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遠呂智の淫謀 孫尚香編

 数日にして、反遠呂智の各勢力が古志城を取り囲むように布陣。決戦の幕は切って落とされた。
 妻や娘、恋人を取り戻さんと、一騎当千の強者たちが遠呂智軍を圧倒する。
「オラオラオラァ! 今の俺様に近寄るんじゃねえ」
 張飛が蛇矛を振り回し、雑魚どもの胴を薙ぎ払う。力強いが、隙も大きい。遠呂智兵が
背中に斬りつけようとした。その兵の後頭部に、鉛玉が突き刺さる。はるか遠方で、
雑賀孫市の銃口から白煙が上がっていた。張飛は軽く片手を挙げて応える。
「どーも。しっかし驚くほど娘に似てねえな。あれが未来のお義父さん、ってか?」
 勝手に薔薇色の未来図を描きながら、孫市は次の獲物に照準を定めた。

 石田三成とあろう者が、自ら武働きに精を出していた。今まで、これほどまでに前線に
出ずっぱりだったことはない。
(不愉快だ。俺は、おねね様も貂蝉とかいう女も救えていなかった)
 二人とも遠呂智に捕らわれていることは、入ってくる情報から察しがついた。
 旋回する扇が、敵兵たちを弾き飛ばす。考え事をしながら戦えるあたり、ある意味すごい。
(おねね様には秀吉様が、貂蝉には……忌々しいが、あの筋肉馬鹿がいる。それでもいい。
皆が笑えるなら、俺には何もなくても……)
 戻ってくる扇を、受け損ねた。地面に落ちたそれを、黙って拾い上げる。
(フン、いつものことだ)

 織田信長の周囲に、禍々しい妖気が立ち込める。唇の片端を吊り上げ、凄絶な笑みを
浮かべていた。
「あの城に、業が渦巻いている。女たちの業を集め、遠呂智は何を望む」
「こ、こいつ人なのか!?」
 妖怪武将たちが、自分のことを棚に上げて恐れおののく。
「お濃を、この信長より奪ってまで、か? クク、フハハハハ!」
「げ、ぐぎゃああっ!?」
 妖気が回転するノコギリ刃となり、敵するものを真っ二つに切り裂いた。

 一見、順調に戦局は推移していた。しかし、即席の連合軍には盟主がおらず、戦略面での
連係が取れていなかった。愛する者の危機に気がはやり、足並みを揃えることができない。

 孫尚香も二喬を救うべく、がむしゃらに手近な砦を攻め始めた。いくら個人の武勇が戦の
趨勢を左右する時代とはいえ、将自ら突出するのは孫家の悪い癖としか言いようがない。
守備していた董卓によって、彼女は早くも砦内で包囲されてしまった。
 配下の者たちが、次々に討たれていく。さすがに尚香は乾坤圏を手に奮戦したが、多勢に
無勢というものである。とうとう武器を手放し、転倒してしまった。見逃す董卓ではない。
「あの小娘を縛り上げろ!」
 ゴワゴワした荒縄が、しなやかな肢体に食い込んでいく。
「放しなさい! やめてっ」
 後ろ手に縛られ、足首も固縛され、尚香はダルマのように地面へ転がされた。くびり出された
胸元が、野獣の征服欲を煽る。
「くっ、しくじったわね。でも、笑っていられるのも今のうちよ!」
「ぐへへへ、気の強いところがたまらんのう。虫けらどもを蹴散らしてから、たっぷり
可愛がってやるわい」
 金と女が手に入る限り、董卓は遠呂智と妲己の味方をすると決めていた。しかし、彼が
尚香を手に入れることはできない。彼女を遠呂智も欲しているから。

 いつの間にか、妲己が董卓の隣にいた。
「ご苦労様。じゃ、これもらってくね」
「な、何を勝手な……」
(うほぅ、いい乳、いい尻じゃのう)
 本能に忠実な董卓は、横取り宣言に怒ることも忘れ、半裸の妖婦に見とれている。
 女狐は尚香の前に立ち、ニヤニヤしながら見下ろした。尚香は首だけを懸命に上げ、
睨みつける。
「妲己!!」
「孫尚香さん、遠呂智様がお待ちかねなの。私と一緒に来てよね♪」
 尚香と妲己の周囲に、複雑怪奇な魔方陣が出現した。まばゆい閃光に包まれたかと思うと、
一瞬にして二人の姿が消滅していた。
「な、ななな、何じゃ!?」
 董卓に理解できるはずもない。

 さらに彼の不運は続く。
「不埒者、不埒者ぉ! 尚香を返しなさい!」
 伝令から急報をもたらされ、馬に乗って稲が駆けつけた。噴火砲制圧の任務に従事して
いた彼女は、今まで別行動を取らざるを得なかった。
「あなたは、あなただけは!」
 董卓のために金を運ばされた嫌な思い出もよみがえる。稲の眉がつり上がった。騎乗したまま
弓を引き絞る。
「待て、ワシはあの娘にまだ何も」
「天誅!」
「げっ、ぐほっ、ぐへええ!」
 怨念の込められた矢が、董卓の胸や腹に4、5本突き立った。だが悪運の強い男である。
分厚い脂肪が急所を守っていた。
「な、何という危険な女じゃ……」
 命からがら、董卓は戦線を離脱した。当分戦線には復帰できまい。稲は深追いしなかった。
それより気がかりなことがある。
「尚香は、尚香はどこ?」
 急いで砦内を捜索したが、尚香の姿がない。嫌な予感が、稲の胸をよぎる。

「孫呉の虎たちよ、見るがいい」
 にわかに、遠呂智の声がとどろいた。
 赤黒い空いっぱいに、古志城の最深部が映し出された。不思議なことに、どの方角からも
同じように見える。
 稲は息を呑んだ。
「しょ、尚香!」
 尚香が蛇に絡まれ、腕を引っ張りあげられた状態で吊るされている。気を失っているのか、
うつむいて目を閉じたまま動かない。ところどころ擦り切れた服が痛々しい。
 その周囲では、十三人の女たちが嬌声をあげ、蛇と淫らに戯れていた。すぐに、孫策が
気付いて叫ぶ。
「大喬! 小喬も何やってんだ、尚香がヤバイだろ」
 皆、尚香を見向きもしない。城の部品と化した彼女たちの頭にあるのは、自分の役割を
果たすことだけだった。
「うっ……ここは……」
 やがて、尚香は薄目を開けた。見覚えのない風景に戸惑っている。
「遠呂智様に逆らう皆さーん。ここまで来られたことに敬意を表して、面白いものを見せてあげる」
 ほくそ笑む妲己の顔が、空を覆うように映し出された。
「これは私の妖玉が映し出している景色なの。どこをどう映すのも、思いのままってわけ。
頑張っていい絵を送るから、楽しんでよね」
 くるりと背を向け、宙を舞って尚香の前に立つ。
 絶望的な状況でも、尚香は凛とした表情を変えない。そんな友を、稲はあらためて尊敬した。
しかし。

「私は優しいから、苦しくないようにしてあげる。うふふ」
 妲己が真紅の爪の先を、尚香の広い額に押し当てた。
「ちょっと、何するのよ! やめて、う、うう? これ……は……」
 妲己は口の中で何事か唱えはじめた。見る見るうちに、尚香の顔から険しさが消える。
目はとろんとして焦点が定まらなくなり。口も半開きになった。
 術により、彼女は心を縛られた。優しいというが、自分の意思を奪われるほど残酷な
仕打ちはない。
「ねえ尚香さん。あなたは今からぁ、遠呂智様に身も心も捧げるの。嬉しいでしょ?」
「はい……嬉しいです……」
 オウム返しとはこのことか。自分の頭で考えた様子が、まるで見られなかった。
「よかったぁ。でもあなた可愛いから、私も味見したくなっちゃった」
 そう言うなり、妲己は短髪美少女の唇をペロリと舐め、自分の唇を重ねた。チュッチュと
音を立て、ついばむ。
「ん――っ!? ぅ……んふ……」
 尚香は一瞬だけ目を見開いて驚いたが、やがて未知の感覚に酔い始めた。頬を染めて、
されるがまま、接吻を受け入れている。妲己は初々しい唇を存分にむさぼった。
緊張がほぐれたところで舌を入れ、彼女の舌を捕まえてねぶる。粘着音はますます大きくなり、
舌と舌の間で唾液の橋がきらめいた。
「おっ、おお。尚香様があのような」
 孫呉の将兵とて木石ではない。女同士の妖しい戯れに目を奪われないはずがなかった。
(そんな、尚香の唇が。きっと初めてなのに、あんな女狐にっ)
 稲の胸がチリチリと焼け付いた。

 舌をいっぱいに伸ばして首筋を舐めながら、妲己は尚香の衣の胸元に手を忍ばせる。
薄い布の下で、手がやわやわと動いた。麓から頂点へと軽やかに、それでいて焦らすよう
に指が踊る。
「ふふ、どう? 自分でするのと、どっちが気持ちいいかしら」
 当然、男女問わず百戦錬磨の淫婦と、男も知らない小娘では、引き出される快感に雲泥の
差があった。直接触れられてもいないのに、淡い乳頭はもう勃起して、健気に存在を主張
している。
「だ、妲己様が、妲己様のほうが上手ですっ! ああ……」
 喘ぎ喘ぎ、尚香が声を絞り出す。
「でしょ? でもお楽しみは、まだこれから。そんなによがってたら、身がもたないわよ」
 乳房の責めを片手に切り替え、もう片方の手が下へ下へと向かった。
「可愛いおへそ」
 健康美を振りまく縦長のヘソの周囲を、爪の先でツツッとなぞる。それだけのことで、
むき出しの腹部がヒクついた。
 そのまま下半身の衣に手を突っ込むかと思いきや、妲己の手は布地の上から股間にあてがわれた。
陰核の上あたりに指を二本置いて、グリグリと揉む。
「んはぁうぅっ……そこ、おマメぇ……ふぁ」
 そこが一番いいことは、たまに慰めて知っていた。しかし、布地越しの愛撫は絶頂には
もう一歩物足りない。
 直接陰核を嬲ってやれば、この姫君はたちまち昇りつめるだろう。妲己にそのつもりはない。
あくまでも、遠呂智の贄とするための下ごしらえをしているのだから。
「お願い……私……うぅっ! ダメ、このままじゃ辛いのぉ」
 あと一押しでイけそうなのに、イかせてくれない。目の端に涙を浮かべてまで、尚香は
生殺しからの解放を訴えた。
「そう? 残念だけど、ここから先は私の役目じゃないのよね。さっき言ったでしょ?
あなたはー、遠呂智様のい・け・に・え。そうですよね、遠呂智様?」

 妲己が顔を向けた先では、遠呂智が玉座にどっかりと腰を下ろしていた。
「フ……下ごしらえ、ご苦労だった」
 立ち上がり、重々しい足音を立てながら、尚香に三尺(約1メートル)ほど前まで歩み寄る。
主の意思を察したかのように、腕を吊り上げていた蛇たちが拘束を解いた。
 乾坤圏を取り上げられているから戦えずとも、せめて逃げることはできる。なのに、
尚香はただ棒立ちになり、うっとりと魔王を見つめている。
「逃げて! 逃げて尚香っ」
 稲の必死の呼びかけも、最深部の友に届くはずもない。いよいよ、数万の将兵の前で、
弓腰姫の陵辱儀式が幕を開ける。

 紅と碧の瞳が、禍々しく輝いた。尚香の精神支配はいっそう強化され、口元に弛緩した
笑みだけを浮かべている。
「贄にふさわしき姿、我に見せよ」
「……はい」
 尚香はコクリとうなずいてから、おもむろに上半身の衣をたくし上げた。胸筋に支えられた
形良い双乳が、ぷるんと震えながら露わになる。妲己の愛撫によってしっとりと汗をかいた乳房は、
まさに食べごろの水蜜桃といえた。
 続いて躊躇することなく、下半身の衣も引き下ろす。肌着は着けていない。あまりにたやすく、
恥ずかしい縮れ毛の束が露わになった。生命力の強さを示すかのように、立派に生い茂っている。
必要がないから手入れもしていなかった。尻肉は小ぶりで、硬めに引き締まっている。
戦士としては理想的だが、女としては青さを漂わせている。それも彼女の個性には違いなかった。
 鹿を思わせるしなやかな脚を、片方ずつ抜いた。既に、全裸状態と呼んで差し支えない。
しかし遠呂智にとって、女は『餌』である。人工物は糸くず一本に至るまで邪魔だった。
 手甲と靴を脱ぎ捨て、額に巻いた布もほどく。腕輪を抜き取り、最後に耳飾りを外して、
ようやく尚香の動きが止まった。どんなに未開の部族でも、腰紐一本は着けている。
一糸纏わぬ全裸で立つ尚香は、着衣とともに人間性まで剥ぎ取られたかのようだった。
「良き贄のようだな。参るぞ」
 股間を覆う装甲が内側から押し上げられ、弾け飛んだ。下から顔を覗かせたのは、目も
鱗もない八匹の大蛇たち。陵辱・吸精器官『ヤマタノオロチ』である。
「まずは、貴様の価値を確かめるとしよう」
「どうぞ……ご存分に」
 恐怖や嫌悪の感情すら、今の尚香には生じない。
 五匹の大蛇が、尚香に向かって一斉に伸びた。

 まずは妲己に味わわれたばかりの唇を、蛇の舌がくすぐる。尚香が意図を察して口を開くと、
蛇は遠慮なしに頭を突っ込んだ。
「んぐっ」
 頬が、大きく膨らむ。尚香は一瞬だけ涙目になったが、その後は抵抗することもなく、
蛇をくわえている。チュパチュパと、小さな音が立っている。尚香が、舌を蛇に絡めている音だった。
「うお、姫様すげぇやらし、ぐはっ!?」
「み、見てはなりませんっ! 戦に集中するのです」
 弓腰姫に口唇愛撫される様を思い浮かべ、呉軍の兵士も何名かが前かがみになっていた。
稲の制止も耳に入らない。そういう不埒者は、直後に遠呂智兵の攻撃を受けて絶命していた。
 胸元の二匹は同時に、硬くなった乳首を口に含んだ。薄桃色の頂が、刺激を受けてますます屹立する。
「んふ、ふう、ふっ」
 爬虫類とは思えない巧みな舌づかいを受け、尚香も手で乳房を持ち上げ、円を描くように
動かしはじめた。乳肌の表面はいっそう熱くなり、大粒の汗の玉がいくつも浮かんでいる。
 背後まで伸びた一匹は、まず背筋から引き締まった尻肉までヌメーッと舐め下ろした。
さらにその奥の『価値』を確かめようとすると、尚香も両手で尻たぶをつかむ。そのまま、
左右にめいっぱい割り開いた。禁断のすぼまりが、大蛇を迎える。
(あれが、尚香の……私の知らない部分)
 さすがの親友も、尚香の後ろの孔まで見たことはなかった。そこが排泄の用を成すとは
思えないほど、清潔で可憐なたたずまいをしている。
 開かれた禁門を味わうべく、大蛇は首を曲げ、鼻先を谷間に沈めた。
「んっ、んっ、んっ」
 菊皺の一本一本まで、舌でほじられる。その度に尚香は、カクカク腰を振って反応した。

 最後に、処女孔へと大蛇が迫る。
立派な茂みも、陰唇の上では急激に薄くなっていた。ただ、未処理なので産毛程度は生えている。
姫割れからはみ出す花びらは極めて少なく、色素の沈着もない桜色をしていた。そのくせ陰核は
発育が良い。大人の女になる寸前の、成熟と未熟が入り混じった果実と言えよう。
 手付かずとはいえ、他の部分をさんざん弄ばれていたのだ。すでに蜜が滴り、産毛を濡らし、
太腿に垂れていた。その痴蜜を味わうかのように、蛇が舌を秘裂に這わせる。先ほどは中途半端な
刺激で終わった陰核に、今度は舌が直接巻きつく。
 唾液にまみれた快楽器官が、容赦なく皮を剥かれ、捻られた。
「んふおおっ! ふぐ、ふぐっ!」
 はしたない声をあげ、白目を剥いて、尚香がのけぞった。その後も軽く締め付けられるたび、
充血した花弁はとめどもなく愛汁を分泌した。それも徐々に粘り気を増し、塩味が強くなっていく。
 尚香が雌の本能をあからさまにしている間、魔王は蛇から送られる情報を冷徹に分析していた。
「ほう、この精気は……さすがに虎の娘。見事な価値だ」
 遠呂智はいったんすべての蛇を戻した。愛撫が中断し、尚香の顔に落胆の色が浮かぶ。
「フ、何と淫らなことよ。安心しろ、すぐに貫いてやる。手と膝を床につき、後ろを向け」
 まさに見えない尾を振る犬のように、孫呉の弓腰姫は嬉々として四つん這いになった。
果汁をダラダラ垂らす肉アケビが、今や遅しと遠呂智を誘う。
「遠呂智様ぁ……私の初めて……もらって」
 蕩けきった尚香の声が、彼女を愛するすべての者たちの心を凍りつかせた。
 遠呂智は少し離れた場所に立ったまま、大蛇を処女孔まで伸ばした。今まさに繋がろうと
したそのとき。
 今まで黙って見ていた妲己が、再び額に指を当てた。
「うふふ、このままじゃつまんなぁい」
 突然、尚香の瞳に理性の光が戻る。それはつまり、感覚も元に戻ったということ。
正気の状態で、成人男子の標準より二回りほども太い物を突っ込まれては……

「え……ぐ、が、ひぎゃあああ!!」
 いくら濡れていても、大きさが合っていない。裂けるというより胎内を押し潰されるような
激痛が走った。処女膜に擦過傷が付き、破瓜の血が幾筋も染み出す。
「んー、いい鳴き声。孫呉の皆さん、それに稲さん、見てるぅ?」
「いやあぁ! 見ないで、こんな私を見ないでぇ」
 処女喪失の瞬間を、見られてしまった。何万人もの将兵に、父と兄に、何より親友に。
心の傷の深さは計り知れない。この世界でどんなに苦しくても泣かなかった尚香が、大粒の
涙をぽろぽろこぼしていた。
 それでも闘志を振り絞り、尚香は胎内から蛇を引き抜こうとする。その抵抗もまた、
遠呂智を楽しませるだけだった。尚香をあざ笑うように、子宮口の手前まで蛇を突き入れる。
「かはっ……ま、負けるわけには、うぐっ」
「活きのいい贄だ。そうでなくてはな」
 蛇と格闘する尚香の下腹部に、淡い光が集まりだした。それは膣口から蛇へと吸い込まれていく。
彼女の豊かな生命力の結晶、精気に他ならなかった。
 さらに、今度は蛇の牙から冷たい毒液が噴き出した。膣内粘膜から吸収された毒液は、
尚香の肉体を遠呂智に適応させ、苦痛を快楽に置き換えていく。一方で、尚香の精神活動を
急速に弱める作用もあった。
「あ……あ……」
 必死にもがいていた尚香も、徐々に力を失っていく。
 父も兄も何もかも忘却し、ぼやけていく意識の中、尚香はひたすら稲の身を案じていた。
友を、自分と同じ目に遭わせてはならない。
(そうか……私は、餌なのね。稲を捕らえるための……)
 最後の瞬間に気付き、尚香は声を絞り出す。
「稲……来ちゃ、ダメ……!」
 それを最後に、孫尚香という存在は毒液の中に溶け去った。乳房だけを微かに上下させ横たわる姿が、
いつまでも古志城の上空に映されている。それも、足の側から。無惨に犯された局部が大映しで。

「いやあぁ、尚香――っ!」
 稲の全身の血が沸騰した。
「はあああっ! 遠呂智いいぃ!」
 しゃにむに、古志城の本丸へと突っ込んでいく。つがえる矢は一条の光となって、
妖怪武将たちの眉間や心臓を貫いた。近づけば、弓の両端に付いた刃が光の刃となって、
一刀両断にしていく。まさに何かが降りてきたような強さだった。
 遠呂智もすぐに、気付いた。
「ほう。怒りの気が、南東の砦に渦巻いている。友を穢された怒りが、最強の武士の血を
呼び覚ましたか。では、丁重に出迎えるとしよう。門を開け」
 ただ一人の娘のために、古志城の厚い扉が開く。
 罠だ。誘っている。稲も分かりきっていた。それでも、足を止めることなどできなかった。
「あの先に、遠呂智が……尚香、待ってて!」
 友を救うため、稲は魔王の本陣へと突入した。直後に閉まった門を、振り返ることもなく。

孫尚香編 完

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この物語のヒロインたちは、以下の作品にも出ています
陸遜×孫尚香
陸遜×孫尚香2
真田幸村×孫尚香

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Written by◆17P/B1Dqzo