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妲己×卑弥呼

「遠呂智様……最後まで付き合えなくて、ごめんなさい……」
 戦線を離脱した一人の女に、鉛のような雨が容赦なく降り注ぐ。狐そのものの、白い毛に覆われた素足は、泥と血にまみれていた。
 五丈原における、人類と遠呂智の決戦……のはずが、仙界の介入によって戦局は大きく傾いてしまった。伊達政宗が、司馬懿が、次々と敗退していった。
 妲己もまた、因縁の相手である太公望に敗れ、身一つで逃げ出すしかなかった。復活した遠呂智に一縷の望みを託しながら、妲己は生き延びるのに精いっぱいだった。

 それから数刻。やっと見つけた廃屋に転がり込み、物陰に横たわる。それでも、寒気と震えは止まらない。妖術は精神力を武器にしているのだから、激しく戦えばそれだけ消耗も激しい。
「なんだか、すごく疲れちゃった……ひょっとして、あたしもここまでかしら……」
 心残りは、ある。同じく戦場に出ていた、人間の少女のことが。この世界でたった一人、妲己のために戦ってくれた卑弥呼のことが。まさか、殺されたりはしないだろうが。
 そのとき、木戸のきしむ音がした。誰かが、扉を開けて駆け込んでくる。
「もう、追手が来たっていうの?」
 起き上がる気力もない今、敵ならひとたまりもない。人類の存亡をかけた一戦では、得意の色仕掛けも期待できまい。
 相手は慎重に、室内を探っている。妲己はその間、ひたすら息を殺していた。だが、とうとう足音が自分のほうに向かってきた。
 やがて現れた相手の姿を見たとき、妲己は安堵のあまり気が遠くなりかけた。
「あっ……妲己ちゃん、妲己ちゃんやろ!? しっかりしぃ! 死んだらあかん!」
 唯一の心残り……妲己と同じく、濡れ鼠と化した卑弥呼が駆け寄ってきた。その真ん丸な瞳は、早くも涙に潤んでいる。
「ああ卑弥呼……よかった、無事だったの……」
 相手に恵まれたのか、卑弥呼のほうは大きな怪我はしていないように見える。
 彼女の話からすると、稲姫と戦ったらしい。弓で鬼道砲を壊されたが、とどめは刺されなかった。遠呂智が遠くからでも分かる圧倒的な闘気を放っていて、敵は皆そちらに気を取られていた。その隙に逃げ出したのだ。しばらくは追手を回す余裕もないだろう。

 それからしばらくの間、二人はぴったりと寄り添って横たわった。だが卑弥呼は、妲己の顔色の悪さが心配で仕方ない。
「妲己ちゃん、しんどそうやな……そうや! うんしょ、うんしょ」
 何を思いついたのか、卑弥呼はびしょ濡れの服をポイポイと脱ぎ捨て始めた。足もとに、布の山が積み重なっていく。ぶかぶかの靴も勢いよく蹴飛ばす。
 少女はたちまち、一糸まとわぬ真っ裸になった。
「ちょっと卑弥呼、何してるのよ? 裸で温めあうとか言うつもり……?」
はしたない振る舞いに、さすがの妲己もぎょっとする。
「そんなもんやないで」
 腰を手に当て、胸を張る。乳房未満の丘のようなふくらみや、無毛の一本筋は隠そうともしない。
「うちに任しとき! 妲己ちゃんに教えてもらった、気持ちいいやりかたで元気にしたげるからな」
 全裸の少女は、妲己の腕の中へと飛び込んだ。目と目が合うと、妲己は珍しくも頬を染めて目をそらす。腕の中の存在が、なんだかむずがゆい。他の人間はどうなってもかまわないが、彼女だけは自分にとって特別なのだと思い知らされる。
「ほな、いっくでぇ……むううぅんっ」
 卑弥呼が目をギュッと閉じて念じはじめる。すると。その小さな肉体が、青い燐光をまとって淡く輝き始めたではないか。その様子に、妲己は見覚えがあった。遠呂智をよみがえらせたあの儀式の時と同じ『力』を、今度は自ら解き放とうというのだろう。
「どうしてあなたはそこまで……んはっ」
 妲己の口から、くぐもった声が漏れた。卑弥呼が妲己の胸の谷間に口をつけ、心臓にじかに生命力を送り込むように、チュッチュと接吻を繰り返す。顔の左右から立派な乳房に挟まれ、息苦しさで顔を真っ赤にしながら、一心不乱に。
「ぷはっ、当たり前やないか。妲己ちゃんがいて、うちがいるんやから……んちゅっ」
「アン……ちょっとくすぐったい、けどいい気持ちよ……」
 唇は徐々に、左の乳房を登っていく。極薄の衣装をずらし、桜色の乳首をおいしそうにしゃぶる。小さな口をすぼめて吸い立てる姿は、無邪気な赤子そのものだった。そんな卑弥呼の黒髪を、妲己は自然と撫でていた。卑弥呼を抱きしめているだけで、震えが止まっていく。しかも、傷までふさがっていく。遠呂智を復活させる、奇跡の力のなせる業だった。
 妲己の心中に、彼女らしくもない感謝の念があふれる。それと同時に、いかにも彼女らしい悪戯心も。

「ありがとう、卑弥呼。もう大丈夫よ……それじゃ、私もお礼をしてあげる」
「ええんよ、うちと妲己ちゃんの仲やないか……あひぃっ!?」
 急に、卑弥呼がかわいらしい悲鳴を上げた。妲己の両手が、柔らかで小ぶりな尻肉に添えられている。円を描くように撫でまわしながら、十本の指をその割れ目へと滑り込ませていく。
「すべすべで、吸いついてくるみたい……」
「あっ、あん! あかんて、集中できひん……ああっ! そっそこは、やああっ」
 もう、妲己の指先は卑弥呼の菊花をとらえていた。
「あっあっ、あ――っ……」
「いい声……毎日のように可愛がってあげたからよねぇ……」
 いきなり指や擬似男根を突っ込んだりはせず、傷つけないようにくすぐる。
 その、純粋無垢なところが珍しかったのだろう。妲己は卑弥呼の前の純潔は破らず、代わりに菊門を開発してやっていた。そのおかげで、この年にしてすっかり後ろで感じやすくなっている。将来が楽しみなのか不安なのか、微妙なところではある。
 皺の一本一本まで優しく撫でられ、かすかに生えた産毛を引き抜かれるたび、卑弥呼は青い果実そのものの尻を振って悶えた。

「ここからも、力をもらうわよ」
「う、うん……」
 妲己は先ほどとは逆に、脱力しきった卑弥呼を仰向けに寝かせた。彼女の全身から発せられていた燐光は、妲己を救う役目を終え収まっている。
『力をもらう』といっても、強引に奪い取るわけではない。少女の膝を曲げて、そっと割り開いた。菊門だけをいじられていたにもかかわらず、楚々たる縦筋にはもう蜜が滲みはじめていた。誰の男根も濡らしたことのない、清らかな蜜が。
「いただきまーす……♪」
 青い匂いを漂わす姫割れに、鼻先を突っ込む。薄皮に覆われた小さな肉豆を見つけると、そこに舌を伸ばしていった。チロチロチロ……と、はかなげな快楽器官を舌先でつつき、はたく。それだけでも、卑弥呼には脳天まで痺れるような快感が突き抜ける。正直な肉体は、さらなる蜜を分泌させた。妲己はそれを、喉を鳴らして飲み下す。豆だけでなく、割れ目を上から下まで、表面から少し奥まで味わう。
「じゅるっ、ぺちゃっ……とっても美味しいわよ、卑弥呼」
「あぁん……褒められたかて、うち困るっ……」
 卑弥呼は顔を両手で覆い、身をよじるが、拒むことはしない。自分の恥ずかしい体液も妲己の力の源になっていることを、卑弥呼は経験から知っていた。友達の役に立つのなら――と言いつつ、最近はひそかな楽しみにもなりつつある。
 妲己の極薄の衣装が、霧のように消えていく。妲己もまた、この状況を本能のまま楽しむことにしたようだ。

「さあ、一緒に気持ち良くなりましょう」
 妲己は蜜まみれの唇を拭い、艶然とほほ笑んだ。卑弥呼はもう、快楽の波に呑まれてうなずくのが精いっぱいになっている。
 卑弥呼の股の間に妲己の局部が押し付けられる。希代の淫婦と、穢れなき少女。性経験においてはまるで対照的な二人だが、二人とも一切無毛の局部であることは奇妙にも一致していた。
 ほのかに赤みを帯びた姫割れ同士が、粘つくような水音を立てて触れ合う。卑弥呼の前後の孔を愛撫しているうちに、妲己もまた高ぶっていたのだろう。最初はゆっくり、徐々に腰の動きを加速させていく。
「はふううっ! だ、妲己ちゃんっ、それは、あ、あかんっ! うち、おかしくっ」
「ふ、ふ……なっていいのよ、どんどんおかしくなって。ああ……私も、一緒なんだから」
「ん――っ、んむ――っ」
 妲己は卑弥呼を抱き起こし、強く抱きしめ唇を奪った。接吻も一度や二度ではない。卑弥呼もまた、小さな舌を懸命に絡めようとする。
 これ以上ないほどの密着状態で、肉豆と肉豆が擦れ合う。年端もいかぬ少女に貝合わせの快感まで教え込んでしまったことを妲己は少しだけ悔いるが、それでも腰は止まらない。二人の秘裂の間では、粘り気を増した愛液が幾筋も糸となって絡み合う。先ほどまで寒さに震えていた素肌は、汗ばむほどに熱い。
 もう、意識を保っているのもやっとだった。二人とも思う。たとえこのまま、息絶えても構わないと。
「妲己ちゃん! うちのこと、ぎゅってして、離さんといてっ!」
「もちろんよ……あなたのこと、誰にも渡すものですか……!」
 大きい手が、小さい手をしっかりと握りしめる。やがて、最後の波が訪れ、二人の意識を彼方に押し流していった。

「うわあ! もうすっかりええ天気や」
 目を覚ました二人が廃屋の外に出てみると、先ほどまでの荒天が嘘のように晴れ渡っていた。大きな虹まで、青空にかかっている。
 だが、卑弥呼の表情は晴れない。
「それより……遠呂智様、勝てたんやろか?」
 暗雲のように湧きあがる不安を否定したくて、妲己はわざと大きくうなずいてみせる。
「当たり前じゃない。たくさんの世界をこうやって一つにまとめたのは、遠呂智様なのよ」
 七色の弧を眺めながら、妲己は続ける。
「肌の色が違う、目の色が違う。話す言葉が、信じる神が違う。そんなことで争う小さな人間たちが、束になっても勝てはしないわ」
 この世界を、そんな人間たちには渡せない。妲己は自覚していないだろうが、彼女にもまた、守りたいものができていた。
「せやな! うちと妲己ちゃんがこうして会えたんは、遠呂智様のおかげやもんな! 早く会いにいこ!」
「ええ!」
 人間の少女と妖魔の女。彼女たちは手を取り合って、歩き始めた。魔王なき過酷な世界を、生き抜くために。

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遠呂智×卑弥呼  遠呂智×妲己  遠呂智・妲己・清盛×女禍  妲己×真田幸村  遠呂智の淫謀 妲己編

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Written by◆17P/B1Dqzo