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遠呂智の淫謀 貂蝉編

 その日、遠呂智軍に衝撃が走った。

 今まで水面下で策謀をめぐらせていた曹丕が、ついに決起。妲己の居城となっていた
小田原城が襲撃され、彼女は抵抗空しく囚われの身となった。
 それだけではない。あろうことか妲己は、曹丕らと共に遠呂智に反旗を翻した。
 彼らは手始めに、遠呂智の下から脱走した貂蝉を保護し、反乱軍に加えた。彼女は、
自分が遠呂智を討つことで、呂布の目を覚まさせようとしていたが……

 貂蝉はその後、三成に付き従い、小田原城に身を寄せていた。
「浮かぬ顔だな。貴様が決めた道だというのに」
 東屋からぼんやりと庭園を眺める貂蝉を見かけ、三成は声をかけた。わざわざ声をかけた
自分自身をいぶかりながら。
 三成の方を向いて軽く頭を下げると、貂蝉は寂しげに言葉をつむいだ。
「後悔はしていません。離れている間に自分の想いが揺らぐこと、それだけが怖いのです」
 えてして会えない時間に優しげな異性が近寄り、男女の仲に致命傷となる。しかし、
貂蝉でもそんなことを言うとは。
「フン、何に怯えているかと思えば。武芸を磨くなりしてその日に備える方が生産的だ」
 こういう時、三成はふさわしい言葉と態度をとれない。鼻で笑っている自分に気付き、
頭を乱暴にかいた。
「……それに、貴様にちょっかいを出すような暇人は、ここにはいない。皆、己が今なす
べきことくらい分かっている」
「ありがとうございます、三成様」
 少しだけ表情の明るくなった貂蝉に深々と頭を下げられると、三成はそっぽを向いた。
「事実を述べただけだ。あと、相談もなしに一人で突っ走るな。普通に迷惑だ」
 そのまま、目も合わさずに、三成は立ち去った。
 彼としたことが、気付いていなかった。一瞬のち、貂蝉の姿が東屋から跡形もなく消滅
していたことに。では、本物はどこに?

「妲己め、曹魏と共に我に刃向かうか。そうでなくてはな」
 古志城最深部の巨大な玉座にどっかと腰を下ろし、魔王・遠呂智は一人呟いた。
 腹心に寝返られたというのに、遠呂智の心に怒りはわかなかった。
 このまま、誰も正面から自分に挑んでこないのなら、世界そのものを滅ぼしてしまおう
かと考えていた矢先のことだった。感謝にも似た、奇妙な喜びさえ湧いてくる。
「あぁン……孔め……遠呂智様ぁ……」
「凄くイイ……もっと、私の精を吸って……関ぺ……うぅっ」
 背後にそびえ立つ壁から、悩ましい喘ぎがひっきりなしに聞こえてくる。妲己が離脱した
影響か、その喘ぎにも雑音が混じるようになってきた。
 ァ千代・月英・小喬・ねね・濃姫・祝融・星彩・くのいち。
 全国行脚中の阿国を除いた八人の女体が、埋め込まれていた。無毛から濃いめまで、個性
豊かな女陰に鱗のない大蛇が刺さっている。それは遠呂智の股座から伸び、八人を奥まで
貫いていた。陵辱・吸精器官『ヤマタノオロチ』である。
(この女たち、自我は溶け去ったと思ったが……まあよい。人と人形の狭間で、我に仕え
させるも一興)
 遠呂智は人間と異なり、性行為で我を忘れることがない。淫虐の限りを尽くしながら、
その頭脳はいつでも醒めている。ごく当たり前に、女を犯しながら部下と戦略を練っていたりした。

「さて、次なる一手は……ム?」
 遠呂智の目の前の床に、突然まばゆい光の線が刻まれた。人一人が入るくらいの円を描き、
その中に複雑な紋様が描かれていく。魔方陣だ。魔方陣が完成すると、光の円柱が立ち昇った。
 やがて光が収まる。魔方陣の中には、一人の女が横たわっていた。猿轡を噛まされ、芋虫の
ように縛り上げられている。可憐な衣裳にゴワゴワした荒縄が食い込み、胸元をくびり出している。
 小作りな顔立ちに見覚えがあった。呂布の女。つい先日脱走し、行方を追っていた。
「妲己の仕業か?」
 遠呂智の下に人間を直接転送できる者など、一人しかいない。その者は今、自分に敵対
している。つまり、せっかくの戦力をわざわざ敵に送り届けてきたことになる。
 しかも、ただの女ではない。彼女のそばには常にあの男……ようやく遠呂智は妲己の意図を
察することができた。
「なるほど、味な真似をする」
 遠呂智は玉座から立った。八匹の大蛇をすべて、女陰から引き抜く。
「んはあああっ!!」
 背後で悲鳴の女声八重唱が鳴り響いた。
「ん――!?」
 目も鱗もない異形の大蛇たちが、目の前で一斉に鎌首をもたげる。それを目の当たりに
した貂蝉もまた、猿轡にくぐもった悲鳴を吐き出した。

 その頃。小田原城の一隅では、妲己ががくりと膝をついていた。
「ぜえぜえ……幻影の術に転送の術。さすがに立て続けはきついわね。でもまあ、これも
私の大計♪」
 疲労の色濃い顔に、邪悪な笑みが浮かんでいた。

 遠呂智の間を閉ざす重厚な扉が、乱暴に開け放たれた。その向こうには、豪奢な鎧に身を
包み、巨大な戟を手にした大男が傲然と立っていた。
「何だ、下らぬ用なら許さんぞ」
 呂布が、ずかずかと広間に乗り込む。遠呂智に呼びつけられていた。
要件は告げられていない。上から物を言われているようで、彼には不愉快だった。
その足が、途中でピタリと止まった。
 およそ百歩先に、遠呂智がいる。城主だから、それは驚くことでもない。後方の壁に
裸の女たちが埋め込まれている。見覚えのある顔もいるが、それもどうでもいい。関心は
ただ一つ、魔王の傍らに注がれていた。
「貂蝉! 戻ってきたのか!」
「奉先様!」
 自分の名を呼ぶか細い声が、不安げにさまよう瞳が、男の心を鷲づかみにする。とがめる
気は一切なかった。再び、一緒にいてさえいてくれれば。
 なのに、その肩を、遠呂智が抱いている。一気に、全身の血が煮えたぎった。
「遠呂智ぃぃぃ! 魔王だろうと、俺の貂蝉に触れることは許さあぁん!!」
 後先など考えなかった。呂布は背中に担いでいた弓に矢をつがえると、力任せに引き絞り、
遠呂智の眉間めがけて放った。百五十歩先に立てた戟を貫通したという矢が、唸りを
上げて遠呂智に飛ぶ。
「遅いな」
 矢を、遠呂智は慌てず騒がず打ち落とした。股間の大蛇で。
「貴様……」
 自分の武芸を逸物であしらわれ、呂布の怒りは頂点に達した。
方天画戟を握りしめ、あっという間に間合いを詰めて打ちかかる。
「その首もらったあ!」
「やらぬ」
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴッ。
 八匹の大蛇たちが、呂布の顔やみぞおちに立て続けに頭突きを食らわせた。分厚い鎧越しだと
いうのに、臓腑を直に殴られたかのような激痛が襲う。
「こ、これほどの力、何故……ぐああ!!」
 呂布は高々と吹っ飛び、長い滞空時間の後、硬い床に叩きつけられた。
「いやああ、奉先様ぁ!」
 耳に、貂蝉の叫びが届いた。どれほど追い込まれようと、その声が男を奮い立たせる。
(まだやれる! やらねば、俺は負け犬だ)
 思いとは裏腹に、体が言うことをきかない。力が入らず、目がかすむ。手から戟が
落ち、飛将は轟音と共にその場に崩れ落ちた。

「まだまだだな、呂奉先」
 気を失った呂布に一瞥をくれると、遠呂智は貂蝉を凝視した。
「貴様を我が物とすれば、我が力は増し、我に抗う者たちの力も増す」
 吸い込まれそうな紅と碧の目を、貂蝉は気丈にも睨み返す。
「哀れな方。力と力、その先に何があるというのでしょう」
 その程度の言葉で、価値観の揺らぐ遠呂智であろうか。
 貂蝉をぐいと抱き寄せ、赤紫色の唇を貂蝉の桃色の唇に重ねた。貂蝉は一瞬身を硬くしたが、
それ以上は抗わなかった。
 髪を撫でながら純白の歯列を舐め、さらに口内に舌をこじ入れる。清涼な唾液と共に、
貂蝉の記憶が流れ込んできた。
(この女……清楚な顔をして、男を手玉に取るか)
 もっとも、どんな毒が仕込まれていようと、遠呂智は貂蝉を支配するつもりだった。呂布の
愛した女には、それだけの価値があると確信していた。
 鱗に覆われた手が、貂蝉の胸と腰に伸びていく。壊さぬよう、できるだけ力を入れず、
ゆっくりと撫でる。人間の愛撫の真似事をしていた。
「んぁっ……駄目……」
 貂蝉の声は、先ほどよりかすれていた。その変化が、魔王の征服感を高める。たとえ、
演技だとしても。
 この女の肌に、直接触れたい。
 そう思ったときには、すでに行動は終わっていた。

「な、何を? おやめください、嗚呼、いやあ!!」
 艶やかに刺繍を施された絹の舞踏衣が、紙切れのように引き裂かれた。限りなく白い、
陶磁器のような素肌が、さらけ出されていく。
 長い脚に張り付いた薄布も、足首までずり下ろされる。瞬く間に、貂蝉は無惨な半裸状態に
された。
 さすがに舞姫、身体の線はあくまでも滑らかな曲線で構成されている。胸も腰もそれほどの
肉付きはないが、それがかえって儚げな美しさを醸し出していた。
 貂蝉は羞恥に目を伏せ、頬を染める。そんな仕草をされると、さらに辱めたくなってくる。
「たまには、己の舌で味わってみるか。女体の価値を」
 蛇そのものの長くぬめった舌が、淡い乳頭を包み込んだ。ピチャピチャと卑猥な音を立て、
舌先で小さな桜桃を転がす。
「ん……ぅ」
 唇を噛んで声を押し殺しているものの、先端の勃起までは止められない。さらには乳肌に
焚き染めていた香が立ち上り、遠呂智の視覚と嗅覚を同時に喜ばせた。
「ククク……左も右も、我の物だ」
 遠呂智は所有権を誇示するかのごとく、乳房の麓までまんべんなく唾液を塗りこめていった。
快か不快か、その両方か。貂蝉は人外の刺激に身を震わせ、首を振る。

 乳肉をテラテラにすると、今度は両腕で貂蝉の肩をつかみ、持ち上げる。彼女の秘所が、
顔の前に来た。
 恥毛はまばらで、色も薄い。それを一本一本、丁寧に処理していた。陰唇付近はこまめに
抜いているのか、毛が生えていない。花びらのはみ出しも少ない。上品、その一言に尽きた。
 まだ濡れてはいない。この異常な状況で、感じるほうが珍しい。
 多くの男たちを虜にしてきた秘園に、蛇王の舌が不躾に迫る。
「そ、それは……恥ずかしゅうございますっ! それに、今日はまだ洗って……!」
 香に加えて、貂蝉の人間としての匂いが遠呂智の鼻をつく。もちろん、不快ではなかった。
何から何まで手入れされた中の自然な要素は、貂蝉を生身の女としていっそう引き立たせていた。
 貂蝉の哀願空しく、舌が挿入を始めた。陰核を愛でることもせず、自分の目的だけを果たす
つもりでいるらしい。
「あっ、あああっ!! そんな、ご無体なっ、アー、ア――ッ!?」
 そのまま、狭い肉洞の中をズルズルと進んでいく。呂布のモノよりさらに長い侵入者に、
さすがの彼女も言葉が出ない。
 舌は子宮口を越え、常人には不可能な奥への侵入をたやすく果たした。貂蝉に快感はない。
ただ、この恐るべき診察が早く終わることを祈るしかなかった。
 レロレロと子袋の壁を舐め上げながら、遠呂智は貂蝉の価値をあらためて確認していた。
武人としての力はァ千代らに及ばぬものの、精気の源としては勝るとも劣らない。そう結論
付けたとき、彼女の運命は決まった。
 何分もかかって、やっと舌が引き抜かれた。陰唇は濡れていたが、それは愛液ではなく
すべて遠呂智の唾液だった。

 責めは、まだ終わらない。貂蝉にくるりと後ろを向かせる。当然、瑞々しい桃尻が、
さらにはその谷間に咲いた菊花までもが魔王の眼に焼き付けられた。
「こちらも、あらためさせてもらおう」
 可憐な菊門には少々太い舌が、排泄孔の皺をつつく。
「あぁ……奉先様に、捧げておけば……うあぁ、お許しを……」
やがて直腸のさらに奥まで侵入がはじまった。貂蝉は吊り下げられたまま、動かない。いや、
心を閉ざし、外界との接触を絶ち、肛虐の嵐が過ぎ去るのを待っていた。
 それにしても、これは遠呂智が貂蝉を支配しているのか。遠呂智の執着は、いつにも
増していた。遠呂智もまた、貂蝉の肉体の虜になりつつあった。
「そろそろ、我が物にするとしよう」
 股間の八匹の大蛇が、個々の意思でうねり始めた。

「ぐ、うう……ちょ、貂蝉! 貂蝉はどこだ!」
 ようやく、呂布が意識を取り戻した。痛む頭を振り、目だけで貂蝉を探す。見つけた
その時には、すべてが取り返しのつかない段階に達していた。
「奉、先、様……はおああっ、いやあぁあ――っ」
 貂蝉は遠呂智の頭上に持ち上げられ、ぐったりしていた。ところどころ布きれが張り付いた
だけの裸体に、大蛇が螺旋を描いて巻きついている。そして、裂けかねないほどに開かれた
腿の間で……二匹の大蛇が可憐な舞姫の秘園と菊花を貫いていた。よほどの苦痛なのか、
蛇が前後するたびに絹を裂くような悲鳴があがる。
「何だ、これは……」
 呂布にとっては、まるで現実感のない光景だった。心が、現実と認めることを拒んでいた。
「ああ、奉先様……この仕打ちを受けてまだ、貴方は遠呂智の下におられるのですか」
 呂布の姿を認めた貂蝉が、力なく口を開いた。
「くっ……しかし俺の武、極めるためには……」
 この期に及んで、呂布はわずかにためらう。そこに遠呂智が追い討ちをかけた。
「貴様が我の下を去り、戦う。それがこの女の望み。そして、我の望み。今から起きることを
脳裏に焼き付けよ、呂奉先」
 その言葉と同時に、女体征服の最終段階が始まった。膣内と腸内の大蛇が口を開き、喉の奥から
白濁した毒液を吐き出す。毒液は、重力に逆らって貂蝉の胎内に注ぎ込まれていく。
ゆっくり、たっぷりと、下腹部が膨れるほどに。
「――駄目、いやぁ! 私のここは、奉先様の!」
 子宮に注がれている液体を遠呂智の精液と勘違いし、孕まされる恐怖に貂蝉が絶叫する。
その声が徐々に弱まり、瞳が漆黒に塗りつぶされていった。
「奉先様、ほうせん、さ……ま……」
 魂をも蝕む毒液は、あれほど堅固だった貂蝉の自我を溶かし尽くした。まぶたを閉じ、
貫かれたまま、身じろぎ一つしない。蛇が拘束を解くと、受け身を取ることもなく床に落ちた。
贄となった二つの穴から蛇が引き抜かれる。貂蝉の胎内に収まりきらなかった毒液が逆流し、
床を白く染めた。

(殺され……た……?)
 貂蝉は死んではいなかった。肉体は。
 しばらくすると、パッチリと目を開け、戸惑った様子で周囲を見渡す。彼女に、
再びヤマタノオロチが伸びていく。
 その時の敗北感を、呂布は決して忘れまい。
 貂蝉は真っ白な裸体に、自ら青黒い蛇を巻きつけていった。その口元には微笑が浮かんで
いたが、瞳は闇色のままである。貂蝉『だった』女は、さらに遠呂智を慈しむ。太腿の
間に蛇の体を挟んで優しく擦り、尖った乳首の先端を、繰り返し押し当てる。
 そして、口元に伸びた一匹をそっとつかむと、小さな舌を目いっぱいに伸ばして接吻を……
「貂蝉、貂ォオ――蝉ンン――!!」
 それ以上は見ていられなかった。しかし、今の彼に何ができるというのか。遠呂智も、
ましてや貂蝉も殺せまい。一連の陵辱劇の間、彼は遠呂智に圧倒され、一歩踏み出すこと
さえできなかった。
 結局。飛将・呂奉先とあろう者が、踵を返し立ち去るしかなかった。その背後では生まれ
変わった貂蝉が、呂布に対した時と同じ熱心さで遠呂智に尽くし始めていた。

 呂布出奔の報に、反遠呂智勢力は一気に勢いづいた。遠呂智も、前にも増して強者との
決戦に備え始めた。一人の娘を犠牲として、歴史の歯車は大きく回り始めた。
 遠呂智の、妲己の、そして貂蝉の望んだとおりに。

貂蝉編 完

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この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
石田三成×貂蝉
呂布×貂蝉
趙雲×貂蝉

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Written by◆17P/B1Dqzo