかし、今の相手はウブな姜維である。限界はあっという間に訪れる。
「で、出っ……お放しくださいっ」
 かすれた声で告げられるが、しかし月英は離れない。ダメ押しとばかりに裏筋を舌先でなぞる。
 亀頭が内側から震撼するのを、姜維は感じ取った。袋の奥底から、白い溶岩流が上昇を始める。もはやそれを止める手立てはない。
「来る、あっ、ああ〜ッ……!」
 竿先から飛び出した白濁は、一滴残らず月英の口に注ぎ込まれる。
「んぐうふううっ! んぐっんぐっ」
 目尻に涙を浮かべながらも、かくも不味くて飲みにくいものを飲み干していく。再び口を開けたとき、口内に精は残っていなかった。
「の、飲んで……しまわれた……私の」
 唖然とする姜維の眼前で、月英は唇を拭いつつ艶然と微笑んだ。
「ふふ……とても濃かったです。これが、若さなのですね。でも、次までには時間がありましょう? 今度は、私を味見するのです」

「あ、味見とは……んむううっ!?」
 静脈も透き通る美巨乳が、姜維の顔に押し付けられた。柔らかくも圧倒的な質量を誇り、姜維の鼻と口をふさぐ。
「さあ。思う存分吸ってください」
(月英様の胸……かくも懐かしい温もりと香り……たまらないっ)
 姜維は暴れるのをやめ、無邪気に乳房を吸い始めた。月英も、穏やかな快感を堪能する。
「姜維殿、可愛い……孔明様との間に子供がいたら……こんな感じだったのでしょうか……あぁん」
 だが、今の二人は母と子ではない。性行為に向かって突き進む、男と女である。月英は、姜維の頭を引き剥がした。
「胸は、もう十分です。今度はこちらを舐めてください」
「はぁ、はぁ……そ、そこは!」
 目の前に花開くそれを見て、姜維は息を呑んだ。縮れ毛の奥に、複雑に皺の寄った肉が見える。その合わせ目は指で開かれてほころび、さらに鮮やかな内部が顔を覗かせていた。月英は、姜維の顔をまたいだのだ。
「よく、ご覧なさい。これが、女の核心です。生々しくて、気持ち悪いですか?」
「いえ……言葉が、出てきません」
 確かに驚くべき光景なのだが、好奇心がふつふつと湧いてくる。滲み出した露にも、むせかえるような体臭にも。
「姜維殿は、素直ですね。そんなあなたに、ご褒美を」
 月英が、腰を下ろした。勢い姜維の顔面に、女性器が押し付けられる。あまりに近すぎて、どこが何なのかすら分からない。とにかく舐めてほしいのだということだけが分かり、懸命に舌を使い始めた。
「ふふふ……そう、考えるのではなく……今は感じるままにお舐めなさいっ!」
 顔面騎乗位で蜀の大将軍に奉仕させる今の月英は、まるで夜の女王と化していた。舌の動きより、この倒錯した状況が月英の股をびしょ濡れにする。諸葛亮が見たら、何と言うだろうか。多分、『これも策のうちです』とかだろうが。
「そう、そのぷっくりしたの舐めてえっ! ひい、あはあ、イイわぁ!」
 少しよろめきながら、月英は姜維の顔から腰を上げた。中腰のまま、後ずさっていく。行き着いた先は、言うまでもない。すっかり硬さを取り戻した肉塊に当たって、陰唇がひしゃげる。さらなる淫汁が、中からこぼれて幹を伝った。
「うふ……ふ……お待たせいたしました。これからが、男女の交わりというものですよ」
 腰を前後に揺らしながら、腰を落とす。グチュリ、ジュブ、という卑猥極まりない結合音を、姜維は耳のそばで聴いたように思えた。
 やがて、姜維のすべてが月英の肉襞に飲み込まれた。諸葛亮の後継者の童貞は、その未亡人によって摘まれたのである。
「いかがですか、初めての女体は……」
「はっ、はいっ! 素晴らしいです、月英様……」
「嬉しいことをおっしゃってくださいます。参りますよ」
 休む間もなく、月英は姜維の上で上下に動き始めた。肉棒が繰り返し陰唇から飛び出し、沈み込む。しかも、美巨乳は左右それぞれに揺れて汗を飛ばす。
「姜維殿ぉっ! こんなに逞しいものをくわえ込めて、私は、果報者ですっ! だから、もっと動いてぇ」
 そう言われて動かなければ男が廃る。姜維はどうにか、月英を突き上げようとした。しかし、一擦りするたび、頭に白いもやがかかっていく。孔明との営みでこなれた肉襞は、意のままであるかのように姜維に絡みつく。
「げつ、えい、さまっ……またっ」
 今日2度目の射精の予感に、姜維がうめく。しかし、この体勢では逃げようがない。予兆に気付き、月英は髪まで振り乱し追い込みをかける。
「出る、のですね! いいでしょう、出すときは大きな声で……ほら、ほらあぁ!」
「ああああっ! きょ、姜維、イきますうぅっ――」
 また、亀頭がはぜる。姜維のありったけが、月英の胎内を夫以外の色に染めた。

 それからしばらく、二人は床の上で余韻に浸っていた。軽く口づけなど交わしながら。
「……うぁ」
 姜維のしなびた竿を、月英が指先でくすぐる。喘ぎまくっていたから、姜維もろくに声が出ない。
「これからも、私の知るすべてを教えてさしあげます。ですから……ふふ……お分かりですよね?」
 玉袋を、軽く掴んだ。姜維の背筋が思わずピンと伸びる。
「は、はい。努力いたしますっ」
 孔明に近づくには、この才媛を昼も夜も満足させないといけないのだ。姜維の笑顔は引きつっていた。
 その時、姜維は知るはずもなかった。万感を込めた涙が一筋、月英の頬を流れ落ちたことを。
(孔明様……私は私のやり方で、姜維殿を立派に教育してみせます。どうか、天よりお見守りください)

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Written by◆17P/B1Dqzo