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世界が融合した後も、京・加茂川の流れは変わらない。穏やかだが、時には誰にも止められないほど激しくなる流れが、夕陽で真っ赤に染まっている。
その河原で二人の男が、今まさに喧嘩の真っ最中であった。派手極まりない、大輪の花のような髪形をした大男と、痩身の武道家らしき若者が。
道行く人はぎょっとして立ち止まるが、すぐにそそくさと立ち去る。
「遠呂智に浮気するような奴に、阿国さんは渡せないっつの!」
「がはっ……」
若き武道家――凌統の鋭い足刀が、巨漢・慶次の脇腹に浴びせられた。さしもの慶次も、一瞬息ができなくなる。
「今のは効いたぜ。だがな、俺も阿国さんとは短くない付き合い……だ!」
今度は慶次が、岩のような拳を凌統のみぞおちに叩き込んだ。
「げふうっ! ま、まだまだっ!」
吐き気どころか胃が潰れるような衝撃が襲い、凌統は思わず膝をつく。だがすぐに立ち上がり、再び向かっていく。戦時にも引けを取らぬ気迫を剥き出しにしながら。
魔王・遠呂智は今度こそ倒れた。友の最期を見届けた前田慶次は、再び京に戻り気ままに暮らそうとする。そこで再会した阿国の隣に、凌統がいた。
前の男と今の男。二人とも、口で正しさを争う性分ではなかった。思う存分殴り合い、蹴り合って、それでどちらかが身を引く。乱暴だが、それも一つの決着法には違いない。
そして、太陽が京の町並みの彼方に沈んだ。
「馬鹿だな、俺たちは。こんなことしたって、痛いだけなのは分かってるのにさ」
一番星を見つめながら、慶次が苦笑する。凌統も、同じ空を眺めていた。
結局、二人とも力尽きて、地べたに倒れ伏してしまった。すでに二人とも甲乙つけがたいほど、打撲だらけになっている。幸い骨の一つも折れていないのは、両者が並外れて頑丈だからに他ならない。
「でもまあ、元の鞘に戻るのが一番じゃないですか? 孫呉が忙しくてね、しばらく阿国さんとは会えそうもない」
仕事と恋を両立できるほど、凌統は器用ではなかった。
「知らない奴に取られるよりは、あんたのほうがまだマシだ」
喧嘩の仕方を見れば、慶次の本気がよく分かった。もちろん未練はあるが。
「……そうかい」
「じゃ、行くわ。今日のこと、阿国さんには言わないでくださいよ……ちっ、やっぱ痛いもんは痛いっつの」
凌統は顔をしかめつつ腰を上げた。口笛など吹きながら、去っていく。その背中を眺めながら、慶次はつぶやいた。
「背中が泣いてるねぇ。だが、俺でもきっとそうしたさ」
泥と汗まみれで、女の家に上がりこむわけにはいかない。近所の風呂屋でさっぱりしてから、慶次は阿国を訪ねた。
「悪いね、こんな夜遅くに」
「あら慶次様ぁ。急にどないしはったんどす?」
玄関口で、阿国は目を丸くした。今夜、彼と特に約束していたわけではなかった。
だが慶次がふらりと訪れるのは珍しくもないので、阿国も普通に上げる。そして、以前のように夜を過ごす。酒を酌み交わし、たわいもない噂話に花を咲かせる。他の人間(?)に興味が行っていても、長い間離れていても、ひとたび再会すればまるで昨日の続きのような二人がいた。
そして『昨日の続き』には、温もりを求めることも含まれていた。懐かしさから、互いの肩を抱き、見つめあい、唇を重ねる。口づけたまま、互いの衣に手をかけていく。二人の衣装はかなり凝っているが、それを慣れた手つきで脱がせていった。男らしさの真髄と、女らしさの結晶が、あらわになっていく。
「まあ……こないに怪我した慶次様見るのは、久しぶりどす」
慶次の上を脱がせると、阿国の視線が釘付けになった。この数ヶ月でさらに逞しくなった肉体の、その表面に浮かんだ大小無数のアザに。
「ああ、さっきいい喧嘩をしてきたのさ……」
「んふうっ……んっ、んんっ」
阿国を抱きしめ、口づける。がっつかず、あくまでも優しく。胸元に手を差し入れ、揉みしだきつつ。
柔らかな乳肌は掌に吸い付くようで、病み付きになる。それに、温かい。
ふと、慶次の脳裏を情景がよぎる。同じように、阿国の唇を奪い、乳房を揉みしだく凌統の姿が。
阿国もまた、幸せそうに舌を絡める。残像の中の彼女もまた、凌統相手に同じことをしていた。胸の奥がチリチリと焦がれる。
(自分じゃ心の広い人間だと思っていたんだがね……妬かなかったら嘘だろ)
阿国を責める気はない。自分の帰りをじっと待つ彼女など、ちっとも彼女らしくない。むしろ非は、遠呂智に入れ込んでいた自分にあるのだから。
ようやく唇を離す。いつしか、慶次の息は荒くなっていた。
「ふうぅ……互いに譲れねえものを懸けて」
「ふふ。ほんに慶次様らしいわぁ」
何も知らずに微笑む『譲れないもの』を、慶次は静かに組み伏せた。
「あぁっ! んはっ……」
会わなかった時間を埋め合わせるように、慶次は阿国のはだけた谷間に顔を埋め、香りと味を堪能していた。もちろん、片手を裾の中に割り込ませ、肉珠を弄ってやることも忘れない。ひっきりなしに響く嬌声と指先のぬめりが、慶次をいっそう興奮させる。
襦袢の帯をほどき、前を一気に広げる。裾よけも剥ぎ取ると、長らくご無沙汰していた裸身が、その下から現れた。意外と背の高い阿国は、脚の伸びやかさが際立っている。乳房も巫女装束からは想像もできないほど、豊かで形よい。阿国は多くの男に声をかけて楽しんでいるが、身も心も許した男でなければここまで見ることはできないのだ。
「よっと……」
阿国の、足袋を履いたままの足首をつかんで頭のほうに倒し、折り曲げる。豊かな恥毛に飾られた陰唇が、くいっと上を向いた。複雑な肉襞はしとどに濡れ、蜜を垂らしていた。粋な慶次は、夜の床もぬかりない。
「行くぜ」
慶次は阿国の真上に覆いかぶさった。エラは松茸のように張り、竿には幾筋もの青筋が走る。そんな、体格に見合った巨根が、狙いを定めた。そして、阿国の中へと埋没していく。
「う……あ、来る……あ、ああんっ! ま、まだ奥までえっ!? ああ堪忍、堪忍やあぁ」
久しぶりの逸物の凄さに触れ、阿国があられもない声をあげ悶えた。凌統も良かったが、やはり慶次の逸物は段違いだった。しかもそれを自慢しないところがいい。
すぐに、阿国の肉洞は最深部まで慶次に占領されてしまった。根元まで入ったのを確かめると、慶次は腰を使い始める。
渾身の力と速さで貫く。凌統の残像を振り払うように。今この瞬間、自分の女として全力で愛するのが礼儀というものだ。
「ぅおう……いいぜ、阿国さん……やっぱりあんたは、俺の帰る場所だよ……」
戦士でない阿国の中は、いつも変わらず柔らかい。攻め立てるようなきつさではなく、際限なく蕩かすような秘壺であった。抽送のたび結合部より漏れる、ジュプジュプという卑猥な水音が、いっそう二人を煽り立てる。
「慶次様、慶次様やわぁっ」
己の逸物を堪能し、己の名を呼び乱れる阿国を見ながら、慶次は今までになく満たされていた。来るものは拒まず、去るものは追わず。そんな男にも、征服欲という本能は生きていた。
「それじゃ、仕上げだ!」
阿国を屈曲させたまま、慶次は立ち上がった。そして、膝を曲げつつ真下に打ち下ろす。この体勢は、粘膜同士の強烈な摩擦が生じるうえに、互いの結合が一目瞭然となる。終局に向けて盛り上がるには打ってつけだった。
「あ、あないになって……ふ、深いッ、こすれてまうっ」
阿国は乳房をたぷたぷと揺らしながら、目には涙を浮かべて喘ぐ。慶次もまた、汗まみれになりながら歯を食いしばっていた。
「ああ、俺もたまらないよ……ふっ!!」
体重をかけながら、とどめの一撃を打ち下ろす。互いの局部が、耐え切れないほど擦りあげられた。
それは阿国を絶頂に導き、慶次に放たせるに十分だった。限界を超えた竿の中を、熱いたぎりが瀑布となって駆け抜ける。
「うおお! くっ、ふううっ!」
「はっ、はひいい〜っ! う、うち、いんでまう、いんでまう――っ!」
互いを強く抱きしめながら、どうにもならない激情に身を委ねる。男は女の中に己のすべてを吐き出し、女はそれをすべて受け入れ、ともに上りつめていった――
「んぐ……慶次様の喧嘩の相手は、凌統様とちゃいます?」
寝そべり、一仕事終えた巨根をしゃぶりながら、阿国が上目遣いで問いかける。胡坐をかいていた慶次は、言葉に詰まった。女の勘が導いた正解。言い逃れなどできない。
「まったく、鋭いねえ……自分のために喧嘩はしてほしくなかったかい? うっ」
雁首に舌を這わせながら、阿国は笑みを浮かべていた。
「女冥利に尽きるとは、このことどす。男と女、妬いて妬かれてなんぼや。うちも、遠呂智に慶次様を取られた思うてはりました」
それも、慶次には言い訳できない。少なくとも数日前まで、慶次は遠呂智に『惚れ込んで』いた。
「はっはっは、悪かった」
「うふふ、お互い様どす」
二人は大笑した。身体だけでなく心も裸にした、そんな笑い声だった、
慶次は阿国を省みなかった。凌統はその間に入り込んできた。阿国は二人との関係を楽しんだ。
それぞれに身勝手であった。だが彼らは分かっている。勝手と勝手の綱引きが、恋の醍醐味だと。
だから、傷ついても、傷つけられても……人はまた恋に落ちていく。
完
この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
長宗我部元親×阿国
遠呂智の淫謀 阿国編
凌統×阿国
Written by◆17P/B1Dqzo