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真田幸村×稲姫 後編

 こんな夜更けに二人きりでいるのを見つかったら……細心の注意を払いながら、二人は幸村の寝所へと戻った。丁寧に敷かれた布団が、やけに気恥ずかしい。
 その恥ずかしさも興奮をいっそう高めてくれる。襖を閉めるなり、二人は熱く見つめあい、唇を重ねた。
「ん……ふぅっ……稲は不束者ですが、よろしくお願いいたします……」
「稲殿……こちらこそ、至らぬところの多ければ……はふっ」
 おっかなびっくりだった先ほどとは違い、互いの背にしっかりと腕を回し、むさぼるように舌を絡める。薄暗い室内に、接吻の音だけが静かに響く。
 急いで着替えたため、二人の浴衣は風呂の湯を吸っていた。ぴたりと肌に張り付き、二人の身体の線を浮き出させている。鍛え上げられた幸村の肉体も、柔らかな稲の肢体も。やはり、他人に見られたらただでは済まなかっただろう。
 やがて粘つく唾液の糸を引きながら、唇が離れる。二人は震える手で、自らの帯をほどいていった。
シュル……パサッ……
 かすかな衣擦れの音と共に、浴衣が滑り落ちる。幸村は下帯一丁に、そして稲は一糸纏わぬ全裸になった。
 障子から差し込む月明かりに、稲の裸身が青白く照らされる。普段の気丈な姿が嘘のように、稲は両手で胸と股間を隠し、うつむいている。
「私の身体……ゴツゴツしていませんか?」
 どうやら、自分の身体に自信を持てないらしい。幸村はブンブンと、かぶりを振る。
「恥ずべきことなど何もありません。私はうまく褒められませんが……美しいです」
「よかった……」
 毎日の弓馬の稽古で、胴も手足も適度に筋肉がついている。それでいてどこも可憐なまでに細く、女らしい。対照的に、胸元にはたわわに柔らかな果実が実っている。その取り合わせに、幸村は奇跡を見る思いだった。
 相手だけ恥ずかしがらせるわけにはいかない。幸村も下帯をほどく。すでに逸物はヘソを叩いてそそり立ち、臨戦態勢に入っていた。
「あ……凄い……」
 稲は反射的に両手で顔を覆ったが、指の間からしっかり見ている。白い喉が、コクリと鳴った。

 幸村が稲の手を引き抱きとめ、ともにふかふかの布団に横たわった。互いの顔が、接吻のときより間近で観察できる。自然と、はにかんでいた。
 それからまた口づけし、初々しくも情熱的な愛撫が始まる。
「ん……は、ああぁ……ダメ、そんなにぃっ……いけませんっ」
 幸村が優しく乳房をさすり、揉み、勃起した乳首を吸うたびに、稲は黒髪を振り乱して悶える。爽やかな髪の香りが、幸村を包み込み、陶然とさせた。ダメとかイヤとかいう言葉も、本心が分かるからこそ聞き流す。稲は、本当に嫌なら毅然と断る気骨を持っているからだ。
 片方の手は、背中を優しく撫でつつ尻へと下がっていく。少々硬めに締まった尻肉は、彼女の青さを物語っているようだった。手触りは実に滑らかで、乳房に勝るとも劣らない。 堪能してから、今度は股に手を伸ばす。稲の茂みが、指に絡み付いてくる。
(こんなに……これは立派だ……)
 幸村は息を呑んだ。
 生え始めてからこの方、稲の恥毛には何の処理もされていない。まさに伸ばしっぱなしだった。だが、手入れ不足の汚らしさはない。むしろ、自然のままの美しさがあった。
 さらに下方へと指を滑らすと、温かくぬめったものを感じた。縮れ毛の下で、姫割れが潤んでいる。
「あっ……やっ」
 稲はぎゅっと目をつぶった。自然の成り行きとはいえ、濡れていることに気付かれるのは恥ずかしい。潔癖で、しかし自慰も頻繁な彼女は、自分が酷く淫らな娘に思えてしまう。
 幸村は、今度は思い切って指を立ててみることにした。
「痛かったら、言ってください……」
「ん……あっ、あぁ……ゆ、幸村様の、お指……」
 クチュリ、という水音が立つ。決して細くはない指が、陰唇の間に眠る処女孔に飲み込まれた。稲は一瞬身を硬くしたが、痛がっている様子はない。まだ、指一本なのだから。
(それにしても、なんという温かさだろう。先ほどの風呂よりももっと。こんな所に入れたら、私はおかしくなってしまいそうだ)
 間違っても爪などで引っかかないよう、幸村はしずしずと秘肉試しを終えた。指先に付着した愛汁が、時が来たことを雄弁に物語っている。
「幸村様、稲はいつでも……」
 稲のかすれ声に、一回だけ大きくうなずく。もはや、前に進むのみだった。

 いよいよ幸村が、稲の上に覆いかぶさる。今夜が初陣となる肉の長槍を、先ほど指で確認した秘裂の、さらに奥に潜む処女孔にあてがった。
(予想以上に小さいな。いつぞや兼続殿と、男女のあるべき姿について語っていたが……あの話は本当なのだろうか)
『幸村、破瓜という言葉がある。初めて男を受け入れた女性は、身を破られるような苦痛を味わうという。不公平な話だな』
 幸村が驚愕し、ではどうすればと尋ねると、
『義と愛でどうにか……』
という、珍しく歯切れの悪い返事だった。それでは解決にならないだろう、直江山城。
 この期に及んで逡巡する幸村を、稲はいぶかった。初めてが痛いかもしれないということは、覚悟している。ならば、夫の背中を押すのが妻の務め。懸命に笑顔を作りながら、語りかけた。
「幸村様……何をされても、稲はあなた様を愛しています……」
 その言葉が呪縛を解いたように、幸村はゆっくりと腰を進め始めた。

「は……ひっ……まさに……や、槍っ……」
 味わったこともない硬さと太さに、稲は心底おののいた。しかも、幸村の熱い魂を象徴するように火照り、まだまだ侵入してくる。自慰でも指さえ入れたことがない所が、強引に押し広げられていく。
「くはああっ!」
 一番狭い関門を、男の力で抜かれる。激痛に耐え、それでも幸村を信じ、逃げることはしなかった。
「お、おおぉ……」
 一方の幸村は、いきなり女体の悦楽に出迎えられた。男根がぬるま湯に蕩け、ふやけてしまいそうに思える。しかも、ぬめった肉が鈴口から竿まで締め付け、舐めしゃぶる。稲が出血し、布団に破瓜の証を点々と染めているなど思いもしなかった。
 ようやく、幸村自身が根元まで飲み込まれた。幸村は稲の目に滲む涙にすぐ気付き、指でそっと拭う。
「申し訳ない。あなたはあれほど苦しそうだったのに、私はもう、天にも昇る心地で」
「つぅっ……いいのです。これは何かを失う痛みではなく、得るための痛み。私は、幸村様の妻になったのですから」
 妻。その単語が耳に入ったとき、幸村の胸は大きく高鳴った。股間のものも正直に、力を増す。
「稲殿……ええ、あなたは私の妻……決して離れはしません」
「だ、だから、幸村様のお情けを……子種を稲に注いでくださいませっ」
「は、はいっ!」
 稲に自分の子供を生んでほしい。その想いが、幸村に腰を振らせた。猛然とではなく、しかし一突き一突きに想いを込めて。
 苦痛に硬くなっていた稲の身体も、徐々にだがほぐれてきた。彼女もまた、幸村の子供がほしいという一心で、幸村の腰に両脚を巻きつける。
「うう……稲殿っ!」
「ゆ、幸村様あぁ――っ」
 ここが旅館だということなど忘れて、二人は互いの名を叫んだ。それが耳に入るたび、二人の結合もより深くなる。
 そして快楽の曲線は限界点を越え……感極まった幸村の精が稲の胎内を満たした。

「不思議なものですね。遠呂智によって世界が変わらなければ、私たちは敵同士だったかもしれない……」
 漆黒と静寂の中。幸村にしっかりと抱きしめられながら、稲は幸福に満たされていた。
「夢ではないのですね」
 いまだに残る疼痛と、子袋に溢れかえる子種が、これが現実であると告げてくれている。
「たとえ世界が元に戻っても、私たちの絆は……二度と変わりはしません」
 幸村の腕にも、いっそう力がこもる。この弓姫が隣にいてくれれば、両家の問題など容易に乗り越えられる気がした。
「はい。幸村様の槍と私の弓、命尽きるまで互いを守っていきましょう」
 新たに結ばれた夫婦は、武士(もののふ)らしい言葉で固く誓い合うのだった。

 あくる朝。周囲の視線が妙に優しかったり、旅館の布団の後始末をどうしようと二人が焦ったという話は、蛇足である。

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この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
直江兼続×稲姫
稲姫×ァ千代
孫尚香×稲姫
弓姫二人
遠呂智の淫謀 稲姫編

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Written by◆17P/B1Dqzo