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今夜は、彼が隣にいない。戦のためには、二人別々に行動しなければならないこともある。そう分かっていても、寝床がやけに広く思える。
「う……ん……」
貂蝉はどうにか眠りに就こうと、宵闇の中でうごめいていた。透けるように薄い寝巻一枚を羽織り、時おり身をよじる。自慰に耽っているわけでもないのに、なんとも悩ましい寝姿であった。
(奉先様……あの方ほど強くてまっすぐな方はいないというのに、どうして満足な戦もできないのでしょう。周囲のはかりごとに翻弄され、展望もなく東へ西へ)
傍から見ればほとんど呂布の責任なのだろうが、彼を愛する貂蝉がそんな風に考えるはずもない。
(せめて私に、流れを変えるだけの力があれば)
その時貂蝉は、寝台の傍らに立つ『何か』に気付いた。
闇に目を凝らしてみる。人、それも女のようだがおぼろげで、肉体を持っているようには見えない。やがて『それ』は貂蝉の上に覆いかぶさってきた。重さも感じない。だが目の前には確かに若い女の顔があって、どんどん近付いてくる。
そして柔らかな唇の感触を、彼女ははっきりと感じた。擦りあわされ、舐められている。
「あ、あなたは!?」
慌ててとびのき、上体を起こす。今や相手は細部までくっきりと浮かび上がっていた。変な冠をかぶり、破廉恥きわまりない衣装を着た若い女が、ニヤついている。
「こんばんは〜。突然だけど、妲己ってご存じかしら?」
声も明瞭に聞こえている。自分は、寂しさのあまりおかしくなってしまったのだろうか。しかしつい、返事をしてしまう。
「妲己……殷の紂王の妃……それがなぜ……?」
「そりゃあ……戦いに負けたからよ。肉体を奪われ、精神だけでここに縛られてるってわけ。ああ、か弱い娘になんて酷い仕打ちなのかしら」
貂蝉は何と答えていいか分からない。何しろ相手は、悪女の代名詞なのだ。人のことは言えないが。
「もういいかげん、自由になりたいの。あなたと交われば、あたしはそのための力を蓄えられる。もちろん、タダでとは言わないわ。あなたも、力が欲しいんでしょ?」
「……!」
まるで、妲己にすべてを見透かされているようだった。相手が望むものを見抜く、それが悪女の資質というものなのだろう。
「ま、世の中のためとか言うなら、この話はここまでね。さっさと寝てちょうだい」
貂蝉はしばらく黙っていた。そして、自分に言い聞かせるように一言ずつ言葉を発する。
「私には、力が必要なんです。誰と、どんな取引をしてでも」
「じゃあ、交渉成立ね」
妲己は自分の唇をペロリと舐め、再び貂蝉の唇を奪った。歯列を割って、ぬめる舌が潜り込んでくる。先ほどよりもさらに感触は生々しく、熱を帯びている。生者に触れて、妲己の肉体は一時的に実体化していた。その豊満な乳房も尻も、淫猥な何もかもが。
存分に唇を賞味すると、妲己は貂蝉の細い首筋をチロチロと舐めていく。呂布がするのと同じことでも、より繊細でねちっこい。
「あっ、はあぁっ……」
「さっ、剥いちゃおっと」
寝巻の腰帯がほどかれ、胸元を大きく左右にはだけさせられる。天井を向く二つの果実は大きめで、それでいて乳頭は淡く小さい。何より、椀を伏せたような形が美しい。見ているだけで征服欲やら甘えやら、男を様々に狂わせる。
「綺麗……瑞々しくて、美味しそうね。んちゅぅっ……はむっ、れろれろっ、ちゅばあ」
妲己の指と舌が、新雪のような乳肌の上をねっとりと這い回る。谷間から頂点までまんべんなく舐めて唾液まみれにし、吸い痕と噛み痕を執拗に付けていく。両の乳首は存分に吸い上げて屹立させ、ツンと上向かせた。
「くぅ……あ、やっ」
その舌遣いは呂布よりはるかに巧みなのだが、貂蝉の心は熱くなってこない。どこまでも儀式めいていて、親愛の情というものにまったく欠けていた。なのに、肉体は勝手に反応していく。
小さな縦長のへそを舌先でほじくり、さらに下へ。いきなり女の核心を攻めたりはしない。まずは裾をまくって、両脚を太腿から爪先まで舐めていく。やはり、何かの法則にのっとって愛撫しているようだった。
「ン! アッ……アッ……そんな、ところ……」
「んふ、いいんでしょ?」
膝裏や足指の間など、思いもよらぬところに舌が這うたび、貂蝉は驚きと快感で吐息を洩らした。
そして膝を曲げて左右に割り開く。とうとう核心が開帳された。恥毛は控えめで、花弁のはみ出しもつつましい。その中には、男を狂わせる魔性の花が咲いている。指でめくってじっくり目で犯してから、妲己は花に口づけた。肉豆を中心に舌先で嬲り、蜜を半ば無理やり分泌させる。
「んあぁ! くふう、そ、そこはぁぁ、いけませんっ」
「ほらほら、我慢しないの」
陰唇の中で這い回る繊細にして貪欲な舌遣いは、場数を踏んでいる貂蝉さえあっという間に高ぶらせていく。呂布の愛撫が愚直すぎるとも言えるが。
貂蝉は指を軽く噛んで声を抑えているが、腰をカクカクと振ってしまっていた。体液が、後から後から妲己の喉に飲み込まれていく。
「うふふ。とりあえず一回、行くところまで行ったら? じゅるるっ」
「ひっ、あっ、はああんんっ!! ほ、奉先様あぁっ」
足指を突っ張らせ、愛する人の名を叫び、貂蝉は軽く高みに登る。
「はぁ、ふぅぅ……」
「ふん、また愛……? だったらあたしを、徹底的に刻みこんであげる」
気をやった直後の彼女は、太腿の間で妲己が実に不愉快そうな顔をしていたことなど、知る由もなかった。
「さあ、あなたの下ごしらえは済んだわ。今度はこっちの準備……アオオンッ、ハアアッ!!」
突然、妲己が獣じみた喘ぎ声をあげた。股間に手を突っ込み、姫割れをグチャグチャとかき回す。そして手をのけると……そこには立派な男の象徴がそそり立っていた。
擬似男根――術で作り出された、かりそめの男性自身。妲己はこれで、何人の生娘や童子を貫き、壊してきたか知れない。しかし今回に限っては、そういう使い方ではない。
「こ、これは」
目を丸くする貂蝉の鼻先に、先走り滴る肉塊を突きつける。
「んふふ……これがないと覚醒できないからね。丁寧に準備してくれる?」
「……ええ。承知しました」
貂蝉はひざまずき、雁首にほっそりとした指を絡ませた。女の股間から生えていることを除けば、それほど突飛な形ではない。
「熱い。ただの張型ではなく、本当に肉竿なのですね」
さらには呂布にしているのと同じように、可憐な唇を精いっぱい開けて咥え込む。妲己にも負けない淫らな舌遣いが、擬似男根に襲いかかる。今度は妲己が、腰をヒクつかせて反応する番だった。
「そ、そうよ! 流石ね、並の女じゃない……何人の男を悦ばせてきたのかしら」
貂蝉は答えない。今まで食べてきた飯粒の数のように、答える意味がない。彼女は夜に舞う舞姫なのだから。
「んっ、それくらいでいいわ。中に注いであげないと、意味がないから」
「ぷはあ……」
唾液と先走りの混じった汁が、擬似男根と貂蝉の口元をつないでいた。それは垂れ下がって、ぷつりと切れる。
「四つん這いになって。お尻をこっちに向けて」
言われるまま、貂蝉は動物的な格好を取る。前と後ろ――剥き卵のように滑らかな尻肉の狭間に、妲己の獲物が二つ並んで潜んでいる。妲己は尻肉を両手でつかみ、まずは前の孔に狙いを定めた。
「繋がるわよ」
「は、うっ……! お、大きい」
擬似男根が貂蝉の中心を押し広げ、濡れそぼつ肉襞をえぐりながら貫入してくる。貂蝉の胸をよぎったのは、なんとも言えぬ寂しさだった。董卓亡きあと、身も心も呂布に添い遂げると決めたのに、また他人を受け入れてしまった。
「ほぅら、入ったよ。奥までいっぱいになってるでしょ?」
「ぅあっ……」
(奉先様許して……これも貴方のためなのです……)
貂蝉の心中は、妲己にも容易に想像がつく。そのうえで、思いを肉ごと踏みにじるのだ。この淫魔には、実に心地よい交わりだった。
幾多の男を惑わせてきた貂蝉の名器を、妲己は遠慮なく突きまくる。
「あっはぁああっ! あなたのここ、すっごく気持ちいいわ! 初めての娘みたいに硬いだけじゃないし、もちろん緩んでなんかいないし……!」
「くふ! あ! アッアッアッ! イヤ、イヤッ」
肉と肉が最奥でぶつかるたびに、二人の豊乳は大きく弾んだ。結合部からは、グチャグチャとこの上なく卑猥な水音が立つ。
(しかし、これではごく普通の交わり。私は、たばかられたのでしょうか)
貂蝉がそう思ったとき、異変が起きた。
「アッ、ハゥアア――ッ!?」
貂蝉の全身が、青白い燐光に包まれた。その光は寝巻も髪止めも焼き尽くし、傾国の舞姫を一糸纏わぬ全裸にした。肌は水晶細工のように透き通り、手足には無数の波のような紋様が浮かび上がっている。人間を超える儀式、『覚醒』が――始まったのだ。
「あ、駄目、こんな、良すぎますっ! あああっ、はひいいいっ!?」
覚醒の効果なのか、感度も具合もさらに増している。突き入れられるたび、甘美な衝撃が脳天まで突き抜けた。より美しさを増した豊乳が、妖しく前後に揺れる。
妲己もいつしか自分の服を術で消し、自然のままの姿で貂蝉を貪っていた。快楽と、結合部からもたらされる生命力を。
「奉先さんのよりもいいでしょ?」
「そ、それはっ! いっいやっ、こんなのって、こんなのてええっ! 許して、許して奉先様あぁぁ」
否定できない。快感のあまり、もう意識がなくなるのも時間の問題だった。貂蝉は口を空しくパクパクさせ、人知を超えた世界へと駆け上る。
「さあ、力を注ぐわよ。あなたの一番奥に、一番濃いのをね! おおうんんっ――!」
ひときわ甲高く叫んで、妲己は貂蝉を串刺しにし、すべてを解き放った。愛液を加工した偽りの精液が、ひときわ膨らんだ亀頭からあふれ出した。
流れ込んでくるものは、貂蝉には熱くも冷たくもなかった。ただ、勝手に涙がこぼれ落ちる。他人に染められることが、これほど哀しいとは。
だが、儀式はまだ終わっていない。
萎えることを知らない擬似男根が、後ろの可憐な窄まりへと押し当てられる。もはや妲己は、早く貂蝉を作り変えたくて仕方なかった。
「こっちにも、ね。耐えられるかしら?」
「はぅ、きゃああっ!!」
貂蝉の可憐な菊花を犯し、根本までねじ込む。前より、さらに狭い。
「いやぁん、あなたのお尻、きっつきつ! 意外と経験が少ないのね」
「お……ぐぁ……ほ、奉先様……」
「また奉先様? 今は私の名前を呼・び・な・さ・いっ!!」
「ひぎゃあああっ! 許して妲己様、妲己様ああぁっ」
脳髄が焼き切れそうな衝撃に見舞われながらも、貂蝉はどうにか正気を保った。呂布のことだけを思い浮かべて。
やがて激しい掘削の果てに、おびただしい量の精が貂蝉の直腸を満たした。
事が終わると、貂蝉はむくりと起き上がる。相変わらず全身が透き通るように発光しており、普通の人間でなくなったことを物語っていた。二穴から垂れ落ちる、まがいものの精液が痛々しい。
全裸のまま外に出て、身体を軽く動かしてみた。軽い。走るのも跳ぶのも、身体能力は数倍に跳ね上がっていた。
貂蝉の心に、希望の光がともる。これなら、呂布を支えていける。
「この力こそ私が望んでいたもの。ありがとうございます」
深々と、貂蝉は頭を下げる。妲己は底意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「お礼を言うには早いかもよ。ま、あたしは自由に一歩近づいたからいいんだけど。じゃあーねー」
妲己はひらひらと手を振ると、あっという間に夜の闇に溶けて消えた。後にはただ、美しき戦闘隷奴がたたずむのみだった。
「風のように舞いますっ!」
貂蝉が身をひるがえすと、舞姫の衣装は光の粒となって消えた。妲己との交わりから数日、彼女は自らの意思で覚醒を発動できるようにまでなっていた。
手に入れた力で、貂蝉は呂布のために戦い続ける。圧倒的な機動力。まばゆい裸身が常人の目に留まることはない。何が起こったのか分からぬまま、兵たちは次々と倒されていく。今のところ、呂布や張遼・陳宮らも彼女の異変には気付いていない。
瞬く間に敵兵は全滅した。胸も股間も隠さず、貂蝉は全裸のままその場に呆然とたたずんでいる。光が消えると、淡い乳首や上品な恥毛まで、はっきりと見えている。普段が妖艶に飾り立てているだけに、一糸纏わぬ姿は逆に新鮮で美しい。
「うぅ……」
頭を抱え、うめく。その瞳はいまだ、非人間的な青い輝きを宿している。戦っている間の記憶が、ところどころ抜け落ちていた。声を失った人魚姫のように、覚醒の代償は記憶なのだ。これが『お礼を言うには早い』の意味するところだろう。
もし。自分が戦う意味さえも忘れてしまったら。その時自分は戦闘衝動のまま呂布に襲いかかり、殺されるのだろうか。
「それでもいい。たとえ奉先様の手で砕け散っても。妲己と取引したあの夜から、すでに覚悟はできています」
貂蝉はキッと顔を上げ、次の戦場へと歩み始めた。
完
この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
趙雲×貂蝉
呂布×貂蝉
石田三成×貂蝉
遠呂智の淫謀 貂蝉編
妲己×卑弥呼
遠呂智×妲己
遠呂智・妲己・清盛×女禍
妲己×真田幸村
遠呂智の淫謀 妲己編
Written by◆17P/B1Dqzo